【BETA試乗】200ccは中途半端? いいえ、そのサジ加減がイイんです!【RR2T 200】

BETAの最新機種が勢揃いした試乗会に潜入。全日本ロードレースやモタードで活躍する濱原 颯道選手がレビュー! 以前紹介したRR2T 125とプラットフォームを共通とするRR2T 200にフィーチャー。
取材協力:BETA motor Japan
PHOTO:山田 俊輔(MotorFan BIKES)
RR2T200 MY24/124万3000円

知る人ぞ知るイタリアの名門オフブランド

オートバイの本場、イタリアのフェレンツェに本社を構え、100年以上前からオフロードマシン全般を製作している「BETA motorcycle(ベータモーターサイクル:以下BETA)。とくにトライアルでは世界大会で幾度もタイトルを獲得しているメーカーです。

このRR2T 200は125版ともにBETA内ではエントリー向けの小排気量モデル。車体やクランクケースなどは基本的にRR2T125と共通なのでどんな違いがあるのか、とても気になるところです。なおストロークアップさせて排気量を拡大しているので、クランク自体は別のものが搭載されているみたいです。

侮るなかれ! 200㏄が生む絶妙なフィーリング!

正直言って「200ccって中途半端じゃない?」と侮っていたのですが、いざ乗ってみると一番しっくりくるエンジンフィーリングでした。250ccと比べてトルク感が薄いというわけでもなく、125ccと比べて上が回らないわけでもない、丁度いい落としどころというか、「万能」に感じました!

スロットルの開け始めから中回転域まではまるでモーターのように滑らかで、回りすぎる一歩手前で抑えてくれる絶妙なニュアンス。これはケイヒンのPWK36キャブレターを採用しているのも影響している気がしました。というのも、PWKキャブ採用車はφ38サイズが多いのですが、RR2T 200は排気量に見合っているというか、口径を絞ることによってスムーズかつリニアな加速につながっていると思いました。

そうそう、言い忘れてましたがこの“200”の最大のストロングポイントは「セル付き」なこと! シリンダーやピストンが大きくなったことで重量の増加に加え、セルモーターとセルを回すためのバッテリーを搭載しているRR2T 200が125よりもたったの3kgしか重くないのは驚きです! 基本的に車体は共通なのでこれといって際立つ軽量化を行っているわけではなさそうだから、軽量&コンパクトな車体にパワフルで扱いやすいエンジンが搭載されているというわけです。

キャラクターがはっきりした万能マシン!

BETAのRR2T/4Tシリーズは250㏄オーバーもラインナップされていてとにかくエンジンの存在感が強く、しっかりとマスを集中させています。では200や125はどうなのかというとエンジン自体が軽いこともあってバランスよくマスが分散されている印象で、前後に荷重がかかった際も極端に“浮く”感じがなく、とても自然な乗り心地!

リヤタイヤをスライドさせてコーナーを脱出する時も、思わぬ拍子でグリップが回復してしまう250ccオーバーの兄貴分達と比べて一定のスライド量で立ち上がっていけます。中回転域あたりがとても乗りやすいバイクだと思うので、例えばツーリング+林道アタック(※)のシチュエーションにもってこいですし、キックスターターしかないモデルに抵抗があったり、250㏄以上のパワーはいらないという人はぜひ試して欲しいですね。RR2T 125試乗の際に少しネガに感じたリヤブレーキの強めのタッチ感もRR2T 200だとそこまで気にならなかったのも幸いでした。

※RR2T200はリーガルキット、通関証明、譲渡証明が付属し、ナンバー登録が可能です

200と250の違いは? 選ぶべきPOINT

さてここでRR2T 250との違いについてもお話しさせてください。125と200は“車格”の面ではほぼ同じだから排気量からくる部分に注力して選べばよいと思います。

