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自衛隊新戦力図鑑

アメリカの「次世代航空支配」計画

現在、最先端の戦闘機は「第5世代機」と呼ばれる。第5世代機の、もっともわかりやすい特徴がステルス性能だ。実用化されているものに、アメリカが開発したF-22やF-35、ロシアのSu-57や中国のJ-20がある。これら第5世代機の配備が進む一方で、次世代……つまり「第6世代機」の開発が進められている。アメリカの「次世代航空支配(Next Generation Air Dominance、NGAD)」計画も、そのひとつだ。

左上からアメリカのF-22とF-35。下段は中国のJ-20と、ロシアのSu-57。現在、実用化されている第5世代戦闘機はこの4機種(上段写真/アメリカ空軍、下段写真/筆者)

3月21日、トランプ大統領はNGADを構成する戦闘機「F-47」を発表した。「47」という数字は既存の命名ルールから外れており、空軍参謀総長いわく『第2次大戦で活躍した「P-47」戦闘機を称え、空軍が創設された「1947年」にちなみ、そしてトランプ「第47代」大統領の本計画への貢献に敬意を示したもの』だそうだ。おそらく、トランプ氏への配慮が本音で、前二者は正当化の方便なのだろう。この日、F-47の画像も公開されたが、現実的とは言えない点が多く、実際の形状を隠蔽するために加工された画像だと言われている。

公開されたF-47の画像にはカナード翼(前方の小さな翼)らしきものが見えるが、カナード翼はステルス性の障害となることから疑問視する声が出ていた。発表された画像は、いずれも加工されたもののようだ(画像/アメリカ空軍)

さて、F-47を「NGADを構成する戦闘機」と述べたが、NGAD計画は単に戦闘機単体ではなく、文字通り「空を支配するためのシステム群」全体の開発計画であり、F-47と連携して戦う無人戦闘機「共同戦闘機(Collaborative combat aircraft、CCA)」の開発も含まれている。

第6世代機とは、どんな戦闘機なのか?

さて、第6世代機だが、実は具体的な定義はまだ存在しない。各国とも「既存機(第5世代機)を上回る」ため、その能力・機能について試行錯誤している段階とも言える。一方で、共通する理解として「ステルス性を持ち、無人戦闘機と連携し、そして高度な情報処理能力やネットワーク能力を持つこと」などが想定されている。

F-47と連携して戦う共同戦闘機(CAA)の候補のひとつ、アンドゥリル製「YFQ-44A」(写真/アメリカ空軍)

現代の戦闘は、個別の兵器同士が戦うのではなく、陸海空&宇宙、サイバー空間に広がったアセット(兵器、装置、機能)が連携して戦うものとなっている。だから、NGADは「空を支配するためのシステム群」なのであり、第6世代機にはネットワーク能力が不可欠なのだ。

世界各国で次世代機計画が進む

F-47はトランプ大統領の任期中(2029年1月)の配備を目指すとされている。これまた同氏に対する過度な配慮が窺えるが、もし実現するなら世界最初の第6世代機となるだろう。また、アメリカ以外の国々でも第6世代機の開発計画が進んでいる。

F-47と連携して戦う共同戦闘機(CAA)の候補のひとつ、アンドゥリル製「YFQ-44A」(写真/アメリカ空軍)

日本は英伊と組んで「グローバル戦闘機プログラム(GCAP)」を進めており、2035年の配備を目指す。つい先日には、本計画にサウジアラビアの参画が報じられた。同国の参画は以前から噂になっていたが、人権問題や中露への情報漏洩の懸念から難色が示されていた。報道では開発に関与せず、資金面の協力に留める「パートナー国」となるようだ。また欧州では仏独西が「将来戦闘航空システム(FCAS)」計画を進める。

中国の動きも活発だ。第5世代機J-20の配備を進め、新たにJ-35も開発し、航空技術で急成長を遂げている同国だが、昨年末から「J-50」と呼ばれる異形の無尾翼機が飛行する姿が頻繁に目撃されるようになった。J-50は第6世代機だと考えられている。

日英伊が共同開発する「GCAP」の模型。また、日本は独自に「戦闘支援無人機」と呼ばれる、戦闘機と連携して戦う自律型無人機の開発も進めている(画像/筆者)

冒頭で第5世代機の開発国として米中露3カ国の名を挙げた。第6世代機は確実なものだけでも8カ国が開発に乗り出す状況にあり、将来の空の覇権をめぐる戦いは、すでに始まっていると言えるだろう。

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