連載

自衛隊新戦力図鑑

陸海空自衛隊:戦後初の国産小銃「64式7.62mm小銃」は、古くはなったが一部で現役を続ける自動小銃だ

陸上・海上・航空の3つの自衛隊で使われてきている小銃が「64式7.62mm小銃」だ。先の大戦後初めて国内で開発・生産された自動小銃、アサルトライフル(突撃銃)である。自衛隊の前身組織・警察予備隊の黎明期に不足した火器を補うものとして開発導入されて以来、約60年間使い続けられている。 TEXT&PHOTO:貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

常に第一線の能力を維持

航空自衛隊の主力戦闘機F-15J。我が国では現在約200機を保有・運用中だ。空自では複数のF-15J飛行隊が日夜、防空の任に就いている。激しい訓練を重ねながら日本領空を警戒警備し、国籍不明の航空機など不審機が日本領空付近へ飛来すれば対領空侵犯措置と呼ばれる緊急対応を行なっている。

この緊急対応は「スクランブル(緊急発進)」と呼ばれ、その回数が2021年度には1004回に上ったと防衛省は発表している(前年度比279回も増加)。これは平均すると1日あたり2~3回の対応頻度となる。増加傾向は約20年前から始まっていた。従来はロシア機が多かったが、2010年以降は中国機がロシア機を上回る勢いで増えている。ロシア機は冷戦期以降の南下飛行を日本海や太平洋上で続け、中国機は海洋進出を図る意図で東シナ海上を飛行する。これらに対処する主力機がF-15Jだ。

航空自衛隊F-15J戦闘機。エンジンにはF100-PW(IHI)-220Eターボファン(アフターバーナー装備)を2基搭載する。大推力を発生するパワフルな心臓部だ。

航空自衛隊仕様機F-15Jの基となるのは米マグダネル・ダグラス社(現ボーイング)が開発し米軍が導入したF-15イーグル戦闘機だ。F-15の初号機と呼ばれる機体が初飛行したのは1972年7月で、もう50年前のことになる。

航空自衛隊と日本政府がF-15の導入を決めたのが1970年代後半。米F-15C/D型をベースに、日本・空自用へ仕様変更等を行ない、ライセンス生産などの手法で三菱重工が造ったのが「F-15J」である(複座型「DJ」も同様)。
この前段階で、米国内工場で生産された最初の機体が米国内で空自に引き渡されたのが1980年。これを初号機とすると初飛行も同年になる。そして空自で運用開始されたのが翌1981年だから、もう41年になる。

戦闘機を「世代」で区分した概要図。図/防衛白書

つまりF-15やF-15Jは古い戦闘機となった。しかし古いからダメと単純にいうのは拙速だろう。F-15の概念研究や開発の中身、設計や生産体制などは良好で、つまり素地が良かった。発展性や拡張性も結果的に満たしており、先見性もあったと思える。時間の経過とともに陳腐化する部分については各種の改修を行なうことで常に第一線の能力を維持してきた機体だ。たとえば古いレーダーを新しくする、航法装置などの電子機器を更新するなど、旧世代となった部分を現代的に直す作業を長年行なってきた。

空対空レーダーミサイル×4発、空対空赤外線ミサイル×4発などを搭載可能。多用途化改修の計画では対空・対地・対艦の各攻撃能力を向上させた兵装体系を扱える多目的戦闘機へ更新される目論見があった。写真/航空自衛隊

この「近代化改修」は空自F-15Jに対しても行なわれおり、空自が保有する約200機のうち約半数が近代化改修工事を受けている。自動車でいう高年式の機体を優先して改修したものだ。加えてこれらにさらなる近代化改修を受けさせる計画もあった。もう一方の約半数、低年式の機体はいわゆるコスパの観点から近代化はせず、別の機種で代替させる。F-15J非近代化機は退役予定年限まで運用して終わる、という予定のはずだ。

空対空戦闘能力が向上

空自F-15Jの近代化改修の例は機体に積む電子装置や戦闘システムなどの更新にみられる。機体各部の補修整備などもあわせリフレッシュされてきた。これに、同じように現代的な性能を求め開発されてきていた各種武装品と合わせて、防空システムとしてアップグレードが図られた。たとえばミサイルだ。国産の中射程空対空ミサイル「99式空対空誘導弾(AAM-4)」、同じく国産短射程空対空ミサイル「04式空対空誘導弾(AAM-5)」が装備可能となった。

99式AAM-4はアクティブレーダー誘導方式で、いわゆる「撃ち放し」が可能なもの。撃ち放しとは、射撃後にパイロットが誘導操作等を継続する必要のない機能を表す言葉だ。照準をロックして射撃すればミサイルが目標を捜索追尾し命中する。だからミサイルを発射した後はすぐに回避運動に移行したり、別の目標に対して攻勢に移ることもできる。生存性や優位性などが向上するものだ。

