連載

自衛隊新戦力図鑑

油槽、とは?

「油槽(ゆそう)」とはガソリンや石油などを貯蔵する大きなタンクのこと。だから油槽船とは貯蔵タンクを備えた「タンカー」のことを指す。
油槽船は海上自衛隊のある基地から別の基地へ、護衛艦などが使う燃料を運ぶことが任務の船だ。2022年4月、そして7月に、それぞれ1隻ずつ計2隻の油槽船が建造メーカーから海自へ引き渡され、現在就役している。

海自には「補給艦」という艦種があるが、補給艦と油槽船は違うフネだ。

油槽船「YOT-01」を船尾方向から見る。外観はいわゆる内航タンカーそのまま(写真/新来島どっく)

油槽船が前述したように燃料の基地間輸送が仕事なのに対し、補給艦は護衛艦と共同行動をとり、洋上で燃料を補給することが仕事になる。
燃料を運ぶことは同じだが、活動状況が違うのだ。

だから油槽船の場合、補給艦のように単独・長期展開する能力や搭載装備は不要で、その代わり大量の燃料を基地間輸送することに特化した設計・仕様になっている。いわゆる内航タンカーの仕様で、補給艦の特徴的な装備となる「補給ステーション(給油ホースを護衛艦へと送るための設備)」も搭載しないでいい。内航タンカーとは日本国内で貨物や燃料輸送を行なう船をいう。

油槽船を示す記号は「YOT」

油槽船の建造は「株式会社 新来島どっく」が、同社の愛媛県の造船所で建造。同社のホームページを見るとタンカー建造に実績をみせる企業だとわかる一方で、防衛省向けの船舶建造は創業以来初と書かれている。
防衛省が2019年に示した「艦艇の支援能力確保のため油槽船(仮称・当時)の整備」により、2隻で55億円という予算。計画当初には積載量を示した「4,900t型油槽船(YOT)」と呼ばれていた。

ちなみに油槽船を示す記号「YOT」は、港内支援船を示す「Yard」、燃料船を示す「Oiler」、そして「Tanker」、各々の頭文字の組み合わせだ。そして1番船を示す01を加え「YOT-01」、2番船は「YOT-02」と呼ぶそうだ。

2番船の「YOT-02」。「YOT-01」と合わせ、同時に2ヵ所の基地へ燃料輸送が行なえる態勢だ(写真/新来島どっく)

主要諸元は、基準排水量約3500トン、全長104.9m、全幅16.0m、深さ8.0m、速力約12.6ノット。定員は14名。船内に12個のタンクを備え、約4900トンの軽油や艦船用燃料、航空機用燃料を積み込む。

日本の尖閣諸島・南西諸島に対して中国の進出が止まず、台湾問題も合わせて緊張が増している。油槽船は平時にはもちろん基地間燃料輸送を行なうが、仮に尖閣を発火点に日中対立が激化した状況下や、万一戦時下となった状況下では沖縄方面で海自の燃料枯渇が予期される。

2022年7月末、広島県の海自呉基地を訪問した際に撮影した「YOT-02」。「01」ともども呉警備隊の呉港務隊に配属されているという。

そうした局面では民間企業による燃料供給はできないから海自は自前のタンカー保有を計画した。このことを考えると筆者は緊張する。戦域化した南西諸島へ、どのくらいの危険度なら油槽船は燃料を運ぶのか? 丸腰の海自タンカー乗員はどう臨むのか? 

2022年8月末発売となる三栄ムック「自衛隊新戦力図鑑2022-2023」(現在鋭意制作中)では、軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之氏が油槽船の取材を行ない、上記の事項についての詳細解説をしていますので、ぜひ読んでみてほしい。

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