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中古でスーパーカブを手に入れたとしよう。走り出した当初は、誰しもうれしくて舞い上がるもの。走行性能についても「こんなものかな?」と思いながら、流れゆく景色を楽しむことで深く考えないことだろう。けれど、乗り込んでカブに慣れてくると、ちょっとしたことが気になるようになる。「エンジンからの音が大きくなった」、「車速の伸びが悪くなった」などの症状が認められたら、購入したショップでメンテナンスを頼むといいだろう。毎回お金を払い続けて調子を維持することを否定はしないけれど、どうせ自分のバイクなのだからカンタンなことくらい自分でやりたいとは思わないだろうか。そこで今回から初歩的なメンテナンス作業を紹介したい。といっても、まずは工具がなければ話にならない。ホームセンターなどで売っている工具セットで構わない。いざ作業を始めてみよう!
まず行いたいのがエンジンオイルの量を点検すること。いかに4ストロークエンジンとはいっても、エンジンオイルは知らぬ間に消費している場合もある。しかも量を確認するだけなら工具も不要なので、まずは愛車のエンジンオイルがどれくらい入っているのか確かめてみよう。方法はカンタンでエンジン右側面にあるオイルフィラーキャップを外すだけだ。
オイルフィラーキャップを外すと内側に長い柄が付いている。そのまま引き抜くと柄の先端にギザギザがあることが見えるだろう。このギザギザがゲージで、オイルが付着することで引き抜いた時にエンジンオイルがどれくらい入っているのか確認できるのだ。一度引き抜いて柄に付いたオイルを拭き取り、そのまま柄を穴へ差し込む。この時オイルフィラーキャップを回してねじ込んではいけない。ただ単にオイルフィラーキャップを穴へ戻し、そのまま引き抜くのだ。その時にオイルがゲージのどこまで付着しているか確認する。規定量はギザギザが途切れて円周になっているところまで。それ以下でも以上でもよろしくない。減っていたら継ぎ足し、入れ過ぎたら抜くようにすること。
エンジンオイルの交換
オイルの量が点検し、オイルの色がきれいだったらそのまま走っても構わないけれど、汚れていたり、エンジンからの音が大きくなったように感じるならオイルを交換してみよう。音が大きくなったわけでなくても、走行距離が伸びてきたら交換が必要。中古車の場合、2000kmから3000kmほど走ったら交換したい。また距離が伸びていなくても最低限1年に1度は交換しよう。交換手順はオイルフィラーキャップを抜いたまま、エンジンの下にあるドレーンボルトを緩めて抜く。何本かボルトが見えるうち、前方にガードのような出っ張りがある裏にあるボルトがそれ。このボルトをスパナではなくメガネレンチやソケットを使って緩めよう。スパナだとボルトの角をナメてしまう(削って角が丸くなる)ことがあるからだ。
ドレーンボルトを緩めていくとエンジンオイルが流れ出てくる。この時の注意点として、工具は緩める最初の時にだけ使い、あとは指先でどんどん回してとりはずすこと。しっかり保持していないとオイルが流れる勢いでドレーンボルトまで飛ばされてしまうこともある。また、オイルが抜け切るまでには時間がかかるため、5分から10分くらい放置しても構わない。出てきたオイルが黒く変色していて驚くことだろう。
オイルが抜け切ったらドレーンボルトを元に戻す。ドレーンボルトはそのまま戻さず、必ずパーツクリーナーなどで清掃すること。またボルトにはワッシャーが入っているはず。ワッシャーはボルトを締め込んで潰れることによりオイルが漏れることを予防している。だから必ずワッシャーはオイル交換ごとに新品を使用すること。またドレーンボルトをねじ込む力を加減すること。あまりに強く締めすぎてボルトをナメたりネジ山を崩してしまうこともある。何事も適切に。
最後にエンジンオイルを給油しよう。入れるオイルはモーターサイクル用かつ4ストローク用として販売されているものを選ぶ。ホンダ純正を選べば問題ないが、社外のオイルでも代用可能。最近主流の低粘度オイル、例えば表記に0W-30とか5W-40などと書かれている最初の数字があまりに小さいものは避けよう。これは最新設計のエンジンに適しているもので省燃費性能に貢献するけれど、カブのように基本設計が古いエンジンには10W以上が適している。けれどホンダ純正のウルトラG1も5Wになり、こちらを選んでも問題はなさそうだ。規定量は600ccほどだがオイルを少しずつ入れて、その度にゲージで確認するのが確実だ。
エアクリーナーの点検
エンジンオイルがフレッシュになったら、エンジンが吸い込む空気もキレイにしたい。エンジンへ流れる空気はエアクリーナーを通している。エンジンがゴミを吸い込まないようクリーナーが防いでいるので、走行距離が伸びてきたりホコリが多い・未舗装路を頻繁に走るなら点検すべき。スーパーカブのエアクリーナは年式により交換方法が異なる。今回題材にしているのは6Vの古い型式。レッグシールド内側の中央付近にフタがある。ここを外すとエアクリーナーが収まっている。12Vになった1980年代半ば以降のモデルだとレッグシールドを外してクリーナーボックスを露出させなければならない。
レッグシールドのフタを外すとエアクリーナーが現れる。中央にあるナットを緩めるとクリーナー単体を抜き取ることができるのだ。新しい年式の場合、レッグシールドを外してエアクリーナーボックスのフタを外すと、同じようにクリーナーを抜き取ることができる。
外したエアクリーナーの汚れ具合により、新品へ交換するか、それとも清掃して再使用するか判断したい。あまりに真っ黒だったら清掃は諦めよう。逆にエアブローしたり手で叩いて汚れが落ちてくれるなら再使用しても構わないだろう。
スパークプラグの点検
新しい年式のモデルだと、エアクリーナーの点検をするためにレッグシールドを外すと紹介した。そこまで作業したのなら、ぜひ行いたいのがスパークプラグの点検だ。エンジンの調子を左右するのがプラグの状態であり、長年使い続けていると消耗したり汚れが付着して本来の性能を発揮できなくなることもある。点検方法はまず黒いプラグコードを引き抜くことから始める。
スパークプラグを抜くには専用の工具が必要になる。「プラグレンチ」や「プラグソケット」と呼ばれるもので、長いプラグにすっぽり被せて使うものだ。ホームセンターでも売っている工具なので、ぜひ揃えておこう。16ミリのロングソケットも使えるけれど、専用工具だと使い勝手が良い。
外したプラグの先端を確認してみよう。ここが煤で汚れていることがほとんどで、黒くなっているのは燃料が濃いケース。本来ならネズミ色のように焼けているはずだ。汚れを除去するにはペーパータオルなどで拭き取るか、パーツクリーナーを吹きつけてから十分に乾燥させて行う。それでも汚れが落ちない、もしくは走行距離が伸びているような場合は新品に交換しよう。使用するスパークプラグはNGK製ならCR6から始まるものを選ぶ。年式により微妙に異なるので適合表でよく確認すること。また最近主流のイリジウムプラグより普通のプラグが合っているように思う。今回のように電極が黒く汚れた場合、イリジウムプラグは清掃ができず新品交換するしかないからだ。また締め付ける力加減も重要で、必ず手で締め込んでいくこと。素手で回らなくなったら工具を使って45度から90度くらいまで締め込む。締め込みすぎるとプラグホール(エンジン側)のネジ山を崩してしまうことが多いので、要注意ポイントでもあるのだ。