
重厚感あるボディが安定性の高い走りを予感させる
モルビデリはおもに1970年代のロードレースシーンにおいてその名をとどろかせたイタリアのメーカーである。小排気量クラスを中心に優れた戦績を残していて、1994年には水冷4ストローク90度V型8気筒847㏄エンジンを搭載したモルビデリV8を発売し話題となったことでも知られている。現在は中国のキーウェイ傘下のブランドとなっていて、2026年からc252vが株式会社プロトが輸入元となり発売を開始した。
国内市場を見回してみると、250㏄クラスにクルーザーモデルはラインナップされていない。強いていうならホンダ・レブル250が近い存在かもしれないが、そもそもクルーザーはゆったりとロングツーリングを楽しむ性質のものなので大型クラスに集中している。故に250のクルーザーには猜疑的な人が多いのだ。まあ僕もそのひとりなのだが、モルビデリc252vを前にしたとき、所詮は250という思いは霧消した。








水冷ながらフィンをあしらい外観の造りにもこだわったVツインエンジンを抱えたボディは、見事にロー&ロングフォルムを実現していて、16本スポークホイールに装着された極太の16インチタイヤが抜群の安定感を表現していたのである。250とは思えない重厚さと存在感を見せつけたc252vは、まぎれもなくクルーザーであることを証明している。
スタイリングデザインは全体にオーソドックスだが、奇をてらっていないぶん誰にでも受け入れられやすい。各部の仕上げにも手を抜いたところがなく、結果的に高品質なモデルに仕上がっていると感じた。
品質という点からいえば、日本人にとってはやはり、made in japan への信頼が厚い。バイクならなおさらだ。しかし最近は、海外生産が主流になりつつあるし、このモルビデリc252vも中国製である。見た目は高品質だが実際にはどうか…となると不確かだ。おそらく数年後には結果が出ると思うが、決定的な故障が出ない限りは国内市場にも受け入れられることになるはずだ。いずれにしても、250㏄クルーザーの需要はあるはずで、それに応えてくれるモデルにはちがいない。




想像以上に上質な乗り味を提供してくれる
シート高は690㎜と低いので、小柄な女性にも足を着けることができる。そういう点では取り回し性がいいといえるのだが、実際に押し歩きしてみると、200㎏の車重はなかなかヘビーで、ハンドルの切れ角も大きくないので切り返しにも少し苦労する。このあたりの感覚は外観同様にクラスオーバーの風格といったところか。
タックロール表皮のシートはワイドな形状でお尻が安定する。座り心地も良いのでロングツーリングにも耐えそうだ。ステップは前方に位置するフォワードコントロール。ワイドなフラットバーハンドルと合わせて独特なライディングポジションとなるが、窮屈な印象はないので、走り出して5分も経たないうちに慣れた。




走行を開始してなにより印象的だったのは、水冷Vツインが奏でるサウンドだった。正直なことをいえば、250なので排気音に関しては期待していなかった。悪くいえば、おもちゃっぽい音なんだろうな、という思いしかなかった。ところがだ、大型モデルに一歩も引けを取らない重厚なサウンドを放ち、そこに力強さとまろやかさが融合されたような、なんとも耳障りのいい頼もしいサウンドなのである。そしてわずかではあるが、Vツインの鼓動感もあるのだから恐れ入った。下道を50~60km/hで流していると本当に心地よく、まさしくクルージングが満喫できるのだ。Vツインも中低速でトルク感のある特性なので下道を走るのに適している。一方高回転域では回転だけが上がっていく感覚で力感はあまりない。まあこのあたりは排気量なりといったところだろう。今回は高速走行しなかったが、おそらく100km/h巡航は問題なくできる性能はあるが、そこからの加速性にはあまり期待できないと思う。
ミッションは6速で、チェンジペダルのストローク、タッチともに良好だ。さらにスリッパー&アシストクラッチが採用されているのでクラッチレバーの操作も軽い。これなら街中での頻繁なクラッチ操作にも疲労しにくい。ギヤ比に関しては5、6速が高めに設定されている。クルーザーだからオーバードライブとしているのかもしれない。個人的には下道で6速まで使えるほうがいいかなと思った。燃費の面でもそのほうが有利だろう。いずれにしろ、エンジン特性に関してはそれほど不満を感じる要素はなく、うまくまとめられていると感じた。



