バイク事故を低減する新技術|業界初のARAS用4Dイメージングレーダーがもたらす未来像|Vayyar

バイク事故を低減する新技術|業界初のARAS用4Dイメージングレーダーソリューションがもたらすバイクの未来像|Vayyar

2021年はバイクにとってのADAS(先進運転支援システム)元年と言える。ドゥカティやKTM の上位機種にACC (アダプティブ・クルーズ・コントロール)が標準採用されたからだ。4輪自動車では既に珍しくないが、バイクへの搭載と普及が、今後拡大して行くことは間違いない。そんな中、イスラエルの「バイアー社」が開発したARAS(Advanced Rider Assistance Systems )が、俄然注目を集めている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
取材協力●Vayyar Ltd. ヤン・ポカミエン(Ian Podkamien・自動車事業部長)
問い合わせMail●Ilan Hayat: Ilan.hayat@vayyar.com

バイクの先進運転支援システムってどんなものがある?

 安全運転支援装置としてバイクでも既に良く知られているのは、制動時のスリップ転倒抑止に効果を発揮するABS (アンチロック・ブレーキ・システム)。逆に加速時の過剰パワーをセーブして安定走行を確保するトラクションコントロールの存在もご存知だろう。

 今、注目されているのは、「先進(Advanced)」デバイスとしてバイク自体が自分の走行状態をはじめ、周囲の状況も把握してライダーの操作を支援すること。
 つまりバイクが「目」を持つことで、より安全にかつ快適に走らせられるハイテクデバイスの事を意味している。
 冒頭で記した通りACC (アダプティブ・クルーズ・コントロール)の搭載を始め、車線逸脱警報や死角検知、衝突被害軽減ブレーキ等、活用範囲は広く、バイクの安全性向上に役立つのである。

リヤエンドにARASモジュールが取り付けられたテスト車両。2022年モデルに搭載される時は、Vayyar製ユニットが組み込まれた新デザインが披露されるだろう。

Vayyarってどんなメーカー?

 2011年に設立されたVayyarは、イスラエルに本拠地を構え急成長を遂げたグローバル企業。センサーを中心にした半導体事業を展開。ポピュラーな製品として知られているのは、スタッドファインダーと呼ばれる物で、壁の中にある釘等の位置を調べられるDIY用アイテムから始まったそう。
 その後同社のセンサー技術はスマートハウスや医療現場にも浸透。ロボット産業や自動車業界でのニーズ拡大を背景に、4Dイメージセンサーの進歩的な独自技術が評価され、飛躍的な事業拡大を続けている。

来年発売予定の先進運転支援システム「ARAS(Advanced Rider Assistance Systems )」は何がすごい?

 一番の特徴は独自開発の4Dイメージングレーダー技術が投入されている点。
 自立走行型ロボットに欠かせない装置として既に活用されているが、周囲の状況を把握し、障害物を避けたり、停止する等、安全に移動する為に必要な「目」の役割を果たす。

 一般に「目」の役割を担うのは、ライダーやレーダー、カメラ、ソナー等が知られているが、それぞれに異なる特性があり、測域を始め一長一短があり、コストも様々。

 4Dイメージングレーダーは次代の「目」を担う高精度多機能センサーとして注目され、1チップ上に一体化された合理的デザインを始め低コストでもバイクへの搭載に相応しい先進デバイスとして期待されている。

高度なセンシング性能を1チップに集約

 同社の技術が高い評価を集めたのは高度なセンシング性能を一つのチップで実現した事。
 様々な要件に適応しやすいプログラミングが構築された事。
 そして目となる視野角が180°と広い、さらに従来のイメージングレーダーより2倍の解像度を持っている。

 簡単に述べると従来製品よりも優秀な目を持ち、バイク搭載への自由度を高めるコンパクト軽量である事。しかもコスト競争力が高い点も注目に値する。

75×65mmの1チップで開発されたARASボード。デザインのコンパクト化やさらなる性能向上を果たした進化系チップも順次新開発されている。

ライダーの死角をARASが感知

Vayyar製4Dイメージングレーダーを使用したARASがどの様に役立つかの一例。走行中の自車周辺に追従するバイクや車の存在を認識してくれる、その情報を元に、死角に車両有りの警報を発す事もできる。前方の情報からは、車線逸脱警報も可能、4輪では当たり前になりつつある先進の安全運転支援がバイクでも叶えられるようになるわけだ。

ピアッジオの2022年モデルにVayyar社製4Dイメージングレーダーを使用した初のARASが搭載される模様。最高でも価格が150万円クラスの商品への投入が、コスト面での優位性を物語る。今後の普及にも弾みがつくことだろう。

ARAS・気になる疑問 Q&A

Q:採用例はピアッジオだけ?
A:このARASを搭載したピアッジオグループのバイクとスクーターは2022年に登場予定です。他のメーカーへの展開は商談中のようです。ただし、機密保持上、具体的には回答できません。

Q:既存デバイスとの協調は可能?
A:例えばIMUとの協調は可能です。ニーズに適応するアプリケーション開発が容易で、他のセンサーとの融合も図れます。

Q:IMU非搭載車には搭載できる?
A:搭載可能です。Vayyar社の擬似IMUアルゴリズムを使用しているので、OEM供給するにあたり、柔軟に適応できます。

Q:ARASは後付けできるの?
A:現在はできません。メーカーでの工場装着が基本。将来的にはアフターマーケットへの投入も検討しています。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…