アクティブレーダー誘導方式で「撃ち放し」が可能な「99式空対空誘導弾(改)」(AAM-4(改):現AAM-4B)」。実用試験は2007年10月から09年3月まで行われた。写真/防衛省

いっぽう、04式AAM-5はオフボアサイト能力を持つ。オフボアサイト能力とは、自機の正面から大きく逸れた位置にいる目標に対して照準や攻撃を行なうことを指す。ミサイルと機体にこの能力を与えた。パイロットはヘルメットにHMD(ヘルメット装着式ディスプレイ)を装備する。目標に顔を向けることで、ヘルメットのバイザー上で照準操作をすることができ、そのままミサイルを射撃できる。従来の射撃は、コクピットの計器盤上方に機体正面へ向けて固定されたHUD(ヘッドアップディスプレイ)があって(現在もある)、この画面上の照準に目標を捉えるよう機体の向きや姿勢を操作し続けねばならないが、オフボアサイト機能ではこれが不要だ。これらミサイルの性能と合わせ、近代化改修機は総じて空対空戦闘能力が向上しているという。

先に『近代化改修機にさらなる改修を受けさせる計画もあった』と紹介したが、これは2021年4月に防衛省が計画見直しを検討中と報道されて以降、動きがみられない。多用途化改修と呼ばれたこの計画では機体を延命し、偵察機や電子戦機など派生モデルを生み出す案も盛り込まれたが、見直しが行なわれているのだろう。再考理由の第1は改修費用の高騰が指摘されたこと。これで改修計画の一部もしくは全体の中止も検討と当時は報じられた。ヒトモノカネが減少する日本社会では仕方のない理由だと思う。

オフボアサイト能力を持つ「04式空対空誘導弾(AAM-5)」。写真は実用試験中の「新短距離空対空誘導弾(XAAM-5)」時代のもの。実用試験は2003年5月から04年3月まで行われた。写真/防衛省

結局、F-15J近代化改修機をさらに発展できるかどうかについては、F-35Aの導入拡大と次期戦闘機(F-2後継機)の開発進行も大きく関連してくると思う。F-35Aの調達と次期戦闘機の整備計画が変動した場合、F-15J改修機をさらに延命して凌ぐ必要もあるだろう。そもそもF-35Aの導入・増勢が低年式F-15Jの減勢をカバーできるようにうまく運べば、F-15J改修機に手を加えなくても済むこと。それはそうなのだが、予定どおりに進まないのが「常態」のF-35の調達は楽観できないし、次期戦闘機は開発体制を固めることを決めようとしているだけの状態(日英共同開発が濃厚な段階)だ。課題は山積しており不確定要素も多く、戦闘機調達・整備の仕事の困難さが窺われる。

航空自衛隊:次期戦闘機は日英共同開発。F-2後継機は英国次世代機「テンペスト」と共通か

先ごろ航空自衛隊の次期戦闘機を日本とイギリスで共同開発する体制が濃厚になったとの報道があった。次期戦闘機とはF-2戦闘機の後継となるもの。これまで日本の独自開発や、それより現実路線重視でアメリカとの共同開発を既定視されてきた状況が大きく変わろうとしている。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

https://motor-fan.jp/mf/article/58812/



先ごろ航空自衛隊航空幕僚監部は、2022年1月に小松基地所属のF-15DJが起こした墜落事故について、その調査結果を発表した。墜落原因は操縦者が「空間識失調(くうかんしきしっちょう:バーティゴ)」に陥った可能性が高いことによるものとした。空間識失調とは主にパイロットが一時的に平衡感覚を失う状態をいう。健康体であっても発生する不可避な生理現象だそうだ。

航空幕僚監部は再発防止策として、警報などを発し操縦者の認知を回復させたりする装置の整備や、衝突回避のための自動システムの搭載などを挙げた。
こうした事態もF-15Jの今後の方向性に大きな影響を及ぼしていると思う。緊急事態の事前回避に役立つ改修やその整備は機体の近代化と同じように重要なことだと思う。

航空自衛隊の戦闘機整備計画のイメージ。図/防衛省

連載 自衛隊新戦力図鑑

by MotorFan
業界人コラム 2026.03.15

日本配備のアメリカ軍が中東へ!? 派遣部隊の構成と目的を解説する

by MotorFan
業界人コラム 2026.03.08

アメリカがイラン製“低性能”兵器をコピー!? 同型ドローンが飛び交うイラン戦争

by MotorFan
業界人コラム 2026.03.01

日本が「死の商人」になる? 政府が武器輸出を進める理由と背景を考える

by MotorFan
業界人コラム 2026.02.22

次世代装甲車に必要な能力とは? ハイブリッド電気駆動、AI統合の新型車両を公開

by MotorFan
業界人コラム 2026.02.15

F-35B、今年度計画分の配備完了! 今さら聞けない「B型って、どんな戦闘機?」

by MotorFan
業界人コラム 2026.02.08

日本と中国の防衛産業が同じ場所に鉢合わせ!? シンガポール・エアショー2026開催