支給なしだと210円/L超えも! ガソリン価格の高騰を抑える「補助金」だけど、本当に有り難い制度なの?

ガソリン補助金とは
ガソリン価格の高騰を抑えるのが補助金だが、問題点もある
ガソリン価格の高騰が続いている。資源エネルギー庁の発表によれば、2023年9月19日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は182.0円/L。2023年8月7日時点に180.3円/Lとなって以来、6週連続で180円台をキープしている。

そんな中、政府では、本来2023年9月末に終了予定だったガソリンの補助金を2023年12月末まで延長することを決定。2023年9月7日からは補助金の支給額も拡充する対策を行っており、10月中には175円/L程度の水準になることを目指しているという。

ユーザーにとっては有り難い制度だが、国からの補助金といっても、結局は税金。我々ユーザーが負担しているものだ。12月末までに、補助金なしでも価格が比較的安い水準に落ち着いてくれれば問題ないが、もし、2024年以降に、再び価格が高騰した場合、またもや補助金が延長されたりしても大丈夫なのだろうか? また、価格高騰の対策として、補助金を支給する以外に、例えば、ガソリン税を見直すといった方法はないのだろうか? 

ここでは、そうしたガソリンの補助金について掘り下げ、問題点や税制度の見直しといった代替策がないのかなどについて検証してみる。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●資源エネルギー庁、写真AC
*写真は全てイメージです

ガソリン価格高騰を抑える制度

まずは、ガソリン補助金の概要を簡単に紹介しよう。正式名称は「燃料油価格激変緩和補助金」といい、対象はガソリンだけでなく、軽油/灯油/重油/航空機燃料も含まれる。つまり、国民生活に大きく関わる燃料油全般に関し、価格の高騰を抑えるための補助金だといえる。

ちなみに、補助金の支給は、燃料油元売り会社に対して行われ、一般ユーザーへ直接支給されるものではないので念のため。

開始されたのは、2022年1月27日から。コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に基づき実施している施策で、コロナ過からの経済回復の重荷になる事態を防ぐためや、ウクライナ侵攻など国際情勢の緊迫化による国民生活や経済活動への影響を最小化することを目的としている。

制度の開始当初は、全国平均ガソリン価格が170円/L以上になった場合、5円/Lを上限として補助金を支給。その後は上限額を変動させ、2022年4月28日からは35円までに変更している(さらなる超過分についても1/2を⽀援)。

さらに、2023年1月〜5月までは上限額をゆるやかに調整し、35円から25円まで毎月2円ずつ引き下げ。その後、2023年6月からも段階的な縮減を実施し、本来であれば2023年9月末に終了する予定だった。なお、この時期のガソリン価格高騰は、こうした補助金の縮小も影響しているといわれている。

ガソリン補助金とは
ガソリン補助金の発動効果(出展:資源エネルギー庁)

実際、前述したように、レギュラーガソリン全国平均価格は、2023年8月7日時点で180.3円/Lと、ついに180円/L台の高水準へ。さらに、2023年9月4日時点では、現在の方法で調査を開始した1990年以降で史上最高値の186.5円/Lまで高騰した。

そこで、政府は、補助金制度を2023年12月末まで延長することを決定。2023年9月7日からは、168円/Lから17円を超える分については全額支援し、17円以下の部分は10月4日までは30%、10月5日から12月31日までは60%支援するといった方策を取っている。

制度内容はちょっと複雑だが、要するに、前述の通り、やめるはずだった補助金を延長するだけでなく、支給額を拡充することで、ガソリン価格の高騰に歯止めをかけようとしているのだ。

確かに、これも先述の通り、2023年9月19日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は182.0円/Lとなり、9月4日時点の186.5円/Lと比べると、徐々に価格は落ちてきている。なお、政府では、2023年10月中には175円/L程度の水準になることを目指す方針だ。

補助金の問題点とは?

