連載

自衛隊新戦力図鑑

目の前で展開される「戦闘射撃」の迫力

今年度の総火演は、人員約2100名、戦車など車両53両、各種火砲38門、航空機12機が参加した。基本的な構成は昨年までと大きく変わることはなく、陸上自衛隊のさまざまな装備品の射撃や能力を展示する前段演習と、実際の戦闘状況を再現した後段演習の2部構成で実施された。

ただ、大きな変化を感じさせたのが後段演習である。これまではシナリオに沿って順番に戦車や各種火砲・ミサイル等の射撃が段取りよく展開される、いわば巨大な「演劇」のようなものだった。今年度の総火演も仮想敵の上陸侵攻に対する島嶼防衛という、大筋のシナリオは存在するものの、より実戦的な「戦闘射撃」が展開された。

具体的には2点の変化が挙げられる。これまでの固定で配置されていた標的に代わって、ホップアップ的(起き上がり式の標的)や隠顕的(展開式の標的)のように突発的に出現する標的が用いられるようになったこと。また、指揮官による口頭でランダムに目標が指示されるようになったことだ。これにより、これまでの予定調和の射撃から、臨機応変な射撃へと変化したことだ。そのため、「大きな音がします。ご注意ください」といったアナウンスに続いて、戦車や16式機動戦闘車の部隊が一斉に発砲するということがなくなり、各車がそれぞれ指示された標的に対して、個別に発砲するようになった。

10式戦車がスラローム射撃を披露する。前段演習ではお馴染みの演目だ。今年度の総火演では前段演習には大きな変化は無かったが、後段演習がより実戦的な内容となった。写真/鈴崎利治

その一方でアナウンスが大きく減り、会場内に流される部隊間の無線交信も、これまでの明瞭で聞き取りやすい、「来場者に聞かせるための」ものではなくなるなど、広報イベントとしての側面は薄くなった。陸上自衛隊が、リアルタイム配信を取りやめ、後日に編集した動画を公開する方針とした背景には、こうした変化があるのだろう。

機甲戦闘の迫力は例年以上

16式機動戦闘車とAH-1攻撃ヘリ。連携した戦闘により敵の上陸部隊に対する前衛として活躍した。写真/鈴崎利治

また、今年度の総火演にはAAV7水陸両用車は参加せず、航空機は数・種類ともに例年より少なくなった。一方で特科による入念な準備射撃や、前述した実戦的な機甲部隊による射撃、機甲科と連携した普通科部隊による攻撃など、「富士学校」のカラーが強いものとなった。

新たに導入された汎用ヘリUH-2。同機からのラぺリング降下は、初めて披露された。写真/鈴崎利治

特に戦車・機動戦闘車、および特科火砲による射撃量は例年を上回っていたように感じられた。少なくとも、そう感じさせるだけの迫力ある火力戦闘が目の前で展開されたことは間違いない。一般公開に続き、リアルタイム配信が中止されたことを悲しむ自衛隊ファンは多いと思うが、今年度に見られた変化は教育目的という本来の総火演の目的に立ち返るものと言えるだろう。陸上自衛隊では、後日に動画を配信するとしているので、ぜひそちらで変化した総火演の姿を見ていただきたい。

V-22が普通科隊員をヘリボーンした。写真/鈴崎利治

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