連載

自衛隊新戦力図鑑
陸自のUH-60JAを地上から見上げる。機体の左右に張り出したものが増槽(増加燃料タンク)だ。

ヘリコプターUH-60Jは陸海空3つの自衛隊が各々保有する装備だ。陸上自衛隊では「UH-60JA」と呼ばれ多目的に使っており、海上自衛隊と航空自衛隊では「UH-60J」と呼ばれ、救難機として事故などで遭難したパイロットなどを捜索救助するために使われる。機体の源流は米シコルスキー社が開発した「UH-60ブラックホーク」で、三菱重工がライセンス生産にあたり、3つの自衛隊での用途に合わせ改良などを施している。型式の数字を読んで「ロクマル」と呼ばれる。3自衛隊での保有数は、海自が約12機、空自が約40機、陸自が約40機となっている。

機体最前部の操縦室にはパイロットが2名、左右に座る。陸自のUH-60JAの場合、操縦室背後の機内空間に武装した人員約12名が搭乗できる。この武装した隊員を航空輸送し目的地へ着陸、もしくはロープ等を使って空中から隊員を降下させるなどして大きく前進させる空中機動の手法は現代の作戦・展開方法として必須のものとなっている。大きな積載能力を生かして物資や人員などを航空輸送するのが多目的ヘリの主な役目といえる。

機体中央部にはスライドドアがあって、搭乗する人員の乗降口となる。
左右のスライドドアを開け、ロープを降ろし、これを伝って人員が地上へ降りる「リペリング降下」。機体を降着させず人員のみ素早く降ろす手法。

本機の外観の特徴は機体の左右に張り出した増槽(増加燃料タンク)だ。これを使った航続距離は約470kmと長い。そしてハイパワーな2基のエンジンを駆使した実用上昇限度は約4500mもある。つまり日本の山岳地のすべてに対応できる性能だ。救難機として見た場合、長いアシを生かして広範囲を捜索し、高空まで上がれることで山岳救助にも対応できる機体だとわかる。

機体の外にはホイスト装置(ウインチの一種)を取り付けてあり、ここからワイヤーを繰り出して遭難者等を吊り揚げて救助し、機内に収容して運ぶ。救助作業は基本的にこうした手法で行なわれる。地上や海上の遭難者の元へ降下するのは(空自海自の場合)救難員などと呼ばれる隊員で、専門教育と過酷な訓練を積み上げたプロがあたる。ちなみにヘリを使う救助部隊は警察や消防、海上保安庁などにも置かれているが、最も過酷な環境下で活動可能なのは自衛隊の救難部隊だと思う。そしてUH-60J/JAは高運動性と飛行安定性を兼ね備え、悪天候でも運用可能だ。

航空自衛隊の救難機UH-60J。写真は2011年4月25日、東日本大震災での捜索救助などの対応で空自松島基地に集まった機体(手前は旧塗装機)。
現在の空自UH-60Jは青色基調の洋上迷彩塗装が施されている。空中受油機能も付加され、機体右前方下部に筒状のプローブ・アンド・ドローグ式の空中受油装置(プローブ)と、操縦席内に燃料制御パネルが取付けられている。写真/航空自衛隊
空自UH-60Jの奥は救難機U-125A。実際の現場ではこの2機がペアで運用される。固定翼救難機が急行してまず広範囲に探し、続いてUH-60Jがピンポイントで捜索、吊り揚げ救助する。写真/航空自衛隊

救難機としてのUH-60J/JAの本来任務は事故などにより遭難者となった自衛隊パイロットやその他の人員などを救助するための装備(と部隊)だ。そして自衛隊のヘリというものは我々の日常生活にはほぼ関係がない。しかし災害発生時、孤立した被災者には太い命綱のような存在になる。

災害時に自衛隊が被災地でヘリレスキューを行なうことはご存知のとおりだ。発災直後には各種のヘリが飛び立ち被災地へ急行し、情報収集と同時に救難ヘリは救助を開始する。過去、多数の災害で傷病者や被災者を救ってきているのもご存知のとおりだ。国民にとっても頼りになる装備である。

東日本大震災での海自UH-60J救難機。2011年4月25日、宮城県石巻市北東部、北上川流域の大川小学校周辺で行方不明者捜索を行なった。
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海上自衛隊の汎用護衛艦で現役艦や退役直後の艦などを見てきた。最新鋭の汎用護衛艦では「あさひ」型が最も新しい戦力として就役している。海自の建艦・整備体制は先を見ており、時代に即した使い方ができるさらに新しい汎用護衛艦を準備している。予定通りならこの3月にも就役する。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

https://motor-fan.jp/mf/article/41168/

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