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自衛隊新戦力図鑑

艦載型無人攻撃機 バイラクタルTB3

「バイラクタル」の名前をご存じの方は多いのではないだろうか。ウクライナ戦争初期にウクライナ軍がロシア軍地上部隊を苦しめた無人攻撃機が「バイラクタルTB2」であり、今回解説する「バイラクタルTB3」は、その発展・艦載型である。

バイラクタルTB3は全長8.35m、翼幅14m。TB2が全長6.5m、翼幅12mだったのに比べて若干サイズアップしている(画像/バイカル社)

ドローンと聞くと30cm程度の小型・低価格なもの(ウクライナの最前線では自爆攻撃などに使われている)を思い出すかもしれないが、バイラクタルシリーズは「MALE(中高度・長時間滞空)」型と呼ばれる軍用モデルで、翼幅10mを超える大型のもので、高度数千mを20時間以上飛行することができる。

TB3は国産のターボディーゼル・エンジンを搭載し、TB2より出力を大きく向上させた(100馬力から170馬力へ)。兵装搭載量は2倍近くになり、さらなる高高度性能と滞空時間の延長も実現している。また、艦艇の短い滑走路で離着陸するため、翼にフラップを追加するなどの改良も施された。「アナドル」艦上での離着陸は昨年11月に成功しており、今年4月には完全自律式の離着陸にも成功していた。

「アナドル」から発艦するバイラクタルTB3。短い強襲揚陸艦の飛行甲板で運用するため、同機は短距離離着陸性能を持つ。スペースの限られた艦内に搭載するため翼は折り畳み式となっている(画像/バイカル社YouTubeより)

ドローン空母が持つ将来性

トルコは自国を囲む海を「青い祖国」と呼び、近年急速に海軍力を増強させている。今回のTB3搭載艦である強襲揚陸艦「アナドル」も2023年に就役したばかりだ。だが、同艦はもとからドローン空母を目指していたわけではなく、アメリカからF-35B戦闘機を導入する計画だった。しかし、対露関係を巡る問題からトルコへのF-35B輸出が差し止められたことから、国産ドローンの艦上運用に舵を切ったという背景がある。

強襲揚陸艦「アナドル」は、スペイン海軍の「ファン・カルロスI世」と同型であり、トルコで建造された。10機のF-35B戦闘機を運用するSTOVL空母としての役割を期待され、艦首が反りあがったスキージャンプ式の飛行甲板を持つが、F-35Bの輸入は頓挫してしまった(写真/トルコ海軍)

結果的にこれは革新的な取り組みとなった。現在、世界的にドローン空母への関心が高まっているなかで、トルコがその先鞭をつけるかたちになったからだ。なぜ、ドローン空母が注目されるのか? それは従来の有人戦闘機空母よりも、はるかに安価に海上航空戦力を整備できるからだ。これまで空母を持てなかった国でも、ドローン空母なら保有できる。実際、中東のイランがタンカーを改装した空母を建造し、ドローンの運用を計画している。

バイラクタルTB3に搭載されたトルコ製「MAM-L」小型精密誘導爆弾。無人攻撃機搭載用の小型爆弾で、誘導方式はレーザーおよびINS/GPS方式を用いる。試験は成功し、爆弾は目標に命中した(画像/バイカル社YouTubeより)

さて、余談ながら今回の試験についてバイラクタルを製造する「バイカル」社・会長がSNSに投稿した写真に、海上自衛官らしき人物が映っていることが話題となった。自衛隊は現在「無人アセット防衛能力」を掲げて積極的な無人機活用を模索しており、気になるところだ……が、各国武官も参加していたとの情報もあり、大きな意味はないのかもしれない。

バイカル社では艦載用無人機としてジェットエンジン搭載の「クズルエルマ」も開発中だ。トルコは強襲揚陸艦に続き正規空母の建造も計画しており、将来的に有人・無人機混成の空母航空部隊が誕生するかもしれない(写真/バイカル社)

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