連載

自衛隊新戦力図鑑

宇宙空間を自由に機動する!?

宇宙空間を飛翔する人工物としては、一般的に人工衛星が知られているが、今回話題となった「航宙機」は人工衛星と何が違うのだろうか? 防衛装備庁(以下、装備庁)は以下のように説明してくれた。

『PM(プログラムマネージャー)の構想によりますと、航宙機・航宙母艦とも、基本的には人工衛星の一種と考えてもらっていいと思います。従来の人工衛星は一定の軌道を周回するものですが、航宙機は自由に移動できるものというコンセプトで取り組んでいます』(装備庁)

現代の国防に、人工衛星など宇宙空間のアセットは必要不可欠となっている。SSA(宇宙状況把握)能力の強化など、さまざまな取り組みが開始されている(画像は防衛省のXバンド防衛通信衛星「きらめき」のイメージ図/防衛装備庁)

では、宇宙空間を自由に動き回る航宙機で何をするつもりなのだろうか? 情報収集や監視を考えているようだが、まだまだ用途について踏み込む段階ではないという。

『まずは、既存の技術でどれくらいの速度で動かせるのか、動かすためにどういう技術が必要なのか、そもそも人工衛星を動かす必要があるのか……航宙機という概念について調査する段階です』(装備庁)

つまり、航宙機に「何をさせるか」よりも「実現可能か?」を調査・検討するのが、今回の「航宙機及び航宙母艦の概念検討」の目的のようだ。続いて「航宙母艦」についても、その用途について伺った。

『航宙機に電力を供給するなどの機能をイメージしています。航宙機のプラットフォームとなる存在です』(装備庁)

以上のように「航宙機・航宙母艦」とは、既存の人工衛星の延長としての存在であり、SF映画やアニメで描かれるような「宇宙戦闘機」というワケではなさそうだが、とても大胆な発想であることは間違いない。装備庁がこのような奇抜なアイデアに取り組む背景には、昨年立ち上がった新たな研究所の存在がある。

革新的技術を素早く取り組むための新設研究機関

2024年10月、「防衛イノベーション科学技術研究所(通称:イノベ研)」が発足した。装備庁のもとにはこのほかにも陸上装備研究所、艦艇装備研究所、航空装備研究所、新世代装備研究所など4つの研究所が存在するが、新たな研究所を立ち上げた理由を同庁は以下のように説明する。

『これまでの四研究所は、主に既存の装備品についてその機能・性能を向上させていく……つまり既存装備の延長線上の研究に取り組んでいました。対してイノベ研は、これまでにない、新たな機能を獲得するための研究を行なうという点で、方向性がまったく異なります』(装備庁)

防衛イノベーション科学技術研究所(Defense Innovation Science & Technology Institute、DISTI)は2024年10月に発足した。同研究所のオフィスは、自衛隊施設内ではなく恵比寿ガーデンプレイスに開設された。広く革新的アイデアを求めるという目的から、対外的に開放された民間商業ビルが選ばれたようだ(写真/防衛装備庁)

こうした目的のもと、イノベ研では既存の装備にとらわれないアイデアを持った人材を公募し、PMとして採用している。PMは自身のアイデアを実現するための研究に一定期間取り組むそうだ。このような採用スタイルは、防衛装備庁として過去に例がないという。

こうした組織が設立された背景には、サイバーや人工知能など技術の進展の加速がある。世界では日夜、さまざまなところで革新的技術が誕生しており、これら先端技術を素早く防衛分野で活用していくことが、イノベ研設立の目的だという。それだけに、採用されたPMには高い自由度が与えられているようだ。今回の「航宙機」もアイデアはもちろん、斬新な命名もPMの発案だという。

アメリカでは以前より最新技術を国防に活用する取組みが行なわれている。代表的なものがDIU(国防イノベーション・ユニット)であり、イノベ研はこうしたアメリカ軍の組織を参考に作られた(写真はイメージ/アメリカ海軍)

……では、PMが「宇宙戦艦」と名付けていたら、そのように発表されていたのだろうか?

『基本的にPMの考えを尊重しておりますが、われわれとしても適切な表現となるよう心がけています』(装備庁)

取材協力:防衛装備庁

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