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SWMヴァレーゼ125……495,000円
非常に魅力的なデザインのネイキッドが日本に上陸した。発表されたのは2018年のEICMAだが、取材にご協力いただいたBEAR SETAGAYAの武藤代表によると、その原型は2016年の同じミラノショーで公開されていたという。検索してみると「RZ4.21コンセプト」というモデルがそれに該当するようで、確かに赤いトレリスフレームを採用しているが、片持ち式スイングアームにツインショックを組み合わせるなど、その名のとおりコンセプトモデルの域を出ない車両であったことは明らかだ。
ヨーロッパでは2019年春から販売されているヴァレーゼ125。ヘッドライトなどに既存モデルのパーツを流用しながら、RZ4.21コンセプトで提案したスタイリングを市販車へとうまく落とし込んでいる。EUにおけるA1ライセンス向け(125cc以下&11kW<15ps>以下)の車両ではあるが、この個性的なデザインはベテランライダーの所有欲をも満たしてくれそうだ。なお、車名のヴァレーゼ(VA’RE:Z)は、SWM本社のあるロンバルディア州ヴァレーゼ県(Varese)に由来し、2018年のEICMAで行われたカンファレンスでは、ロンバルディア州議会副議長も列席してあいさつをしたという。
イタリア本国では共通のシャシーで400も展開していることから、それなりのボリューム感を想定していたが、ホイールベースも含めて車体サイズはCB125Rとほぼ同等だ。特徴的なトレリスフレームは、よく見るとクランクケースのみでエンジンをマウント。しかも上部2か所は薄いプレートを介しての支持なので、エンジンの強度部材としての依存度は低いと思われる。
シートにまたがる。座面の高さは820mmを公称し、CB125Rよりも5mm高いだけだが、シート前方があまり絞り込まれていないため、足着き性はあまりいいとは言えない。ただ、車体が軽いので不安を覚えることはないだろう。ニーグリップ時の下半身のフィット感は良好であり、膝の曲がりが窮屈すぎないのも好印象だ。
エンジンを始動する。同社のネオクラシックモデルのアウトロー125やエンデューロモデルのRS125Rと同じ124.7ccの水冷DOHC4バルブ単気筒は、車種の特性に合わせてマッピングを変えているという。スペックを確認すると、最高出力11kW(15ps)/10,500rpmは共通だが、最大トルクの発生回転数がそれぞれ異なるのだ。
ギヤをローに入れて発進する。本領を発揮するのは7,000rpmを超えてからで、レブリミットの11,000rpmまで粒立ったパルス感を伴いながら勢い良く伸び上がる。
この弾けるような元気の良さはKTMの125デュークにも似ており、調べたところ両車とも圧縮比は12.8:1と非常に高めだった。この弾けるような元気の良さはKTMの125デュークにも似ており、調べたところ両車とも圧縮比は12.8:1と非常に高めだった。
一方で、低~中回転域のスロットルレスポンスもよく調教されている。トルク感そのものは一般的な125ccと同等レベルで、分厚いと表現するほどではないが、小回りやUターンなどでエンストする気配がなく、扱いやすい部類と言えるだろう。
そして、ハンドリングもいい。フロントタイヤの舵角の付き方が穏やかなのでライダーを慌てさせることがなく、またアウトロー125よりも前後サスの動きがスムーズなので車体姿勢をコントロールしやすい。トレリスフレームはかなりの剛性感があり、同じシャシーで400を作った理由が垣間見えるほど。そして、倒し込みや切り返しの軽さは、リヤタイヤの細さ(CB125Rと125デュークが150なのに対し、ヴァレーゼ125は140を選択)だけでなく、センタータンクレイアウトによるマスの集中化および低重心化も寄与しているものと思われる。標準装着のミシュラン・パイロットストリートは十分なグリップ力を発揮してくれ、マシンとのマッチングも良好だ。
唯一、苦言を呈するとすれば、私が過去に試乗したアウトロー125やRS125Rと同様、コンバインドブレーキについてだ。フットブレーキを強めに踏むとフロントキャリパーも作動してしまい、リヤブレーキで駆動力を調整したい場面でどうしてもギクシャクしてしまうのだ。バイクへのコンバインドブレーキもしくはABSの標準装備化は今や義務化されているため致し方ないところだが、せっかくならば自分でブレーキングをきっちり制御できるABSの方がありがたかったりもする。
原付二種(125ccカテゴリー)で売れているのは圧倒的にスクーターだが、マニュアルミッション車も根強い人気がある。このヴァレーゼ125はライバルと真っ向勝負できる戦略的な価格設定であり、また走りにおいても全く引けを取らない。それに、この価格でイタリア製のバイクに乗れるというのも非常に魅力的だ。