ハイダウンフォース+ヨコハマ製スリックタイヤがミソ!

ソフトウェアのプログラム変更のみで687馬力を発揮!
2月15日に筑波サーキットで開催された“Attack筑波2025”の舞台で、1台のEVチューンドが輝きを見せた。韓国から海を越えてやってきた、ヒョンデワークスのアイオニック5N TA Specである。


ちなみにこのマシン、独立記念日の前後にアメリカのコロラド州で開催されている『ブロードアーム・パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム』に乗り込み、2024年の電動改造車部門&クロスオーバーSUV型量産車部門で最速タイムを記録したチャンピオンカーだったりする。
そんなパイクスピーク仕様のアイコニック5Nが、タイムアタックの聖地“筑波サーキット”に挑むというのだから、注目されないわけがない。

Attack筑波でアイオニック5N TA Specの手綱を握ったのは名手“谷口信輝”選手。午前中の走行から57秒台を連発し、周回を重ねるごとにタイムアップ。そして、決して条件が良いとは言えない午後のラストアタックで、57秒446という凄まじいタイムをマークしたのである。この記録は、EVナンバーワンであるとは言うまでもない。

マシンスペックを覗いてみると、パワー系はモーターやバッテリーなどには一切手を入れず、ソフトウェアのチューニングのみで607psから687psまで出力アップを達成。EVでタイムアタックを行なう場合、バッテリー残量の低下に伴うパワーダウンが心配されるが、全長2km程度の筑波サーキットならば問題ないという話だった。なお、アイオニックは前後に1個ずつモーターを配置した、2モーターの4WD駆動となる。

700psに迫るパワーを受け止めるのタイヤには、ヨコハマタイヤのドライ路面用スリック「A005」をセレクト。コンパウンドは最もソフトなA40で、サイズは前後とも300/680R18を履いていた。


サスペンションは、韓国のサスペンション&ブレーキメーカー「ネオテック」の製品を軸にセットアップ。その他、リヤについては調整式のロワアームも装着。基本的なパッケージはパイクスピーク仕様と同様だが、足回りのセッティングは筑波サーキット仕様に大きく見直しているそうだ。


ブレーキは前後ともにアルコン製キャリパー&スリットローターを装着。2トン近いの重量にも負けないストッピングパワーを確保する。

一方の室内は、ストックのダッシュボードを使用しながらシンプルに構成。ステアリングはノーマルで、制御システムなどまで含めて主要な部品は量産モデルと同様だ。パイクスピーク仕様と聞くと強烈なスーパーチューンドを想像してしまうが、足回りや安全装備以外はストックに近い。

バケットシートはHANSに対応したレカロのプロレーサーSP-Aで、サベルト製6点式ハーネスを組み合わせる。ちなみに、車重はノーマルが2210kgで、この車両は1980kgと200kg弱のシェイプアップに成功している。とはいえ、重量級であることに変わりはなく、この辺りは大容量のバッテリーを積んだ電動SUVの宿命と言えるだろう。

Attack筑波に向けてリメイクしてきた点が「Nアクティブ・サウンド+」と呼ばれるスピーカーシステムだ。これは、擬似的にエンジンサウンドを作り出すそ装置で、ドライバーの高揚感であったり、ギャラリーを楽しませたりするために搭載してきたそう。


強大なダウンフォースを生み出すエアロパーツは、パイクスピーク参戦時のままだ。これらエアロエフェクトの効果は絶大で、筑波サーキットでも700ps近いパワーを路面に伝え続け、終始安定した走行姿勢を保っていた。

アタック後、谷口信輝選手にコメントを求めると「よく曲がるし、よく止まる。どんな場面でもドライバーが望んだ分のトルクをすぐに発生させてくれるし、めちゃくちゃ乗りやすい。スリックタイヤとのマッチングも抜群に良いね! 車重が2トン近くあるけど、ブレーキングもかなり攻められるし、乗っていて安心感がある。バッテリーも筑波サーキット1周で5%くらいしか減らないからパワーダウンも感じなかったよ」と大絶賛!

一方、Hyundai Motor Companynの高性能ブランド「N」の常務である“パク・ジューン”氏は「この快挙は、ヒョンデの先進的なEV技術を示すものです。基本的に量産車両と変わらない部品を使ったチューニングカーでの記録は、ヒョンデの技術力の証明になりました! このイベントを通じて高性能EVを世界の自動車文化に浸透させたいです!」と熱く語ってくれた。

なお、今回のAttack筑波には「アイオニック5N TA Spec」の他、サスチューン+αでストック状態に近い「Dspec アイオニック5N」、ブーストアップ仕様のガソリン車「Dspec アバンテ N」、さらにキャロッセの開発車両「CUSCO アイオニック5N」という計4台がアタックに参加。さらに展示ゾーンには、ノーマル車と「アイオニック5N DK Edition(土屋圭市×オートバックス共同開発モデル)」も展示し、存在感をアピールしていた。

ちなみに、それぞれのベストタイムはアイオニック5N TA Specの57秒446を筆頭に、Dspec アイオニック5Nが1分00秒196、Dspec アバンテ Nが1分00秒404、CUSCO アイオニック5Nが1分1秒238…と、いずれも想像以上の好記録をマーク。
これらは大排気量ターボモデルと同レベルの速さであり、2トン弱の車重を考えればどれも十分すぎる記録だ。タイムアタックシーンにも広がりつつあるEV化の波。ライトな仕様でここまでの性能を楽しめるとあれば、それも必然的なものと言えるだろう。
