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自衛隊新戦力図鑑
ほぼ真横から見る。艦橋構造物はステルス性を考慮し傾斜させ、マストは強度確保のためトラス式。前甲板に62口径76mm速射砲、その直後にVLS、高性能20mm機関砲CIWS、前後煙突の合間にSSM装置、前方煙突直下に短魚雷発射管を各々配置。写真は5番艦「いなづま」。写真/海上自衛隊

護衛艦「むらさめ」型は、その前の世代の護衛艦「はつゆき」型の後継として建造された。同型艦は9隻が造られ、そのうち最初の艦、1番艦(ネームシップ)「むらさめ」の起工は1993年(平成5年)、進水は翌94年(平成6年)、竣工は96年(平成8年)。艦齢は25年を数える。艦種は汎用護衛艦(DD)で、海上自衛隊護衛艦隊の主要艦に位置している。

本艦の前に建造された「あさぎり」型と比べて大型化させ、基準排水量では約1000t上回っている。フネとしてはボリュームを増したが、省力化を進めたことで乗員は「あさぎり」型の約220名より約50名少ない約170名(「いなづま」以降は約165名)となっている。

省人化・省力化には苦心や工夫をしたという。搭載する兵器システムを向上させ艦内で使う各種の機器類も便利なものに替え、艦内の動線も見直した。それまで人力で賄っていた部分を改善し省力化に努めたのは人手不足だから。建造計画当時の人員不足への対応と、やがて来る少子高齢化社会での人材難に備えた設計や工夫などを四半世紀前から準備していたわけだ。「むらさめ」型でのこうした試行が先ごろ進水した新鋭護衛艦(FFM)「もがみ」型にも活かされている。「もがみ」型の乗員予定数は約90名。これは現用の汎用護衛艦の半数程度になるという。

艦尾甲板には飛行甲板を置き、哨戒ヘリコプターSH-60J/Kなどの運用を行なう。格納庫も備えていて2機を収容可能。格納庫の上部には高性能20mm機関砲CIWSを置く。写真は1番艦「むらさめ」で、2015年観艦式での様子。

「むらさめ」型は、東西冷戦後の時代に必要な護衛艦として設計、建造された。ポスト冷戦型と呼ばれる艦の整備事業は海自としては初めてのこと。艦体やマストを傾斜させることでレーダー反射を抑えるステルス対策を採用した艦として造られ、その後の護衛艦設計に強い影響を与えた。また、従来の対潜水艦戦闘のみを重んじた設計思想も改めた。対空戦闘や対水上艦戦闘にも充分な能力を発揮するバランス重視の設計をした。これは現在の護衛艦のありようにつながるものだ。

9番艦「ありあけ」の飛行甲板へ着艦する哨戒ヘリSH-60J。飛行甲板中央部では格納庫から引き出された発着艦支援装置「RAST(Recovery, Assist, Secure and Traverse 『ベアトラップ:急速拘束装置』とも呼ぶ)」を使い、ヘリ下部と装置を着艦用ケーブルで接続、これを巻き取って動揺する甲板でのヘリの着艦をサポートする。写真/海上自衛隊

この多様な状況への対応具合は搭載した装備に見られる。自らを守るための個艦防御用にシースパロー艦対空ミサイル(発展型弾へ改修済)を採用、高性能20mm機関砲も装備、相手潜水艦を仕留めるにはアスロック対潜ミサイルを積む。加えて、搭載した各種ミサイルの発射装置にはVLS(Vertical Launching System、垂直発射システム)を海自DDとして初装備した。ひとつのシステムとしたVLSにアスロックとシースパローを収めたMk.41発射機を甲板に置き、艦内に内蔵している。対艦ミサイルは国産の90式艦対艦誘導弾(SSM)を備え、短魚雷発射管も置く。全体に武装は強力だ。

護衛艦「はたかぜ」型、艦隊防空を担うミサイル護衛艦として長く現役を続け、現在は練習艦に

艦対空ミサイルを積み艦隊の防空を担当する海上自衛隊ミサイル護衛艦「はたかぜ」型。前甲板に対空ミサイルランチャーを置いて射界を確保、後甲板はヘリコプターの発着甲板とし対潜戦などでヘリの活用性を上げた。古兵となったが護衛艦の機能性や実用性を具現化した姿は頼もしい。現在は護衛艦籍を離れ練習艦となっている。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

https://motor-fan.jp/mf/article/26082/

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