2026年のF1規定がベース

ネクスト・フォーミュラ・プロジェクト(NFP)は、「トップフォーミュラに迫るような、次世代フォーミュラのコンセプトカー」を製作するプロジェクト。2024年の人テク展ではプロジェクトの開始が告げられたが、1年後の人テク展では50%風洞モデルが展示されるほどまでにプロジェクトは進捗している。今秋にはプロトタイプが完成する予定だ。
NFPでは、2028年に使われることを想定し開発に取り組んでいるという。性能のベンチマークは現行のスーパーフォーミュラ(シャシーはイタリアのダラーラ製。エンジンは2.0L直列4気筒直噴ターボ)。カーボンモノコックをはじめとするシャシーは、安全面を含め大幅に内容が変更される2026年のF1規定をベースにしている。

タイヤは18インチだ。現行のスーパーフォーミュラは13インチ。F1は2022年から18インチを導入しており、フォーミュラEは2014年の発足当初から18インチである。18インチ化は近年のトレンドに合わせた格好。今どきフォーミュラカーが13インチを履いていたのでは、量産タイヤとの技術のリンクの面でも、イメージの面でも役に立てにくいという背景がありそう。タイヤの大径化にともない、「ブレーキも楽になる」と、車両開発のとりまとめ役を務める童夢の天澤天二郎エンジニアは話す。
「18インチ化によって大きなサイズのディスクが使えるようになるので、摩耗に余裕が出ると考えています。どの程度の摩耗量になるのかは、テストで検証する予定。年々パフォーマンスが向上しているなかで、13インチの場合はスペシャルな摩擦材を使って対処していると聞きます。18インチではその必要がなくなるので、コストが軽減される可能性もありますし、サプライヤーさんが新規参入しやすくなることも考えられます」
部品を供給する側にとっての参入のしやすさや、継続的に部品を供給しやすい環境を整えることもNFPのコンセプトだ。2026年のF1規定をベースにはしているが、あくまでベースであって完全に準拠しているわけではない。「F1の規定をすべて厳密にクリアする車両を作ろうとはしていません。フォーミュラの最高峰はこういう形であるべきという、ひとつのガイドラインと捉えています」と、天澤氏は説明する。
例えば熱交換器。F1ではカウルの形状に合わせて異形のスリムな熱交換器を搭載するのが一般的だが、NFPはコストの観点から矩形の熱交換器を使うことを想定。サイドポッドのボリュームは、想定する2.0L直4ターボエンジンに必要な容量を確保し、かつ矩形の熱交換器が入るボリュームを確保した形状になっている。おそらく、2026年のF1はもっとスリムな状態で出てくるはずだ。
リヤカウルも2026年のF1規定に合致していない。F1の規定では「あってはならない」エリアにボディワークがあることになる。人テク展に展示されたNFPの50%風洞モデルを見ると、リヤカウル後端がリヤウイングの下まで広い幅を保ったまま伸びているのがわかる。F1の規定に該当しないのはこの部分だ。

リヤカウルの開口部を負圧域近くに配置することで、効率良く空気を引き出そうという考えだ。風洞モデルではサイドポッド上面にパーツを交換できるエリアがあり、この部分を取り替えることでルーバーを付けたときの感度を確認している。後方から観察すると、ビームウイングの下にフラップが設置されているのが確認できる。開発当初はビームウイングとフラップの位置関係は逆だったが、このほうが効率はいいと、現状の構成に変更したそう。

「リヤカウルはビームウイングに覆い被さっていますが、これはF1では認められません。カウルをあそこまで拡大することで、カウルにルーバーを設けなくても冷却効率が確保でき、空力的なゲインが期待できるため、性能と効率の観点から採用しました」
2026年のF1規定は効果を減らす方向だが、車体底面と地面の間を流れる空気の流れを利用して大きな負圧を生み出し、ダウンフォースを得るグラウンドエフェクトカーであることに変わりはない。NFPは基本的な考え方は踏襲しているものの、寸法はF1と同一ではないという。また、追い抜きのしやすさの観点での検証をCFDと風洞(童夢の風流舎)で行なっているという。

人テク展でのJMIAのブースには、NFPの50%風洞モデルとともに、NFPが搭載する新開発の6速ギヤボックスが展示されていた。側面を見ると、ドライブシャフトが通る小さな丸いカバーの左下に大きな丸いカバーがあるのがわかる。18インチにするとアクセルセンターの位置が高くなるため、13インチ用のギヤボックスではドライブシャフトに大きな上反角がついてしまう。そこで、アイドラーギヤをかましてアクスルの位置を高くしたというわけ。エンジンを含めパワートレーン全体を傾ける(後ろ側を持ち上げる)アイデアもあったというが、それはそれで大仕事になるため非採用となった。
NFPは風洞モデルからも流麗なスタイルであることは伝わってくるが、実車はどうか。期待がふくらむプロジェクトだ。