そして200と250も例えばホイールベースが5㎜しか違わず、そのくらいの差ならパワーがあるRR2T 250を選ぼう、と思ってしまうかもしれません。しかし、その僅かなホイールベースの差からくる旋回性は大きく異なります。またシート高は同じでもステップ位置が200の方が3mmほど高いのでポジションも絶妙に変化します。小柄な人はヒザの角度が緩くなりすぎないので200がベターかもしれません。逆に大柄で体重のある人は250オーバーが向いているという考え方もできます。ラインナップが豊富なので自分の用途や体格などに応じて選べるのがBETA2T/4Tシリーズの魅力でもありますね。

ちなみにBETAの純正フットペグはグリップ感が素晴らしいです! 上面の針状部分が細く、あらゆるソールに対応してくれると思います。ロックセクションなどを行く際はリンクまで守れるアンダーガードが必要ですが、ちょっとしたエンデューロコースであれば純正のアンダーガードでも十分。

BETAモータージャパンはサポートも万全!

最後に、BETAモータージャパンは富山県南砺市にあります。代表は元トライアル国際A級ライダーの門永さんです。外国車メーカーで懸念されることの筆頭として「車両代や部品代って高いのでは?」、「部品を注文しても何カ月も待つんでしょ?」と思われがちですが、BETAはその心配はありません。在庫パーツを潤沢にストックしており、海外からの取り寄せが必要な場合でも1カ月以内にはほぼ到着するそう。そして車両の金額も高性能な輸入モデルかつナンバー登録ができるのにそこまで高額ではないと思います。なのでこれらの点が気になる人も安心して購入できます!

ディテール解説

ザックス製フロントサスペンションにNISSIN製ブレーキシステムを搭載。タイヤはMAXXISのM7332を装着。根っこでは若干グリップの薄さを感じるが、土であればサンドから黒土までしっかりとグリップしてくれる。

基本的にRR2T125と車体は共通と言ったが、200はリアのタイヤサイズが140/80-18となっている(125は120/80-18)。またリムはRR2T 200はTAKASAGO製EXCELリムを組んでいる。不意に踏んだ岩などを“いなす”感じがボク好み!

キャブレターはKEHIN PWK36で、リードバルブはV FORCEを装着する。チャンバーは125と比べて太く、ボリューム感がある。ちなみにRR2T 200はエマージェンシー用にキックペダルを装着できるホールが残っているので過酷な山遊びをする方は追加で装着するのもありだ。

 サイレンサーがかなり大きいため消音されており、住宅街などでエンジンを始動してもさほど気にならない。テールライトは目視できる最小限のサイズだ。転倒時に破損することが多いので最小限に留めるのがエンデューロマシンならでは。

125同様にRR2T 200にもマップ切り替えスイッチがついている。200はエンジン特性自体がとても扱いやすいので基本的に太陽マークのドライ路面用(パワーの出ている方)で事足りた。タンクはホールド感がよく、車体の上でボディアクションがしやすいサイズなのでギャップなどで振られても怖くない。

主要緒言

エンジン
トランスミッション 6速
スターター セルスターター
排気量 190.2cc
ボア 62mm
ストローク 63mm
クラッチ 湿式 多板
イグニッション AC-CDI Kokusan
スパークプラグ NGK BR8ECM

シャーシ
乾燥重量 97kg
燃料タンク容量 9.5(リザーブタンク2.3L)
フロントブレーキディスク径 260mm
リアブレーキディスク径 240mm
フロントブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
リアブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
ドライブチェーン 520シールチェーン
フロントサスペンション ザックス
リアサスペンション ザックス
フロントサスペンションストローク 295mm
リアサスペンションストローク 290mm
最低地上高 325mm
最高地上高 1270mm
全長 2167mm
ホイールベース 1477mm
ステップ高 410mm
シート高 930mm

ライダープロフィール

濱原颯道(はまはら そうどう)

1995年1月17日生まれ。身長191cm、体重約90kgとオートバイレーサーとしては規格外の体躯を持つ。2017年に全日本ロードレース選手権(JSB1000)デビュー、2021年にはランキング2位を獲得。鈴鹿8耐や全日本スーパーモト、エンデューロレースの参戦経験、ミニバイク誌のインプレ寄稿など豊富な経験を活かし、多方面で活躍する「モータースポーツ総合エンターテイナー」。

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