目次
まずはスタイリングやスペックの違いからチェックしよう
ホンダ スーパーカブ110……302,500円
ホンダ クロスカブ110……363,000円(くまモンバージョン:374,000円)
ハンドリングに大きな違いあり。クロスカブ110は安定指向だ
2022年のモデルチェンジで、よりロングストローク&スモールボアとした新型エンジンを獲得。合わせてキャストホイールやチューブレスタイヤ、フロントディスクブレーキ&ABSを導入したスーパーカブ110とクロスカブ110。エンジンについては基本的に共通であり、どちらも従来型より微振動が減って上品になったとすら感じた。ドリブンスプロケットの歯数はスーパーカブ110が35T、クロスカブ110が37Tを採用しており、これにより2次減速比はクロスカブの方が5.6%ショートになっている。街中では2台を同時に乗り比べてもその差を体感することはほとんどないが、上り基調の峠道に入ると印象が一変。クロスカブの方が明らかに元気がいい。なお、外付けのデジタルタコメーターで確認したところ、両車ともアイドリングは1,400rpmで、レブリミットは8,000rpm。加速フィールが力強くなるのは4,000rpmを過ぎてからだ。
大きく異なるのはハンドリングである。クロスカブ110はスーパーカブ110よりもホイールトラベル量が長く、フロントタイヤは1サイズ太い。また、これらの影響によるものか、クロスカブの方がキャスター角はわずかに寝ており、トレール量とホイールベースは長めとなっている。
スーパーカブ110は、ハンドルへの軽い入力だけでスイッとクイックに向きを変える特性であり、そこに前後17インチの大径ホイールならではの安定成分も加わり、街中での扱いやすさと安心感は小径スクーターを凌駕するほど。さらに、新型はキャストホイールの剛性やチューブレスタイヤのしなやかさも加わり、芯が一本通ったような1ランク上のハンドリングとなっている。
これに対してクロスカブ110は、まるでフロントホイールが18インチになったかのような、大らかな舵角の付き方となっており、そこにホイールトラベル量の長さによる大きめのピッチングも加わり、スーパーカブ110の派生モデルでありながら別ジャンルかと思えるほどハンドリングのキャラクターが異なるのだ。グリップ力の高い標準装着タイヤ(IRC・GP-5)とバンク角の深さも相まって、特にワインディングロードの下りは軽二輪クラスのような安定性と安心感がある。
フロントブレーキは新型で両車ともディスク化され、キャリパーはスーパーカブが片押し式シングルピストン、クロスカブは2ピストンとなっている。これによりタッチの差別化が図られており、スーパーカブはドラム時代を彷彿させるソフトな初期フィール、クロスカブはカッチリとした利き味となっている。車両の特性に合わせてこうした細かい部分にも差別化を図るあたり、カブシリーズが開発者にも愛されていることが伝わってこよう。
差別化の妙に感心しきり。あとは予算と好みで選ぶべし!
クロスカブ(EBJ-JA10)は2013年にデビュー。2018年に初のフルモデルチェンジを実施し、前後14インチホイールの「50」が登場したことで、110の方は車名の末尾に排気量を表す数字を追加した。レッグシールドを廃した2代目の外観は、往年のハンターカブを彷彿させるもので、開発者もそれを明言している。ゆえに、その2年後の2020年にCT125・ハンターカブがデビューしたことで、クロスカブ110の売り上げが減少、もしくはディスコンになるかと思いきや、むしろ販売数を伸ばしているというから驚きだ。
今回、スーパーカブ110と乗り比べたことで、クロスカブ110の魅力を再認識したというのが率直な感想だ。足回りの刷新で両車の違いがより明瞭になったこともあろう。素の状態での積載量は、リヤキャリアが同一なので同等レベルだが、そこからさらに増やすとなると、クロスカブ110の方がカスタムパーツが豊富にあり、よりロング&キャンプツーリング向きと言えるだろう。
一方、スーパーカブ110も万能性という点においては感心しきりで、シートの低さによるフレンドリーさやレッグシールドによる耐候性、スクーターにはないモーターサイクルを操っている感覚など、総合的なバランスの良さはやはり原点にして頂点と言わざるを得ない。
この2台、どちらを選んだとしても決して後悔はしないはず。あとはスタイリングの好みと予算で選んでほしい。
スーパーカブ110(2022年モデル)主要諸元
車名・型式 ホンダ・8BJ-JA59 全長(mm) 1,860 全幅(mm) 705 全高(mm) 1,040 軸距(mm) 1,205 最低地上高(mm) 138 シート高(mm) 738 車両重量(kg) 101 乗車定員(人) 2 燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 68.0(60)〈2名乗車時〉 WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉 最小回転半径(m) 1.9 エンジン型式 JA59E エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒 総排気量(cm³) 109 内径×行程(mm) 47.0×63.1 圧縮比 10.0 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 始動方式 セルフ式(キック式併設) 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火 潤滑方式 圧送飛沫併用式 燃料タンク容量(L) 4.1 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式 変速機形式 常時噛合式4段リターン 変速比 1速 3.142 2速 1.833 3速 1.333 4速 1.071 減速比(1次/2次) 3.421/2.500 キャスター角(度) 26°30´ トレール量(mm) 73 タイヤ 前 70/90-17M/C 38P 後 80/90-17M/C 50P ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS) 後 機械式リーディング・トレーリング 懸架方式 前 テレスコピック式 後 スイングアーム式 フレーム形式 バックボーン
クロスカブ110(2022年モデル)主要諸元
車名・型式 ホンダ・8BJ-JA60 全長(mm) 1,935 全幅(mm) 795 全高(mm) 1,110 軸距(mm) 1,230 最低地上高(mm) 163 シート高(mm) 784 車両重量(kg) 107 乗車定員(人) 2 燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 67.0(60)〈2名乗車時〉 WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉 最小回転半径(m) 2.0 エンジン型式 JA59E エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒 総排気量(cm³) 109 内径×行程(mm) 47.0×63.1 圧縮比 10.0 最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500 燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 始動方式 セルフ式(キック式併設) 点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火 潤滑方式 圧送飛沫併用式 燃料タンク容量(L) 4.1 クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング式 変速機形式 常時噛合式4段リターン 変速比 1速 3.142 2速 1.833 3速 1.333 4速 1.071 減速比(1次/2次) 3.421/2.642 キャスター角(度) 27°00´ トレール量(mm) 78 タイヤ 前 80/90-17M/C 44P 後 80/90-17M/C 44P ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS) 後 機械式リーディング・トレーリング 懸架方式 前 テレスコピック式 後 スイングアーム式 フレーム形式 バックボーン