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CB1300 SUPER FOUR SP……1,851,120円
CB1300 SUPER BOL D’OR SP……1,959,120円
発展し続けるCBシリーズのフラッグシップ!
CB1300シリーズに“SP仕様”が登場する。
その実車が初めて公開されたのは2018年7月に開催されたCBオーナーズミーティングの会場だった。根っからのCBファンである筆者も会場を訪れて、実車をいち早く目にしただけに、今回の試乗は非常に楽しみだった。
1969年のDream CB750 Four以来、CBのフラッグシップは高性能大型スポーツバイクのベンチマークとなってきた。今でも人気の高いCB750Fを経て、PROJECT BIG-1のコンセプトのもとで開発された新世代ネイキッドスポーツ・CB1000SUPER FOUR(以下・SF)の登場は、二輪免許制度の改正と共にリッタースポーツバイクブームの幕開けとなった。
1998年に排気量をアップして登場したCB1300SFは、ハーフカウル付きのCB1300SUPER BOLD’OR(以下・SB)を追加させたほか、モデルチェンジを重ねて熟成を進め、流行りの電装パーツは装備していないにも関わらず、現在も一級品のパフォーマンスを発揮する。
仕事柄、全てのCB1300シリーズを試乗する機会を得た。初代のCB1300SF(SC40)は重量感があり、モーターのように回るエンジンが高速巡航で快適だった。ただ、車体が大きく硬質で、乾燥重量249kgの重量がスポーティな走りを楽しむにはネガとなった。
そこで2003年登場の2代目(SC54)は、約20kgの軽量化をはじめ、フレームの剛性バランスの見直しやホイールベースの30mm短縮で、取り回しや運動性が驚くほど向上していた。さらに2014年のモデルチェンジでミッションを5→6速にグレードアップし、よりスポーティなハンドリングを手に入れた。この2014年モデルはエンジンの熟成にも驚いた。水冷直列DOHC4気筒は、高回転までスムーズに回ってパワーはあるが、シングルやツインに比べて味が無い、と評されることもある。しかし、2014年モデルのエンジンには、確かな鼓動感があったのだ。ホンダの技術力を駆使すれば、どこまでもスムーズに回り、振動も極限まで抑えることは可能だろう。しかし、開発陣がチャレンジしたのは高いスポーツ性能はもちろん、走らせるだけで楽しめる味わいを加えることだった。
個人的には、このエンジンとフレームでCB1300シリーズは完成したと思った。だが、その先があったのだ。2017年のモデルチェンジで、最新の音量規制に対応しながらアフターパーツの集合マフラーを装着したような迫力のサウンドを手に入れた。ヘッドライトやウインカーのLED化やETC、グリップヒーター、外部電源ソケットなど、これ以上必要ないといえるほど装備も充実させている。
今回試乗したSP仕様は、以上の熟成を極めた2018年モデルをベースに、前後サスペンションをオーリンズに変更し、フロントブレーキキャリパーをブレンボ製のモノブロックキャリパーに換装した、メーカーカスタムといえるモデル。スタンダードのCB1300SFに比べてSP仕様は36万7200円高く設定されている。価格だけをみると高額だが、パーツ単体だけの価格だけを比較すれば安価だ。実際にスタンダードの車両からパーツを購入して、取付け工賃やセッティングまで含めると、この価格はバーゲンプライスと言っていい。
専用セッティングの凄さが体感できる!