以上が、ガソリン補助金の概要だが、問題点も指摘されている。それは、例えば、「財政の負担増」だ。国からの補助金だといっても、結局は税金から出されているため、そのコストを最終的に負担するのは、我々ユーザー。つまり、本当の意味で助かっていないということだ。

補助金が2023年12月末まで延長された分、当然ながら財政への負担は増えている。さらに、もし、ガソリン価格の高騰が収まらず、2024年以降も補助金制度が続くようなことがあるとすれば、ガソリン価格に使った税金の穴埋めで、ほかの税金が上がる可能性もある。そうした点でみれば、ガソリン補助金は、我々ユーザーにとって「諸刃の剣」であるともいえる。

また、補助金が「市場価格をゆがめる」といった指摘もある。ガソリンに限らず、「もの」の価格は本来、需要と供給で決まるものだから、通常は価格が上がれば需要は減るのが一般的だ。

ところが、補助金が支給されていることで、市場のメカニズムが働かなくなる可能性がある。その場合、価格が高くなっても需要が減らない状況が続くことになる。つまり、正常な経済原理が働かなくなることで、ガソリン価格にゆがみが出るというのだ。

そうなると、例えば、ガソリン価格の高止まりが続く一方となり、税金を使う補助金を辞められないか、もし辞めたとしても我々ユーザーの財布を直撃するという、悪循環が生まれる可能性もある。

ガソリン補助金とは
ガソリン補助金も税金から出ている

ガソリン税の見直しを求める声もある

ガソリン価格の高騰に対しては、税金の見直しを求める声も多い。特に、問題視されているのが、まず「暫定税率」だ。

そもそもガソリンの小売り価格には、ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)53.8円/Lが課税されているが、本来の税率(本則税率)は28.7円/L。ところが、現在は、暫定税率として25.1円/Lが上乗せされている。

この暫定税率は、もともと道路財源の不足を補う目的で設定されたもので、一時的に課税されるもの。つまり、目的が達成されれば課税されなくなる「当分の間」の税金だ。しかも、現在は一般財源に充てられており、本来の目的と違っていることで、問題視する声が多い。

また、消費税のかけ方が「二重課税」だという批判もある。ガソリンの小売り価格は、

「ガソリン本体価格」+「ガソリン税53.8円/L」+「石油石炭税(地球温暖化対策税も含む)2.8円/L」の合計額に消費税をかける

といった仕組みになっている。そして、この方式が「税金に税金をかける二重課税」だというのだ。

こうしたガソリンの税制度については、疑問視する声は長年多かったが、ガソリン価格がかなりの高騰ぶりを見せていることで、最近は特に見直しを求める声も多い。ただし、現行の税制度を見直すことで、税収が減れば、やはり「結局は別の税金が増えるのでは」といった声もある。そう考えると、一概に暫定税率や二重課税を廃止すればいいともいえないことも確かだ。

ガソリン補助金とは
ガソリン税の見直しを求める声もある

価格高騰に歯止めをかける方策はあるのか?

資源エネルギー庁の発表では、ガソリン補助金がなければ、2023年9月19日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は、先述した182.0円/Lではなく、206.0円/Lとなっていたはずだという。また、こうした価格高騰はその後も続くことが予想され、補助金なしでは210円/L台になる可能性も高いという。

そう考えると、確かに補助金は有り難い。だが、どこかで歯止めをかけないと、いつまでも補助金に頼っているだけでは、結局は我々ユーザーに負担が帰ってくることは間違いない。また、税制度についても課題はあるが、これも先述の通り、もし暫定税率や消費税の制度を見直した場合、なくなった分の税収をほかの税で補おうとする可能性もある。

ガソリン価格の高騰は、そもそも原油高や円安の影響が大きいといわれている。そのため、ガソリン価格の高騰に根本的な歯止めをかける方策は、なかなかないのが現状だろう。しかも、最近は、産油国であるアフリカ・リビアの問題もある。暴風雨による大雨でダムが決壊し、洪水により大きな被害が出ていることで、今後も原油価格が高騰する見込みであることが伝えられている。

なかなか出口が見えないガソリン価格の問題だが、いずれにしろ、バイクやクルマに乗る多くのユーザーへ大きな影響を与えるだけに、一日でも早い解決策や、我々が納得できる値段への沈静化を望みたい。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…