みなさん、リアブレーキちゃんと使ってますか? バイクの基本操作を考えてみる。

“考えて曲がる”…そのために知っておきたい技術論理。オートバイの仕組みとコーナーの仕組みから一歩踏み込み、コーナリング中に起きていることを、オートバイに乗っている・操っている“自分目線”の感覚から考えてみた。
Text:安田尚令(STREE BIKERS')

ブレーキのかけ方は“前7:後3”、これってホント?

オートバイを実際に走らせながら、“目に見えない仕組みや働き”を目に見えるパーツや構造から類推することがそもそも好きでした……幼少の頃からの機械好きも手伝って、オートバイに関しては、とくに“見えないチカラ”を考えるポイントがいっぱいあることも魅力のひとつとも思います。

こんなことがありました……40年ほど前、’95H-D(ハーレーダビッドソン)スポーツスターに乗り始めたばかりの僕は、高速道路を降りた辺りで、急減速する前車のクルマに追突しました。予測したより前車の減速率が大きくて、こちらも前後ブレーキを駆使してその急減速に対応したのですが、減速ペースの違いによって、前車との車間はスローモーションのように縮まり、左グリップの下に付いていたウインカーが、これまた運悪く前車の右後ウインカーレンズに当たり破損。僕の左ウインカーももげましたけど、お互いの被害がそれだけで済みました。でも、その時に気づいたのです!!

「リアブレーキをあまりしっかり効かせてなかったなぁ」……そんなことを思うと、確かに、思いっきりではなく、ナメる程度でしかなかった。なぜ十分に、リアブレーキをかけられなかっただろう? そういえば、中型二輪免許の教習所でブレーキのかけ方を“前7:後3”と教えていたことを思い出しました。構造も形態も違う前後ブレーキなのに、何に対して“7:3”? それでもレーサーレプリカ・ブームがきて、いつしか“9:1”のイメージでブレーキを使うことに慣れてしまっていたわけです。

ヒトは“手”の感覚は繊細&敏捷、その反対に“足”は鈍感で大雑把……と考えがちですが、だからといってレプリカ&スーパースポーツ系のブレーキを9:1のイメージで使うわけではない……レプリカ系はエンジンをはじめ重量が前側に寄せてあるので、いくらヒトが乗れば50:50に近くなるといっても動的にはそうはいかず、しかもハイスピード使用が前提なので、減速時にはリアタイヤが浮いてロックしやすく……となると自然に、敏捷な反応ができる上に効力=制動力の大きな前ブレーキ重視・偏重になってきたのだと思います。

ところが、H-Dをはじめとするアメリカン&クルーザー系では事情が違います……重心が低く、車重も自分の体重もドッカリとリアタイヤに乗っていて、長いフロントフォークを持つモデルでは、そもそも前ブレーキだけで止まろう、なんて思ってはいけないのです。実際に当時は「H-Dの前ブレーキは効かない」とかよく言われ、フロントブレーキのカスタム&チューンナップが盛んにもなりましたが、何のことはない、フロントより大経のリアディスクが付いているくらいなんだから、それを活用しない手はないのです。と思って乗っているうちに、街中で僕はいつしかフロントブレーキをあまり使わなくなり、制動・停止・速度調整のすべてをリアブレーキだけで行うようになってしまいました。

リアブレーキをかけると、オートバイは安定する!!

そんな中で、気づいたことがもう一つ!!……リアブレーキをかけると、車体全体が沈み込む!!?? ということ。これを理解するのに、書いた絵がこのイラストです……この頃から、見えないチカラを理解するために、何枚も絵=イラストを描くクセが付いてきたのです。そして、実際の動きを理解するために、何度もそれだけを繰り返しやってみて、車体の動きを観察しまくってわかったことが“リアブレーキをかけると、車体全体が沈む!”ことと、リアブレーキはただ単に減速するだけではなく、車体を安定させる働きがあったことです。さらに副産物として、車体を沈ませる→フロントフォークまで沈ませ、車体全体を安定させる働きがあることまで気づくことができたのです。

一度、ご自身で“リアブレーキだけで走る”ことをやってみてください。すぐに実感できます。このリアブレーキの積極的な活用を知ってしまうと、もう無敵です!! あらゆるタイプのオートバイに有効な手段です。じつは最近人気の’70年代旧車など、いわゆるハンドルの低くない“スタンダード”タイプにはとくに有効、と思います……まずは試して実感してみてください。

こうした、じつはあまり考えてこなかったオートバイの仕組みや構造のハナシってたくさんあるんです。というわけで制作した『大人のコーナリング VOL.2』もよろしくです。

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