由緒ただしい激走スクーター

今回の東海道ガス欠チャレンジの相棒は、ホンダの超ロングセラー・スクーター LEAD125だ。ガキの頃からちょくちょく乗ってたおなじみのバイク……と感じる中高年ライダーも多いだろう。
とはいえ、1982年に発売されたLEAD50/80/125と、現代のLEAD125はまったくの別物だ。そもそも積んでいるエンジンが2ストから4ストに変わってるんだから、これを同じマシンだと強弁するのは無理がある。が、設計の方向性に大きなブレはない。「走りのLEAD」のイメージは、エンジンが変わろうが時代が変わろうが、40年以上もの間、頑固に一本スジが通っている。



ふだん使いで輝く高機能スクーター


ガソリンを満タンにしてトリップメーターをリセット、日本橋を発った。都心の道なんて走りたくもないが、ここを走らないと東京を脱け出せないからしかたない。
街路はたしかに退屈だ。でもバイクまで退屈なわけじゃない。LEAD125は、スクーターにしてはスロットルレスポンスがよく、きゅんきゅんよく走る。ごくふつうの街中ライディングでも、ちょっとしたスポーツ感覚が味わえるマシンだ。



コンパクトなボディのおかけでLEAD125の走りはすっきり軽快、取り回しもラクラクだ。なのにポジションが窮屈じゃないのは特筆すべき点だろう。マシンのすみずみにまで、クリーチャー・コンフォートの意志がゆきわたっているようだ。
このバイクに難があるとすれば、すぐれた動力性能のわりには、サスがやや物足りないところだ。市街地によくある小さなギャップでも、ちょっと速度がのると吸収しきれず足まわりがバタつく。とはいえ、ガンガン峠を攻めるバイクじゃないし、困るほどでもないんだが。



首都をぬけて神奈川へ

ビルだらけの東京を抜けて神奈川へ入る。とはいえ神奈川だって東京メガロポリスの一角で、のんびりムードにはほど遠い。だが少なくとも目ざわりな高層ビルが減って多少は息がしやすくなった。
国道15号から旧東海道へ進路を変え、横浜市鶴見区の市場一里塚で休憩。この一里塚は横浜市地域文化財にも指定されている。一息ついて、湘南めざして走り出した。






烈風まみれの湘南

茅ヶ崎にたどり着いた頃、空はもう朱に染まりかけていた。見慣れたビーチだが、いつもとまったく様子が違う。軽量スクーターなんぞ吹き飛ばしかねないド強風が吹き荒れていたためだ。そしてふだんなら無数にビーチに湧いているチャラけた湘南オサレ系ピーポーが、すっかり姿を消していた。軽量スクーターよりも中身が軽い連中のことだ。たぶんこの風でみんな吹き飛ばされてしまったんだろう。


夜道を宿へ

茅ヶ崎を後にして、さらに西へと進みはじめる。ほどなくフューエルメーターが動いた。が、それからほんの少し走ると、残量表示が元に戻る。かと思うとまた減る。えげつなくフラフラするもんだから、しかたなく、いちおう74.7km時点でフューエルメーターが2目盛り減ったことにしてお茶を濁した。

できれば東海道沿いに泊まりたかった。でもあいにくどこも満室だった。つい数年前まではコロナ蔓延で客が減って、誰でもいいから遊びに来てくれと泣きすがっていたのに、客の増えた最近では、オーバーツーリズムは迷惑だと世の中あげて騒いでいる。客が来ないと困るのはわかるが、来てもまだ困ってるなんて、ずいぶん不自由な話だ。
いずれにしても東海道まわりには宿がないので、街道からガツンと離れた田舎町に投宿。装備を解いて部屋にあがると、コンビニ飯を食らってベッドにもぐりこんだ。