素直な操縦性はビギナーにもなじみやすい
ロー&ロングボディのモルビデリc252vのホイールベースは1490mm。加えてフロントタイヤが130/90、リアタイヤが160/80と極太の16インチなので直進性は問題ないが、コーナーワークは鈍重なんだろうな、という思いで乗り出したのだが、意に反してフロントからスーッと曲がってくれたのだ。ハンドルに舵角を与えないと向きを変えてくれないといった、キャスターの寝たいわゆるアメリカンモデル的なハンドリングではなく、一般的なネイキッドスポーツに近い感覚だ。バンク角が浅くロングホイールベースなのでタイトターンは得意じゃないが、街中を普通に走行したり中高速コーナーを駆けるなら、クセを感じることなく快適に走ることができる。サスペンションもちゃんと動いてくれている。全体にはもう少しソフトな作動性にしたほうがクルーザーにふさわしい乗り心地になると思うので、ユーザーになったあかつきにはいろいろと調整してみるといいと思う。ちなみにサスペンションは、倒立フロントフォークに2本ショック式リアサスの組み合わせだ。
操縦性の素直さにも驚いたが、ブレーキの効きの良さにも驚かされた。一般的にクルーザーのブレーキは必要最低限の効きといった印象があるのだが、モルビデリc252vに装備されたブレーキは、前後シングルディスクながら大径ローターを採用していて、さらにフロントにはラジアルマウントキャリパーを装備しているのだ。そしてレバー入力初期からガクッと制動力を発生するタイプだ。極太タイヤのグリップ性の高さも手伝って、ブレーキングには安心感がある。もちろんABSが標準装備してあるし、トラコンも装備しているから、安心安全なツーリングを可能にしてくれる。












イタリアブランドのバイクながら製造は中国ということで不安を覚える人も少なくないと思う。たしかに2年3年と乗り続けてみないと信頼感を持てるかはわからない。しかし今回試乗してみて、高いクォリティを実現していると感じた。そして、クラス唯一といえるクルーザーとしての存在感も大きい。
主要諸元
メーカー希望小売価格(消費税込)759,000円 車名・型式モルビデリ・N25 全長/全幅/全高 (mm)2,230/865/1,090 軸間距離 (mm)1490 最低地上高 (mm)173 シート高 (mm)690 車両重量 (kg)200 エンジン型式BD2V53MM エンジン種類水冷4ストロークSOHC4バルブV型2気筒 総排気量 (㎤)249 内径×行程 (mm)53.5×55.4 圧縮比11.8 最高出力 (kw[PS]/rpm)19[26]/9,000 最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm)25[2.5]/5,500 始動方式セルフスターター 点火方式トランジスタ式 潤滑方式ウェットサンプ 燃料供給方式フューエルインジェクション トランスミッション形式常時噛合6速リターン クラッチ形式湿式多板 2次減速方式ベルト式 フレーム形式ダブルクレイドルフレーム 懸架方式 前37mm倒立テレスコピック 懸架方式 後スイングアーム タイヤサイズ 前130/90-16 M/C 67P タイヤサイズ 後150/80-16 M/C 71P ブレーキ形式/径 前油圧デイスク/320mmABS ブレーキ形式/径 後油圧デイスク/260mmABS 燃料タンク容量15.5L 使用燃料無鉛プレミアムガソリン指定(指定オクタン価95) 燃費(km/L) WMTCモード34.5 乗車定員2名
