NEV(新エネルギー車)だけじゃない。ロボットも空飛ぶクルマも

中国北京と上海で毎年交互開催される国際モーターショー。2025年は上海国際モーターショー(AUTO  SHANGHAI 2025)の年である。世界最大の自動車市場で行なわれる世界最大のモーターショー。4月23~24日のプレスデーでもその熱気は凄まじかった。まず、スケールが大きい。2日間ですべてのメーカーブースを見て回るのは困難だ。

AUTO SHANGHAI 2025 フロアガイド

出展している自動車ブランドのブースは、ざっと80(中国のほか日米欧を含めて)。2023年のジャパンモビリティショーと比較してもその多さは際立っている。中国の自動車メーカーは200社とも言われているから上海モーターショーに出展している中国ブランドは、言わば中国自動車メーカーのなかの一軍プレーヤーたちだ。

GAC(広州汽車)の空飛ぶクルマのコンセプトモデル「GOVY-AirCar」。地上走行用の四輪シャシーと空中飛行用のドローンモジュールは分離/結合が可能。
「GOVY-AirCar」の定員は2名。航続距離は20-30km、飛行速度は120km/hだ。最大テイクオフウェイトは950kg。GAC独自のADiGO-Pilot自動運転システムを搭載している。
紅旗ブランド初の空飛ぶクルマ。これも地上走行用の車両と空中飛行用のeVTOL機が組み合わされたモジュール構造だ。

だから、ということでもないが、勢いを感じさせるのはやはり中国OEMである。ブースにはBEV、PHEVのニューモデルのほか、空飛ぶクルマ、人型ロボットが並ぶ。それも、かつてのようなこけおどしではなく、すでに実現できているものが多いのだ。ただし、中国自動車市場は、過剰な生産能力と激しい競争に直面しており、業界再編の波が押し寄せていることも同時に感じさせる。淘汰されるブランドも出てきている。韓国・ヒョンデ/キアは、今回出展を見送った。2024年の北京ショーでは熱狂に包まれていたシャオミのブースは、ひっそりとしていた。3名の女子学生の命を落とした3月のシャオミSU7の事故の影響は大きく、テスラ・Model Yのライバルになるはずの新型車の発表が見送られた(YU7はその後5月22日に発表された)。

BYDの上級ブランド「仰望(Yangwang)」のU7は、話題の水平対向4気筒エンジンを発電用に積む。
「仰望(Yangwang)のU7」水平対向の採用理由のひとつはパワートレーンの全高を抑えるため。そのためにオイル供給はドライサンプとしている。

中国の景気後退で新車販売の行方にも翳りが見えていて、各自動車メーカーは割引や金利低減などの販売促進策に力を入れる。

とはいえ、新技術に対する意欲が旺盛なのは、やはり中国OEMだ。特にBYDはブースの規模、内容ともに盛りだくさんで、いまもっとも勢いのあるメーカーであることを示していた。

ファーウェイ(HUAWEI)と江淮汽車(JAC)が共同開発した超高級EV「尊界(MAEXTRO)S800」

ファーウェイ(HUAWEI)と江淮汽車(JAC)が共同開発した超高級EV「尊界(MAEXTRO)S800」も今回のモーターショーで初披露された(じつは2024年11月の広州モーターショーでも、ごく一部の関係者に見せていた)。マイバッハやロールスロイスをベンチマークした尊界ブランド初のモデルだ。ファーウェイは、ファーウェイそのものでブースは構えないが、HIMA(鴻蒙智行)として、HUAWEI×賽力斯集団、奇瑞汽車、北京汽車、江准汽車とそれぞれの中国OEMとブランドを立ち上げている。具体的には賽力斯集団(セレス)が「問界(AITO)」、奇瑞汽車(チェリー)が「智界(LUXEED)」、北京汽車が「享界(STELATO)」、江淮汽車が前述した「尊界(MAEXTRO)」だ。

日本ブランドはNEVで存在感を示す必要がある

トヨタのプレスカンファレンスの様子
トヨタはbZ7を発表した。bZ7は現地開発モデルとして、広州汽車集団有限公司(GAC)、広汽トヨタ自動車有限会社(GTMC)、トヨタ知能電動車研究開発センター(中国)有限会社(IEM by TOYOTA)が共同開発したBEV。bZシリーズのフラッグシップセダンだ。

対する日系OEMは、トヨタ/レクサス、ホンダ、日産、マツダが中国市場で生き残っていくための新型車を投入した。それぞれが、中国の合弁先のリソーセス、サプライチェーンを活かして中国OEMの知能化が進んだ新エネルギー車(NEV=BEV、PHEV、FCEV)にキャッチアップを目論む。

マツダがまとめたデータ。2024年の中国乗用車市場における新エネ車(=NEV、BEV/PHEV/REEV/FCEV)の割合は47%に達した。NEVの内容まで見ると、BEVの伸びよりもPHEV/REEVの伸びが大きいことがわかる。つまり、ICEが必要なクルマということだ。

さて、上のグラフはマツダがまとめた中国市場の概況だ。2024年はICE(エンジン)車とNEVの比率は53:47だったが、おそらく2025年はこの比率は逆転するだろう。NEVのなかで販売が増えているのがPHEV/REEV(レンジエクステンダーEV)だ。

長安マツダは、EZ-60を発表。
48時間で予約10,060台! マツダEZ-60ディテールをチェック。サイズは? プラットフォームは? パワートレーンは?

新型電動クロスオーバーSUV「MAZDA EZ-60(マツダ・イージーシックスティ)」が上海モーターショーで発表された。マツダと長安汽車の協業で生まれた新エネルギー車の第二弾だ。第一弾のEZ-6が欧州(MAZDA 6e)、タイなどへ輸出されていることを考えるとEZ-60も中国専用というわけでないかもしれない。期待のEZ-60をじっくり見ていこう。

https://motor-fan.jp/mf/article/324302
ホンダは「烨(yè:イエ)」シリーズの第2弾となる「広汽Honda GT・東風Honda GT」を世界初公開した。バッテリーはCATLと共同開発したLFPを使う。イエシリーズは、Momentaと先進運転支援技術、DeepSeekのAI技術も使う。
日産のプレスカンファレンスの様子
日産が掲げる「中国で、中国のために、そして世界へ」という戦略のもと、PHEVのピックアップトラック、Frontier Pro PHEVが発表された。鄭州日産との共同開発によるグローバルモデルだ。フレーム構造のフロントには1.5L直4ターボを搭載。EV走行で最大135km走れる。中国市場で2025年後半に発売予定。将来的には中国からの輸出も想定している。

NEV市場を牽引しているのは中国ブランドで、そのシェアはなんと約9割。そして日系ブランドのそれはわずか1%だ。ちなみに、ここでもトップはBYD(34%)、以下Geely、上海汽車、テスラと続く。日系はTOP10には入ってこない。NEV市場で存在感を示せないと、中国市場からの退場を宣告されかねない。そんな危機感のなかで日系OEMは体勢の立て直しを図っている。

日本勢は中国で巻き返せるか? 新技術開発にも貪欲な中国勢と戦うトヨタ、ホンダ、日産、マツダ

世界最大の自動車市場の世界最大のモーターショー、それがAUTO SHANGHAI 2025(上海車展)だ。主役は中国OEM。BEVだけでなく、新開発エンジンを搭載するPHEVや人型ロボット、空飛ぶクルマまでを展示。勢いを感じさせた。対する日本勢はどうだったか?【上海モーターショー2025レポート 後編】 PHOTO:Motor-Fan/長野達郎(NAGANO Tatsuo)

https://motor-fan.jp/mf/article/331223
後編はこちらから