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昭和30年代を舞台に少年時代のルパンの活躍を描いた『LUPIN ZERO』
2022年12月にローンチした定額制動画配信サービス「DMM TV」のオープニングを飾る目玉作品として全6話が配信されたのが、昭和30年代を舞台にこれまで描かれることがなかった少年時代のルパン三世をにスポットを当てた『LUPIN ZERO』である。
■STORY
昭和30(1960)年代、戦後復興もひと段落し、高度経済成長期を迎えた日本。東京の中学校に通う少年ルパンは、祖父であるアルセーヌ・ルパン(ルパン一世)から盗術を仕込まれながらも、父親であるルパン二世からはしのぶを通じてカタギとして生きるように干渉を受けており、両者に反発しつつも将来を決められずにいた。
そんなある日、銃の扱いに慣れた同級生の次元と出会う。ふたりの距離はナイトクラブでシンガーをする洋子との出会いをきっかけに急速に接近し、行動を共にしていくうちにルパンは自分の生きるべき道を見出して行く。
■STAFF&CAST
監督は『ルパン三世 PART4』の作画監督、『PART5』では副監督と歴任し、「ルパン三世をやるためにアニメーターになった!」と語る酒向大輔氏。シリーズ構成は大河内一楼氏。設定考証に白土晴一氏。キャラクターデザインを田口麻美氏が務めた。制作は多くの『ルパン三世』シリーズを手掛けるテレコム・アニメーションフィルム。音楽を大友良英氏が担当した。
そして、中学生のルパンを演じるのは畠中祐氏、のちに生涯の相棒となる次元大介を武内駿輔氏、ルパンを取り巻く登場人物を早見沙織氏、行成とあ氏、安原義人氏、古川登志夫氏らが演じている。
社会、風俗、街並み、メカニズム……時代考証への徹底的なこだわり
『LUPIN ZERO』はこれまでのシリーズから逆算して『ルパン三世 Part1』へと繋がる物語として制作されている。それだけに、過去のシリーズに携わったクリエイターへ最大限のリスペクトを込めて制作されており、作画・演出・シナリオのいずれも完成度は高い。
また、原作漫画『ルパン三世』の連載が始まった昭和30年代を舞台にしたことで、当時の社会状況や風俗、街並み、クルマやバイクなどのメカニズムなどの時代考証にも徹底的にこだわっている。
作品解説やクルマを中心にしたメカニズム解説についてはすでにMotor-Fan CARでお送りしたので、Motor-Fan BIKESでは劇中に登場したオートバイについて解説して行くことにしよう。
『LUPIN ZERO』各話に登場する往年の名車たち
■第1話:少年ルパン、狼に出会う
東京の中学校で退屈な日々を過ごしていた少年ルパンは、不良相手に銃を抜く同級生・次元にを気に掛ける。ナイトクラブで遊ぶルパンは次元と再開するが、彼はルパンを「ボンボン」と決めつけて相手にしない。だが、二人は偶然にも、クラブのシンガー・洋子を取り巻く“事件”に遭遇。手を組んで、彼女を危機から救い出すことに……。
物語冒頭と終盤で次元にお礼参り(物語が始まる前に一悶着あったらしい)をする不良達がホンダ・ドリームCB72、丸正ライラックLS38、ラビット・スクーターなどの当時の人気バイクで登場する。
■第2話:列車で秘宝に食らいつけ
ある日の昼休み。次元と遊びたいルパンは、購買の焼きそばパンを賭けて彼に勝負を挑む。しかし誘いに乗る気のない次元はルパンの提案を一蹴するそんな中、次元に舞い込んだ仕事の依頼。父親の代理として、列車で運ばれる秘宝の警護をしなければならないらしい。真面目に仕事をこなそうとする次元だが、ルパンに仕事の内容を知られ……。
列車から放り出されたルパンが次元らが乗るDD13型ディーゼル機関車を追うのに拝借したスーパーカブC100。リアキャリアにはおそらくマルシン製と思しき出前機が乗せられていた。かつて出前機のオプションとして販売されていたフレームに被せる背面シートを備えるという芸の細かさ!
