連載

自衛隊新戦力図鑑

歴史ある空挺団の年頭行事

第1空挺団は、3個の普通科大隊を基幹として編成される陸上自衛隊唯一の空挺部隊であり、有事には日本中のあらゆる場所に展開する機動運用部隊としての役割を担っている。「降下訓練始め」は、1969年より開始された歴史のある行事であり、もともと部隊内の安全祈願のために行なわれていたものを、一般公開したものだ。パラシュート降下を目前に観られるとあって、多くの自衛隊ファンが集まることで知られている。コロナ禍の2年間(2021~22年)は公開中止となったものの、一昨年より公開が再開され、今年も早朝から駐屯地の入り口付近には観覧希望者が列をなした。

空挺団による降下。習志野演習場は、千葉県船橋市と八千代市の市街地に囲まれた全長2km、幅1km程度の小さな演習場ながら、空挺団は見事な降下を披露した(写真/筆者)

降下訓練始めは、「指揮官降下」から開始されるのが習わしだ。第1空挺団長 若松陸将補が先陣を切って降下を行ない、各普通科大隊長や特科大隊長など空挺団の各級指揮官による降下が続いた。空挺作戦では指揮官たちも部隊とともに現地に降下するため、彼ら自身も降下できなければならないのだ。

アメリカ空軍第374空輸航空団のC-130J輸送機から降下する空挺隊員たち。アメリカ空軍は2020年から降下訓練始めに参加している。また、平時から空挺団はアメリカ軍と共同で訓練を行なっている(写真/筆者)

また、訓練展示では、習志野演習場を「島」に見立て、「敵が侵攻した島嶼部を奪回・確保する」までの一連の流れが披露された。偵察や本隊の誘導を担う少数の事前潜入部隊の降下と、降下地点一帯の安全確保ののち、空挺団本隊がパラシュートやヘリボーン(ヘリ空輸)で降下。戦車を含む反撃部隊の上陸によって敵を撃破する流れは、例年通りだ。だが、今回はラストに同盟国・同志国11カ国の空挺部隊が来援、巨大な国旗を翻して自衛隊の戦列に加わるという演出がなされ、多国間の連携を強く印象付ける内容となっていた。

空挺団に続いて、戦車や機動戦闘車の部隊が上陸。空挺団はこれらと連携して島嶼に上陸した敵部隊を撃破し、訓練展示を終えた(写真/筆者)

覇権主義に対抗する国々の団結をアピール

ここ数年、降下訓練始めには同盟国・同志国が続々と参加している。同盟国アメリカは、2017年に沖縄に駐留するアメリカ陸軍第1特殊部隊群(グリーンベレー)が初参加して以降の常連であり、さらに2023年には英豪が参加、昨年2024年は米英仏独・カナダ・オランダ・インドネシアの7カ国にまで拡大。今年はなんと11カ国の空挺部隊が集まった。参加国・部隊は以下の通りだ。

アメリカ:陸軍 第11空挺師団、第82空挺師団、および海兵隊 第3海兵偵察大隊
イギリス:第16空中強襲旅団
カナダ:陸軍先端研センター
ドイツ:陸軍第1空挺旅団
フランス:ニューカレドニア海外複合連隊
イタリア:陸軍フォルゴア空挺旅団
オランダ:陸軍第11空中強襲旅団
オーストラリア:陸軍空挺学校
ポーランド:陸軍第6空挺旅団
およびシンガポール陸軍、フィリピン陸軍

(部隊名の日本語表記は空挺団の発表に従った)

空挺降下に続き、ヘリボーンで降り立った各国の兵士が巨大な国旗を掲げて、空挺団の戦列に加わった(写真/筆者)

世界に目を向けると、ロシアによるウクライナ侵攻や、中国の海洋進出など、「力による現状変更」を進める動きが広がっており、平和と安定の維持のため、多国間の安全保障協力の重要性がますます高まっている。日本はこれまでも「自由で開かれたインド太平洋」戦略を掲げて、米豪などインド太平洋諸国、英仏など欧州諸国との連携を深めてきたが、今回ポーランドまで加わったことの意味は大きい。降下訓練始めは、一部隊の年頭行事から、世界規模のイベントに変化している――そのように言えるかもしれない。

日の丸と並んで、アメリカ・カナダ・ドイツ・イタリア・オランダ・シンガポール・オーストラリアの国旗がひるがえる。さらにこの奥にポーランド・イギリス・フランス・フィリピンが続いている(写真/筆者)

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