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自衛隊新戦力図鑑

海上自衛隊新戦力図鑑 潜水艦、イージス艦、輸送艦……日本の海、シーレーンを守る装備【自衛隊新戦力図鑑一気読み】

Motor-Fan.jpの人気連載「自衛隊新戦力図鑑」。日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくり見る機会がない最新兵器たち。ここでは、海上自衛隊の装備を解説する。

「空母」への改修工事を受ける

ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型1番艦「いずも」(DDH183)。改修後の飛行甲板には新たに引かれた黄色の標示線が見える。白い点線は従来からあるヘリコプター用の発着艦標示。新たに引かれた黄色の標示線はこの白点線より艦中央寄りに引かれている。

海上自衛隊最大の護衛艦、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型は、ご存知のかたも多いと思うが、現在いわゆる「空母(航空母艦)」へ改修される工事を受けている。護衛艦「いずも」型には1番艦の「いずも」と、2番艦「かが」があり、各々で段階的に改修工事を受けている最中だ。軽くおさらいしてみよう。

まず、1番艦「いずも」は2020年3月、改修工事を担当するJMU(ジャパンマリンユナイテッド株式会社)横浜事業所磯子工場(横浜市磯子区)のドックへ入渠、第1段階の工事を始めた。

これは自動車でいう「車検」に相当する艦艇の定期検査に組み込んだものだ。定期検査は、会計年度ごとに行なう年次検査よりも入念な内容で周期的に行なわれるもの。大規模な修理や改造などの作業を定期検査とセットで行なえば効率的で費用も抑えられる、という狙いがある。

そして1年3ヵ月ほどの期間を費やして第1段階の工事を終え、2021年6月25日に横須賀基地へ戻った。その後「いずも」は実働サイクルに入り、2022年夏には護衛艦「たかなみ」や哨戒機P-1とともに米国ハワイ諸島へ向かい、環太平洋合同演習「リムパック(Rim of the Pacific Exercise)」へ参加するなどしている。

「いずも」の第1段階改修工事は主に、STOVL(Short Take Off and Vertical Landing.=短距離離陸・垂直着陸)戦闘機F-35Bを乗せるための設備を設ける基礎工事だった。

飛行甲板には艦首から艦尾まで1本の黄色線「標示線(トラムライン)」が引かれた。これは米海軍空母や強襲揚陸艦などで見られる甲板の標示線と同様のものだで、艦載機パイロットは機体の中心をこの標示線に合わせて滑走、発艦するという。
標示線とともに、甲板表面の耐熱処理加工も施されたという。

これはF-35Bが着艦するときに下方へ噴出するエンジン排気熱から甲板を防護するためのものだ。耐熱処理加工は甲板に置かれる諸設備(衛星通信アンテナなどの基部等)にも施された。甲板に駐機する機体の着陸脚が接する「輪止め」などの設置も行なわれ、飛行甲板で固定翼航空機を運用するためのインフラ設備の基礎を整えたようだ。

2021年10月3日、四国沖の太平洋上で、「いずも」の飛行甲板に米海兵隊VMFA-242(第242海兵戦闘攻撃飛行隊)“Bats”のF-35Bが「発着艦検証」として発着艦を行ない、成功させている。写真/海上自衛隊

その後、米海兵隊のF-35Bを発着艦させる運用試験を行なった。2021年10月3日、四国沖の太平洋上で、「いずも」の飛行甲板に米海兵隊VMFA-242(第242海兵戦闘攻撃飛行隊)“Bats”のF-35Bが「発着艦検証」として発着艦を行ない、成功させている。ここまでが「いずも」の空母化工事の大きな流れだった。

現在は「かが」がドック入り

呉でドック入り、改修工事を受ける前の「かが」。「いずも」型の艦首部分の甲板形状は上から見ると「台形」のような形で、舳先に向かって先細るようになっている。写真/海上自衛隊

そして現在は2番艦「かが」が、ドック入りしている。「いずも」と同じように定期検査時期に合わせて改修しているのだが、「かが」の工事は「いずも」よりも大がかりなものから着手している。艦首の形状を大きく変更させる大規模工事を実施中なのだ。

広島県呉市のジャパンマリンユナイテッド(JMU)のドックで改修工事中の護衛艦「かが」(DDH184)。

これはなにかというと、「いずも」型の艦首部分の甲板形状は上から見ると「台形」のような形で、舳先に向かって先細るようになっている。
だが、この形状のままでは航空機の滑走路として使う左舷側の飛行甲板は短いことになる。少しでも滑走距離は長くしたいということなのだろうか、艦首甲板形状を見直して米強襲揚陸艦のような四角い先端形状にするといわれている。

