「スポーツ」モード時の加速とサウンドがすごい

2024年1月のマイナーチェンジで、GRヤリスに待望のトルコン付8速AT「GR-DAT」が加わった。その狙いはあくまで速く走るためで、AT限定免許や久しくMTには乗っていない……という層を狙ったモデルではない。いまやモータースポーツの世界では、2ペダルモデルが当たり前になっているから、そのフィードバックを得た市販仕様も2ペダルが最速というのも当然なのだろう。

新たに加わったドライブモードを使い、「エコ」や「ノーマル」モードで走ってもその鋭い牙を完全に隠しきることは難しく、駆動系や排気系からのサウンドは、やる気を抑えているのが伝わってくる。ただし、「エコ」や「ノーマル」モードにしておけば、おとなしく走りたい住宅街では当然ながら普通に走れる。乗り心地はノーマルでもそれなりにハードだが。

「スポーツ」にすると、パワステの手応えが増し、まさに咆哮といえるサウンドが炸裂し、アクセルレスポンス、電光石火のシフトフィールとともに怒濤の加速を披露する。エンジンスペックは、最高出力304PS/6500rpm、最大トルク400Nm/3250-4600rpmで、「RZ」は1300kgだから中低速域の分厚いトルクはもちろん、過給後の圧倒的な加速フィールを堪能できる。マイナーチェンジ前の272PS/370Nmよりも32PS/30Nm増となるパワー、トルクアップも十分に実感できるほどの力感だ。従来の6速MTよりもクロスレシオ化され、パワーバンドの維持が容易になったことで、常にトルク感が湧き出るような加速を披露する。シフトダウン時のブリッピングは、人目(他車)がある中では少し気恥ずかしいほど迫力サウンドとともに瞬時に完了し、即加速に入るという感覚。

コックピット感の増した運転席

マイナーチェンジでコクピット(ディスプレイと操作パネルなど)を運転席側に15度傾けるという異例の改良もされたことで、運転席はいい意味でのタイト感も強まり、すべてが手の中に届く範囲で完結するハンドルリーチの良さも美点だ。シフトレバーは、75mm高い位置に設定されたことで、シフト操作もしやすくなっている。また、マニュアルモード時のシフトレバーによる変速の向きが従来型から逆になり、引いてシフトアップ、押してシフトダウンになり、ラリーカーやレーシングカーのシーケンシャルトランスミッションのような操作性に変更されている。こちらは、市販車ではポルシェやBMWなどが採用していて、少数派ではあるものの、オーナーであればすぐに慣れるだろうし、せっかくのハイレスポンスだけに、マニュアルモードでの変速も積極的に楽しみたいところ。なお、8速ATの「GR-DAT」には、パドルシフトも用意されていて、手元で素早い変速操作も可能だ。

走行シーンに合わせたモード選択が可能

「GR-FOUR」のモード選択は、ノーマル(前後駆動60:40配分)、グラベル(同53:47)、トラック(前輪60〜30、後輪40〜70で連続可変)を設定するほか、サーキット走行時には、スポーツかカスタムモード時にVSC OFFスイッチ短押し時にエキスパートモードも利用できるようになった。トラックにすると、状況によっては後ろから押されるようなコーナリングを披露する。好みや状況に合わせて走りを自在に変えられるのも最新のGRヤリスの魅力となっている。8速ATの追加で裾野が広がったように思えるGRヤリスだが、2ペダルであっても、2ペダルだからこその本気モード全開の仕立てになっている。