栃木県宇都宮市篠井町に、モビリティと暮らしが交わる新たな拠点「PHIARO Mobility Hub(フィアロ モビリティ ハブ)」が2026年9月19日にオープンした。

かつて「ヒーローしのいサーキット」として親しまれた場所を、フィアロスペース、フィアロコーポレーションとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が共同で再生。

オンロードコースとオフロードコースを備える「SHINOI RING」に加え、BOOK & CAFE「M-TRACE」、本格的なドライビングシミュレーターを備える「MOTOR HOME」を展開する。

平日はモビリティの開発や検証などに活用し、土日は一般の来場者に開かれた場所として、さまざまな人にモビリティを楽しんでもらう。クルマを走らせる人だけでなく、家族や地域の人たちなど、幅広い人が訪れられる場所を目指している。

ゆくゆくはバイクでも気軽に走れるようにしたい。そうした構想もあるなか、オープンに先駆けた今回の現地取材では、特別にバイクを持ち込み、実際にSHINOI RINGを走行。雨上がりのコースを、ホンダ「CRF250L<S>」でオフロード、スズキ「GSX-8TT」でオンロードをそれぞれ体験した。

現時点ではクルマを中心とした運営だが、将来的にはツーリングライダーにもふらりと立ち寄ってもらい、気軽にサーキットを走ってもらえる施設を目指している。

今回は、その実走体験を通して、この場所がどのような役割を担おうとしているのかを紹介したい。

雨上がりのオフロードをCRF250L<S>で走る

まず体験したのは、ホンダ「CRF250L<S>」によるオフロードコース。

雨上がりということもあり、路面は通常よりも慎重な操作が求められるコンディションだった。

今回は本格的なタイムアタックではなく、コースの感触を確かめながら、ゆっくりと走行した。

舗装路とは異なり、路面から伝わってくる情報が多い。アクセルを開けたときの車体の動きや、路面の状態による挙動の変化など、舗装路では得られない感覚を楽しめる。

今回用意したのはCRF250L<S>。ノーマルタイヤのままでもしっかり走ってくれた。
外周500m。複数のルートが交差する、蜘蛛の巣状のオフロードコースは走っていて楽しい。

SHINOI RINGのオフロードコースは、単に「速く走る」ためだけではなく、車両が持つ特性を体感する場所としても面白い。

クルマでの走行を想定した施設ではあるものの、オフロードバイクとの相性も感じられるコースだった。

GSX-8TTでオンロードを走る

続いてオンロードコースでは、スズキ「GSX-8TT」に乗った。

こちらも無理にペースを上げるのではなく、コースを確かめるように走行した。

SHINOI RINGには、ストレートや高速コーナー、低速コーナーなど、さまざまな要素が組み合わされている。

実際にバイクで走ってみると、単に「サーキットを走る」というだけでなく、コーナーへの進入、旋回、立ち上がりといった一連の動作を通じて、車体を操る楽しさを味わうことができる。

自分で車両を操り、路面からの情報を受け取りながら走る。モビリティを「見る」のではなく「体験する」ことの面白さを、実際の走行を通じて感じることができた。

サーキットを「走るだけの場所」にしない

PHIARO Mobility Hubの特徴は、サーキットそのものだけではない。

コース全体で約25mの高低差がある、全長1.35kmのサーキット。クルマやバイクの走行会はもちろん、ピットを使ったイベントやフェス、テラスを活用した研修など、モータースポーツ以外にもさまざまな用途で活用できる。

施設は「SHINOI RING」「M-TRACE」「MOTOR HOME」の3つのサービスで構成されている。

「SHINOI RING」では、オンロードとオフロードの走行体験を提供。

SHINOI RINGのオンロードコース。クルマでの走行は反時計回り、今回のバイク走行は時計回りで行われた。

一方、「M-TRACE」はBOOK & CAFEとして、モビリティ、旅、自然、デザイン、テクノロジー、文化、ライフスタイルなどの本を楽しめる。

コースを望む「M-TRACE」。コーヒーを飲みながら、走行の合間にゆっくり過ごせる。
「MOTOR HOME」に設置された本格的なドライビングシミュレーター。
イチオシのメニューSHINOIエナジー。レッドブルにブルーライチのシロップを加え、SHINOI RINGの芝生のグリーンをイメージしている。

そして「MOTOR HOME」には、本格的なドライビングシミュレーターを設置。SHINOI RINGのコースをデータ化し、デジタル空間での走行体験を可能にしている。