2022年7月下旬、筆者は広島県呉市「歴史の見える丘」に立った。目前にはJMUのドックに入った「かが」が艦尾をこちらに向けている。ここは旧呉海軍工廠造船部だったところで、戦艦「大和」の造船所でもあった。
「かが」は艦首の最先端部分、喫水線から上方の区画を取り外していた。

工事中の「かが」艦首部は先端区画が取り外され、従来の先細り形状からストレート形状へ改められるといわれている。
右舷後部のエレベーターはドックの側壁位置まで降ろされ、艦内への搬入出通路として使われている様子。エレベーター自体も改修されている、と見る向きもある。

艦首を海側に向けているのでよく見えないが、少し移動して角度を変えると艦首の撤去部分も見えそう……造船所に沿う国道487号線に架かる歩道橋の上で工事中の「かが」を眺めながらそう考えていたが、7月下旬の呉は暑かった。日陰を求めて「正岡子規句碑」横のベンチで休憩する。
そこで筆者と同じように「かが」を眺めに来た地元のかたと会った。そのかたが言うには背後の山に登れば呉港が一望できるから「かが」の艦首部分も見えるはず、とおっしゃる。

高度を上げ、かつ左右に角度を振ることで地上レベルからは見えない景色が見えるというわけだ。いいことを教えてもらった。しかし筆者はここまでの猛暑の道中で水分と塩分を使い果たしており、熱中症気味である。このまま登山するのはキツかった。そこでお礼を言って別れ、呉駅前に戻った。
呉駅ビル内のうどん屋で、冷うどんのツユを飲み干し、塩分を補給する。これは効いた。ヒヤ~っとした。やる気が戻る。そして現場へ戻り高度を稼ぐと、なるほどたしかにうっすらと「かが」の取り外された艦首部分が見える。

「かが」の甲板上には各種の資機材やプレハブ小屋が置かれ、整理されているが雑然としてもいる。甲板幅いっぱいに緑色の防護ネットのようなものも置かれている。加えて海側の遮蔽壁というのか、その壁の裏側の構造部材など、周辺の雑多な景色に惑わされて見通しにくい。しかし、艦首部分がないことはわかった。

噂されるように舳先は四角い形になるのだろう。いずれ艦載されるF-35Bは舳先までの甲板を全部使って発艦するものでもないとは思うが……艦首を四角くして、全長248mをフルに飛行甲板として使える方が良いということなのだろう。
事後、「かが」ウォッチャーたちの情報発信によると、新たに取り付ける艦首部分と思しき「大きな部品」がドック内に運び込まれた模様、という報告があった。

近いうちに取りつけられるものと思われる。「かが」艦内も、空母運用する場合のヒトとモノの動きを検証し、最適な動線を作れるよう各所の見直しなども行なわれるとも聞く。いよいよ『空母化』が進む。

外形を大きく変更することになる「かが」の第1段階工事は本年度内いっぱいまでかかるのだろうと推測する。その後「かが」は実働に移行し、そうこうするうちに「いずも」の定期検査時期になる。「いずも」の艦首部分を四角くするのは2024年度ということか。
「いずも」と「かが」、2隻の改修や整備と同時進行で艦載する(または地上基地へ配備する)戦闘機F-35Bの導入準備なども進められる。まずは、こうした事柄各々が抑止力として効果を示すものであってほしいと思う。

「いずも」型の改修で手本とするのは米海軍の空母や強襲揚陸艦だ。写真は強襲揚陸艦「ワスプ」。「いずも」と「かが」は改修後にこのような艦首形状になるのだろう。強襲揚陸艦はF-35Bやオスプレイ、LCACなどを搭載し、米海兵隊も乗り組む。写真/米海軍

護衛艦「たかなみ」型、VLSの集約やヘリ運用能力の向上、127mm主砲装備で打撃力強化した汎用護衛艦

海上自衛隊の汎用護衛艦は護衛艦隊の骨格となる艦種だ。過去、就役した歴代艦をみると「はつゆき」型、「あさぎり」型、「むらさめ」型、「たかなみ」型、そして新鋭の「あきづき」型や「あさひ」型へと発展してきた。このなかで「たかなみ」型はポスト冷戦型の護衛艦として搭載する装備体系をより強化、より多目的に活動できる機能性を追求した。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

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