「説明員の解説に耳を傾けながら実際の作業を目にすることで、モノづくりに対する興味や関心を高めてもらえたらと願っています」(コミュニケーションプラザ・上平万裕紀さん)

袋井市立浅羽中学校2年生約40名が訪れた時の様子。エンジン音が響く完成検査場の大迫力に驚きの声も

「この検査をAIなどに置き換えることはできないですか? 100項目以上を1台ずつ検査するのは大変だと思うのですが」

ヤマハ発動機・二輪車組立工場。工場見学のクライマックスとも言える完成検査場で、その迫力を目の当たりにした中学2年生の素朴な疑問に対し、ガイドを務めた生産統括部のスタッフが丁寧に答える。

「完成検査は、定められたルールで正確に行なうことはもちろんですが、ヤマハ発動機では人の感性をとても大切にしています。オートバイは人が操作するものですし、豊かな経験を持つ検査員にしか見つけられないことがあると考えています」

その説明を聞いて中学生は頷き、完成車にまたがる検査員の動きに再び視線を戻した。

工場内を一望できる高所から、AGVバイパス方式で組み立てられる様子を見学

二輪車は1台あたり約1000~3000点の部品で構成されている。この工場では同時に複数のモデルが組み立てられるため、連日約9000種・計60万点もの部品が集まってくる。その部品をモデルや工程ごとに仕分け、異なる複数の製品を少量ずつ、かつ同時に効率よく組み立てるためには、綿密な計画とそれを実現するための設備やツールが必要となる。

「再開後の組立工場では、AGV(自動搬送車)によるバイパス方式の生産が始まっています」と説明するのはコミュニケーションプラザの上平万裕紀さん。

作業者の体格によって可変する作業台、部品の組み忘れ防止のための管理体制、また渋滞を避けて次の工程まで自ら移動するAGVなど、「組立におけるさまざまな課題をどのように解消しているのか、説明員の解説に耳を傾けながら実際の作業を目にすることで、モノづくりに対する興味や関心を高めてもらえたらと願っています」と上平さん。

工場見学後はヤマハ発動機の企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」の見学も

「(二輪車の組立は)重労働というイメージを持っていたが、作業環境が整っていて、じつは技術的なスキルが求められる仕事ということがわかった」、「将来、この工場で働いてみたいと思った」など、見学後の学生たちの感想はさまざま。

「後日、レポートなどを送ってくれる学校もあります。そうしたものは、生産に関わる社員の励みにもなっています」(上平さん)。

静岡県磐田市にあるヤマハ発動機本社近隣の学校を中心に、すでに秋口から年末にかけての予約も入り始めているとのことだ。

ヤマハ発動機 企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」