サーキットを走るだけでなく、カフェで過ごしたり、シミュレーターを楽しんだり。モビリティを軸に、さまざまな過ごし方ができる施設となっている。

87年のものづくりがたどり着いた「リアルな場所」

この施設を語るうえで重要なのが、フィアロの歴史だ。

1939年創業のフィアロは、図面から立体を起こす木型製作を原点として、自動車産業の発展とともに技術領域を拡大してきた。

1970年代には3次元加工機を導入。1980年代には日本の自動車産業のグローバル化に合わせて海外展開を進め、車両開発にも携わってきた。

近年ではコネクテッド、UI・UX、自動運転、SDV、EV、AIなど、モビリティを取り巻く領域は大きく変化している。

しかし、発表会でフィアロが強調したのは、技術が進化しても変わらない「リアル」の価値だった。

どれだけデジタル技術が進んでも、実際に車両を走らせ、テストし、検証する。

そして、得られたデータや感覚を次の開発へと反映する。

そのための場所として、このサーキットを引き継いだ。

M-TRACEに展示されていたクレイモデル。これもフィアロが手がけた開発業務の一端。

「開発する場所」から「体験する場所」へ

当初の目的は、モビリティを開発するためのテスト環境だった。

ところが、活動を進めるなかで、その役割は広がっていった。

「モビリティを開発する場所」から、「モビリティを体験する場所」へ。

そして現在は、「モビリティ文化を広げる場所」へ。

その考え方を象徴するのが、フィアロが掲げる「Movement is Life.」というスローガンだ。

ここでいうMovementは、クルマが走ることだけではない。

人が動くこと、新しいことに挑戦すること、人と人が出会うこと。

そして、そこから新しいアイデアが生まれること。

実際にバイクでコースを走ると、「Movement is Life.」という言葉が、この施設の考え方と重なって見えてくる。

デジタルとリアルを行き来する

「MOTOR HOME」では、SHINOI RINGを再現した本格的なドライビングシミュレーターを体験できる。

さらにフィアロは、シミュレーターと実車を組み合わせた「デジタルツイン体験」も構想している。

デジタル空間で車両を体験し、その後に実車へ乗る。

あるいは実際の走行データをデジタル空間へ取り込み、そこから車両開発につなげる。

デジタルとリアルを往復することで、車両への理解を深め、次の体験や開発へつなげていく。

サーキットそのものが、リアルとデジタルをつなぐ実験場になっていく可能性がある。

「自分たちのための1台」をつくる

今回の発表会では、フィアロ自身による車両開発プロジェクトも紹介された。

スーパーフォーミュラに参戦し、F1のリザーブドライバーも務める岩佐歩夢選手(左)、世界最高峰のダンスバトルで最年少優勝した経歴を持つMiyuさん(中)、株式会社フィアロコーポレーション/フィアロスペースの代表取締役社長、岩﨑晃彦さん(右)。

ベースとなるのはHonda S2000。

フィアロがこれまで培ってきたデザインとエンジニアリングの力を、自分たち自身の車両に投入し、サーキットで走らせ、テストし、また作り直していく。

オリジナルの魅力をできるだけ残しながら、現代のテクノロジーや素材、インターフェースを取り入れる。

そして、長年の車両開発で培ってきたエンジニアリングによって、走りをさらに磨いていく。

このプロジェクトには、レーシングドライバーの岩佐歩夢選手やダンサーのMiyuさんなど、フィアロとは異なる領域の人たちも参加する。

岩佐選手からは実際の走行を通じたフィードバックを受ける。

一方、Miyuさんからは「動き」や「リズム」といった異なる視点を取り入れる。

コース上では、Miyuさん岩佐歩夢選手よるスペシャルパフォーマンスが披露された。

クルマとダンス。一見すると異なる領域だが、「動き」という共通項から一つの表現をつくろうとしている。

フィアロがこれまで企業やメーカーのために培ってきた技術を、今度は自分たち自身の思想を表現するために使う試みだ。

サーキットから、新しい文化を

PHIARO Mobility Hubは、モータースポーツだけを目的とした施設ではない。

今後はランニングの練習やイベント、スポーツ、自然、食、アート、教育、テクノロジーなど、さまざまなテーマとの組み合わせを予定している。

地域との連携も進める。

フィアロは宇都宮市との包括連携協定を締結し、子どもたちへのモビリティ教育などにも取り組む考えを示している。

近隣の小学校への出前授業などを通じ、モビリティに興味を持つきっかけをつくることも、その一つだ。

クルマ好きだけに限らず、子ども、家族、地域住民、ランナー、バイクライダー、クリエイター、技術者など、さまざまな人が集まる場所を目指す。

「走る」ことから始まる、新しいMovement

今回、雨上がりのSHINOI RINGを2台のバイクで走った。

CRF250L<S>でオフロードを走り、GSX-8TTでオンロードを走る。

本格的なタイムアタックではなく、路面を確かめながらの穏やかな走行だったが、実際に車両を操り、路面の感触を感じ、コースを進んでいくことで、この場所が持つ魅力の一端を体験できた。

現時点ではクルマを中心とした運営だが、バイクを含め、より多様なモビリティへと開かれていく可能性も感じられた。

サーキットを走る。

本を読む。

コーヒーを飲む。

シミュレーターで走る。

人と話す。

新しい技術を試す。

そして、そこからまた何かが動き始める。

かつての「ヒーローしのいサーキット」は、いま「PHIARO Mobility Hub」として、新しい役割を始めた。

「Movement is Life.」

走ることから始まる動きが、クルマやバイクの枠を超えて、さまざまな人が集まり、新しい楽しみ方が生まれる場所へとつながっていく。

この場所がこれからどんな広がりを見せていくのか、楽しみである。

「Motor Fanを見た」で限定ステッカーをプレゼント!

受付で「Motor Fanを見た」と伝えると、限定ステッカーを1枚プレゼント!

ステッカーは全5種類。Motor Fan、auto sport、モトチャンプ、Motor Fan BIKESいずれかのロゴ入りで、どのデザインがもらえるかはお楽しみです。

施設を訪れた際は、ぜひ受付でお声がけください!

PHIARO Mobility Hub 施設概要

施設名称:PHIARO Mobility Hub
所在地:栃木県宇都宮市篠井町前山1804
開業日:2026年9月19日
営業日:土曜日・日曜日・祝日
公式サイト:https://mobilityhub.phiaro.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/phiaro_mobility_hub
公式YouTube:https://www.youtube.com/@PHIARO_Mobility_Hub

オンロードもオフロードも楽しめるサーキットを備えたモビリティエンタテインメント空間「PHIARO Mobility Hub」がオープン! | Motor Fan|自動車情報のモーターファン

「PHIARO」とは?「PHIARO Mobility Hub」とは? PHIARO(以下、フィアロ)グループは1939年創業の受託開発会社で、主に自動車(モビリティ)分野でクライアントと協力して次世代製品やサービスのコ […]

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