1994年に登場して長らく日産マルチシリンダーエンジンの代名詞であったVQシリーズに代わって、20数年ぶりに登場したV6がVR型。VQを生産しているいわき工場で製作されることから、ボアピッチ(108㎜)は踏襲されるが、ターボ化をはじめとして内容は完全に刷新されている。

60度のバンク角を採るため、「ホットV」(ターボチャージャーをVバンク内に収めるレイアウト)ではなく、ターボチャージャーは左右バンクの外側に吊り下げられる。

■VR30DDTT
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 2997cc
内径×行程 86.0mm×86.0mm
圧縮比 10.3
最高出力 298kW(405ps)/6400rpm
最大トルク 475Nm/1600-5600rpm
給気方式 ターボチャージャー
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 直接駆動
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL In-Ex/×

北米用5.0L・V8の代替となるダウンサイジングターボ・エンジンだが、注目されるのはその出力重視設計。欧州のライバル勢を凌駕することが命題となっただけあって、298kW(400ps)オーバーの出力を6400rpmという現代のV6ターボとしては異例の高回転域で発揮する。シリンダーはVQと同じオープンデッキだが、3.5層のガスケットやヘッドボルトの軸力管理で大きな燃焼圧力に耐える。ターボチャージャーは出力確保のために高回転化。オーバーランを避けるために渦電流式の回転センサーで回転数を監視。水冷式インタークーラーと電動ウェイストゲートで効率アップを図る。ポンピングロスの取り分が少ないことからVVELは廃され、レスポンスを重視してEGRを採用しないという潔さ。

スカイラインNISMOでは、最高出力420ps(309kW)/6400rpm、最大トルク550Nm/2800-4400rpmのスペックとなっている。

ミラーサイクルを利用するため、吸気側 VVTはレスポンスに優れた電動式を使用。バルブタイミングの急変動に追随せず、排気量からポンピングロス低減効果が薄いため可変リフト機構VVELは採用されなかった。
企画当初はV8とモジュラー生産ができるようバンク角90度が俎上に載せられたが、リーマンショックによる設備投資の抑制要求により、既存のV6と同じ60度に。ボアピッチも108㎜というVQ系の数値を流用。
ターボチャージャーはハネウェル製。小径ターボで性能を上げるには高回転化が必須だが、過回転のリスクがともなうため、渦電流式センサーで逐次回転数を監視し、遅滞なく制御を行なう。
現段階では北米市場専用エンジンではあるが、生産は福島のいわき工場が担当する。一時は工場の存続さえ危ぶまれたが、震災復興の象徴として、全社を挙げての生産開発支援が行なわれ、VR30のキーファクターとなった。
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