バレンティーノ・ロッシが四輪耐久レースのWEC富士に登場

耐久レースの世界選手権シリーズは、二輪にも四輪にもある。四輪版は「WEC」という略称で知られているが、その富士ラウンドに今年はあのバレンティーノ・ロッシが登場する。
■TEXT:今井清和(imai kiyokazu)

カーナンバー「46」のBMW M4 LMGT3で富士を走る

世界グランプリロードレースの最高峰クラスで7度もチャンピオンに輝いたロッシだが、2021年をもってグランプリライダーとしてのキャリアに終止符を打ち、2022年からはMotoGPにチームオーナーとして参戦。といっても、チーム運営は彼の右腕的な人物に任せていて、ロッシ自身は四輪のサーキットレースでレーシングドライバーとして活動している。あれだけ二輪で活躍してきたのに、まだまだレースを走りたい人なのである。

2024年からロッシは、WEC(世界耐久選手権)に討って出た。F1とWRC(世界ラリー選手権)に並ぶ四輪モータースポーツの世界選手権で、四輪耐久レースの頂点に立つシリーズだ。WECのレースは、ハイパーカーとLMGT3という2つのクラスのマシンが混走して行われるものだが、ロッシが挑んでいるのは市販のスポーツカーをもとに作られたGTマシンが出場するLMGT3クラス。BMWのオフィシャルチームであるチームWRTのBMW M4 LMGT3をドライブしている。カーナンバーはもちろん「46」だ。

ブレーキング時にイン側の足をステップから大きく外す「足出し走法」を駆使するヤマハワークス時代のバレンティーノ・ロッシ。マシンはYZR-M1。 写真提供:ヤマハ発動機

フェラーリF1のドライバーとなる可能性があったロッシ

実はロッシはレーシングカートでモータースポーツを始めた男だ。グランプリライダーとして現役バリバリの時代にも、四輪モータースポーツにしょっちゅう出場していた。しかも、レーシングドライバーとしての実力も半端でない。2004年には、フェラーリのF1マシンであるF2003-GAでフィオラノのテストコースを走り込み、ミハエル・シューマッハーに「バレンティーノは、もう十分に競争力があるレベルに来ているよね」と言わしめたほど。さらにフェラーリは、2007年のF1ドライバーにロッシを起用しようと本気で動いていた。四輪レースに年単位で取り組んだ経験がないことを考えれば、この男のレーシングドライバーとしての才能がいかに高いものであったかが分かる。

結局ロッシはF1に転向するのでなくMotoGPに挑み続けることを選んだわけだが、まだMotoGPを走っていた2019年には、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開催されたガルフ12時間レースにフェラーリ488 GT3で出場し、Pro-Amクラス優勝/総合3位を獲得している。そして、2021年をもってグランプリライダーとしてのキャリアをまっとうしたところで、四輪でのレース活動を晴れて本格化させた。昨年からはBMWのオフィシャルドライバーとなり、今年からWECに参戦。第2戦イモラ6時間ではクラス2位でのフィニッシュを飾っている。

伝説のMotoGPチャンピオンを間近に感じるチャンス!?

ロッシが四輪のレーシングドライバーとして日本開催のレースに登場するのは今回のWEC富士6時間が初めて。また、彼が富士スピードウェイでレースを走るのも初めてとなる。「ドクター」のニックネームを持つ男が、レーシングカーで富士をどう攻略して走るのか、非常に興味深い。

また、ロッシが日本でレースを戦うのは2021年のMotoGP日本グランプリ以来となる。MotoGP時代の彼は常に注目の的で、どこへ行っても大勢のファンに追いかけられていた。だがWEC富士では、MotoGP時代のようなことにはならないだろう。ロッシファンにとって今回のWEC富士は、伝説のチャンピオンを間近に感じるまたとないチャンスになるかもしれない。

大会概要

大会名:FIA 世界耐久選手権 第7戦 富士6時間耐久レース
開催日:2024年9月13日(金)・14日(土)・15日(日)
主 催:富士スピードウェイ株式会社/FISOクラブ
公式WEBサイト: https://fiawec-fuji.com/

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