ルパンが次元らが乗るDD13型ディーゼル機関車を追うのに拝借したスーパーカブC100。低燃費で頑丈、実用性の高さから登場とともに爆発的な人気を呼び、1960年代には月産3万台体制を実現。日本のみならず世界中に輸出され、ホンダの屋台骨を支える主力オートバイとなる。
最終回の見所は神作画のバイクアクション!
■第5話:その男、密かに躍る&第6話:少年ルパン、三世を名乗る
クリスマスが近づく街。洋子がナイトクラブを辞めたことを知ったルパンは気になって彼女のアパートへと向かう。だが、出迎えたのは洋子の思い人であり、革命家のガウチョであった。
一方、ルパンの父・ルパン二世は沖縄の米軍基地から原子砲(アトミックキャノン)を盗み出す。盗みを依頼したのはガウチョで、原子砲を武器に日本政府に政権の明け渡しを迫る。
洋上からの東京への核攻撃を目論むガウチョが船の出航準備を進める中、「ルパン三世」から洋子を盗み出すとの予告状が届けられる。
少年ルパンは、如何にして三世を名乗ったか? 父・二世との因縁は? 洋子を盗み出すことはできるのか? 進むべき道を決めたルパンは相棒・次元と共にガウチョに立ち向かう。
シリーズのクライマックスを飾る第5話と第6話(最終回)は前・後編で送る東京の存亡を賭けたスケールの大きな物語となる。ここで物語を彩る重要なガジェットとなるのが、ガウチョの愛車となるノートン500(16H)だ。
若き日のチェ・ゲバラが友人のアルベルト・グラナードとともに南米大陸横断旅行に用いたこのバイクは、インドシナ(ベトナム)やマラヤ(マレー)、フィリピンで民族解放運動に身を投じたガウチョにふさわしいバイクと言えるだろう。
そして、最終回となる第6話ではルパン登場の混乱により甲板上に放置されていたノートンをルパンが奪いガウチョとの決戦に用いられる。
昨今アニメで用いられる3DCGに頼ることなく、バイクアクションは手描きで描かれており、二人の戦いは劇場版アニメを思わせる神作画の連続。アニメファンだけでなくバイクファンも満足できる内容となっている。
懐かしの名曲に乗せてYDS-1が疾走するエンディングに注目!
■エンディング
エンディングに流れる曲は『Part1』で使用された「ルパン三世主題歌II」を七尾旅人氏がカバーしたもので、黄昏の中をルパンと次元がヤマハYDS-1を駆って未舗装路を疾走するというもの。
これは『Part1』で峰不二子がハーレーを走らせているエンディングのオマージュとなっている。
ただし『Part1』のエンディングは不二子とバイクを引きでシルエットとして描いているのに対し、『LUPIN ZERO』ではカメラの位置がより近く、運転する二人へのフォーカス、対向車とのすれ違い、正面から土煙を走るカットなどを織り混ぜており、怖いもの知らずで前途洋洋なルパンと次元の姿を生き生きと描いているという違いがある。
LUPIN ZERO 原作:モンキー・パンチ 監督:酒向⼤輔 シリーズ構成:⼤河内⼀楼 設定考証:⽩⼟晴⼀ キャラクターデザイン:⽥⼝⿇美 美術監督:清⽔哲弘/⼩崎弘貴 ⾊彩設計:岡亮⼦ 撮影監督:千葉洋之 編集:柳⽥美和 ⾳響監督:丹下雄⼆ ⾳響効果:倉橋裕宗 ⾳楽:⼤友良英 メインテーマ「AFRO"LUPIN'68"」 作曲:⼭下毅雄 編曲:⼤友良英 エンディングテーマ「ルパン三世主題歌Ⅱ」 歌:七尾旅⼈ 作曲:⼭下毅雄 編曲:⼤友良英 劇中歌「かわいい男の⼦」 歌:SARM 作詞・作曲:荒波健三 アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム 製作:トムス・エンタテインメント 声の出演 ルパン:畠中祐 しのぶ:⾏成とあ 次元:武内駿輔 洋⼦:早⾒沙織 ルパン⼀世:安原義⼈ ルパン⼆世:古川登志夫 原作:モンキー・パンチ ©TMS