さて、CB1300シリーズの遍歴説明が長くなったが、“SP仕様”のインプレッションをお届けしよう。ちなみにCB1300SFにとってSP仕様は初(CB1300SBは2005年モデルにSP仕様が存在)となる。
結論から言えば、“SP仕様”はスタンダードとは別物だ。そして、スタンダードの車両に同じようなパーツを装着すれば、“SP仕様”と同じような乗り味が体感できる、と思わない方がいい。筆者は以前、愛車にオーリンズの前後サスや、ブレンボキャリパーを装着したことがある。交換した当初、またがっただけでサスペンションがスッと大きく沈み込み、ガチッと効くブレーキに“おおっ”と驚き、満足した覚えがある。しかし、それは最初だけだ。
調整範囲が広く動きすぎるサスペンションは、なかなかどうしてセッティングが決まらず、ブレーキの敏感なタッチは乗り込んでも馴染めなかった。
高価なサスペンションもブレーキも、バランスが取れなければ宝の持ち腐れなのだ。フレームとのマッチングもそうだが、とくにサスペンションとブレーキは密接に関係していて片方だけが良くても、気持ちよくライディング出来るわけではない。パーツの性能(ハード)はもちろんだが、そのポテンシャルを生かすセッティング(ソフト)が重要だ。
オーリンズを象徴するゴールドカラーや、モノブロックキャリパーの造形に目を奪われがちだが、SP仕様の本来の凄さは、目に見えないセッティングにある。
またがってみると、筆者は体重70kgだが、スタンダードよりサスペンションの沈み込みが少ないと感じた。オーリンズの響きからすると、もっと動いていいと思ってしまうが、以前、セッティングで苦労した覚えがあるのでこの感覚は知っている。スプリングのイニシャルと減衰調整を煮詰めていくと、またがった1Gの状態ではあまり動かないが、荷重がかかった時に奥で踏ん張り、路面の凹凸をキレイに吸収しながらタイヤの接地感がダイレクトに伝わってくるのだ。
実際にSP仕様で街中を走ってみると、走り慣れた道がやけにスムーズに感じた。駆動力からくる振動をカットするため、試しにクラッチを切って惰性で走ってみると、スーッと滑るように目線が移動した。例えるなら、新幹線に乗った時の発進時と、駅に到着する前の速度が落ちた時に感じる滑らかさだ。新幹線の走りの滑らかさは、在来線とは比較にならない精度の高さによるところが大きいというが、SP仕様の滑らかさは精度の高さに加えて、サスペンションの絶妙なセッティングであることは言うまでもない。
また、ブレーキのタッチも秀逸だ。ワインディングでの撮影時に降雨に合い、路面はウェットだったのだが、コントロール性と制動力は申し分なかった。キャリパー、パッド、マスターシリンダー、ホースなど、どれか1つだけを高性能パーツにした場合、絶対的な制動力はアップするが、効き方が極端に振れてコントロールしづらくなる。SP仕様にはそういった印象がない。サスペンションとの連動がいいこともあるが、ウエット路面にもかかわらず、ハードブレーキング時にもタイヤのゴムが潰れるような繊細な接地感を覚えながらレバー操作ができた。
ウェット路面でもドライ時と変わらずワインディング走行が楽しめたのは、間違いなくオーリンズ製サスペンションの高い精度と、完璧なセッティングの恩恵だろう。この恩恵は街中の制限速度内で体感することができる。もし、このSP仕様を試乗する機会があれば、普通の走る、曲がる、止まるが、いかに自然にできるかを注視してほしい。何かが突出していれば、それをスゴイと勘違いしてしまいがちだ。しかし、SP仕様の凄さは、ライダーにその凄さを気付かせないところにある。それ故に、さらに高いステージに挑戦できるポテンシャルを秘めていると言えるのだ。
足つきチェック(ライダー身長182cm)
またがってみると基本的に自然な乗車姿勢だが、前後サスペンションの沈み込みが少ないわりにシート位置が高め(スタンダードより10mmアップ)のため、スタンダードよりハンドル位置が低めで、若干前下がりの印象を受ける。積極的にフロントに荷重をかけたくなるスポーティな乗車姿勢だ。
ビッグネイキッドの転換点を築いた!
PROJECT BIG-1のコンセプトにより開発されたCB1000SF。発売は1992年。巨大な燃料タンクや高いシート高は、既存の大型バイクに慣れたライダーをも怯ませる威圧感があったが、乗りこなすことの優越感を感じさせる存在だった。1996年から教習所で大型二輪免許の教習が始まったが、このCB1000SFに乗りたくて教習所に通うライダーも多かった。