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自衛隊新戦力図鑑

1990年に制式化され90式戦車は陸上自衛隊の主力戦車だ。本車の研究開発は東西冷戦構造の時代に行なわれていた。つまり、当時の仮想敵は旧ソ連。北海道への着上陸を企図する旧ソ連軍戦車部隊に対抗するために90式戦車は開発された。実働部隊は北海道にのみ配備されている。北海道限定、北海道仕様の戦車が90式戦車ということだ。

主砲には120㎜滑腔砲を装備、熱線映像装置やレーザー測遠機などを組み合わせた射撃統制装置によって高い初弾命中率を誇る。装甲も厚く、車体や砲塔前面にはセラミックやチタンなどを組み合わせた複合素材が採用されている。

陸上自衛隊の主力戦車 90式戦車(PHOTO:貝方士英樹)

旧ソ連を仮想敵として、運用する現場を北海道の大地として開発された車体はいきおい大型化した。車両重量約50トンで、これは90式戦車ののちに開発された10式戦車が車両重量約44トンとして、全国展開や輸送性を考慮したのに対し、90式戦車はこれを考えていない。旧ソ連軍陸上部隊を北海道で迎え撃つための設計は、道内での走行ルートや橋の強度に制約され、地点間輸送時には専用トレーラーを必要としたり、ときには砲塔と車体の分離輸送の必要もある。運用地域限定のトンがった設計は意外と手間がかかるようだ。

しかし、90式戦車の攻撃力と防御力は圧倒的だ。走行中の射撃での初弾命中率も高い。重量級だが大パワーを活かして意外と機敏に動け、それを支える脚周りも強靭だ。ヘビー級だがフットワークは軽快なのだ。それは90式戦車の運用部隊での使われ方にも見ることができる。

北海道に置かれた第7師団に所属する第7偵察隊は、陸上自衛隊唯一の戦車運用の偵察隊だ。第7偵察隊は「威力偵察」を得意とする部隊。威力偵察とは、自分から敵陣地に向かって攻撃を行い、その反撃具合から敵勢力の規模や能力を判断する偵察手法だ。部隊は90式戦車を使ってこの威力偵察を行なう。打撃力と運動性がなければこの使い方はできない。こうした運用の一例を見ても90式戦車の持つ能力の一端が理解できる。

90式戦車
略称:90TK
愛称:キュウマル
[乗員]3人
[全備重量]約50t
[全長]9.80m
[全幅]3.40m(スカート付)
[全高]2.30m(標準姿勢)
[旋回性能]超信地
[最高速度]70km/h
[エンジン]
空冷2サイクル10気筒ディーゼル機関
最高出力:1500ps/2400rpm
[武装]
120mm滑腔砲
12.7mm重機関銃
74式車載7.62mm機関銃
[開発]防衛庁技術研究本部
[製作]
・砲塔,車体:三菱重工業
・120mm砲:日本製鋼所

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