試乗記|BETAの最小エンデューロ「RR2T125」。2stならではの官能的な加速と軽快な走りが魅力的。

富山県のスキー場に専用コースを設けて行われたBETA motor Japanの試乗会。2024モデルが一堂に会して多くのメディアが訪れた! 今回は超大型ボディを持つ全日本ライダーの濱原 颯道選手が一気乗り。オフ/モタードも得意なだけにダイナミックな走りは大迫力! まずは試乗車の中で最小クラスの「RR2T125」をご紹介します。
取材協力:BETA motor Japan
PHOTO:山田 俊輔(MotorFan BIKES)

BETA motercycle(ベータモーターサイクル:以下BETA)は今から約120年以上前の1905年にイタリアで設立された歴史の長いメーカーです。当初からトレッキングやエンデューロモデルが主で、とくにトライアルでは世界的に見てもかなりメジャーな存在!

BETA/RR2T 125 139万7000円

ロードレースやモトクロス以上に専門的なジャンルなので、とくに日本では馴染みが薄いかもしれませんが、BETAはゴリゴリのモトクロッサーや空冷4ストエンジン搭載のフレンドリーなモデルまで幅広く取り揃えています。要するに「オフロードに特化したメーカー」です。そんなBETAが用意した試乗車の中で最もパンチがあったのがRR2T 125でした。

低回転域でも粘って“エンストしにくい”

まず乗り出した直後に思ったのは「スゴイ加速だな!」ってこと。2ストエンジン特有の高回転が突き抜ける感じで、これは250ccオーバーでは体感できない、小排気量ならではのキャラクターですね。コンペティション車なんで当たり前なんですけどパワーも潤沢で、回していて本当に楽しい!

逆に心配になるのは “低回転域でのトルク感”でした。2st125ccといえば「トルクがなくてピーキーで乗りにくい」という印象を持ってる方も多いのではないでしょうか? これも小排気量ならではの悩みどころではありますが、スロットルさえ開けていれば「本当に125ccなの?」と思えるほどのしっかり走ってくれる! ボクが今まで乗ってきた2st125㏄なら絶対にエンストするような回転域でもRR2T 125は粘りを見せて、そのままトコトコッと軽快に駆けて行けちゃう。ハッキリ言って変な感覚に陥りましたね(笑)。

トルクフルというよりは“エンストしにくい”という感覚なので半クラッチを多用して高回転をキープする必要がないのはありがたいです。「今時の125㏄ってスゲー!」というのが正直な感想ですね。

軽さを生かした走法! 操安性もバッチリ!

このRR2T 125は基本設計がRR2T 200と共通なのですが、車重が125は94kg、200は97kgと3キロの差があります。これはセルモーターの有無(125はキックスターターのみ)、そしてシリンダーやピストン、チャンバーの太さなどの違いからくる重量差です。数値だけ見れば「たったの3kgでしょ」と思うかもしれませんが、“軽さは正義”という言葉もある通り、軽量に越したことはありません。これに輪をかけて軽快な走りを感じさせてくれるのがタイヤサイズ(リム幅)です。

兄貴分のRR2T 200をはじめ多くのエンデューロマシンは140/80-18サイズが定番ですが、RR2T 125はリヤタイヤが120/80-18サイズと細身なためグリップを発揮させにくい一方で、意図的にスピンさせやすく、高回転型&粘りのあるエンジン特性と相まって扱いやすい! ハンドルもよくしなってくれてエンジンの振動を抑えてくれたのも印象的でした。

セルボタンがないのでスッキリしている印象。ハンドルバーはファットバータイプが純正採用されている。

ただ小排気量ゆえにエンジンブレーキはやや薄めなのでエンブレだけに頼らず、積極的にブレーキを使ってコントロールするのが吉ですね。リヤブレーキの効きが良すぎるのか? タイヤがロックしやすいので慣れるまでは注意ですね。純正がメッシュホースでタッチ感も固めだから、ソフトなゴムホースに変更してもいいかも!?

屈強な足周りも効果的!

RR2T/4Tシリーズではこちらも老舗のドイツ製のSACHS(ザックス)を純正採用しています。RR2T 125は先述の通り車重が軽いこともあって少し硬く感じましたが、それが堅牢というか高剛性というか、確信めいたものに感じられたのはジャンプしたタイミングでした。

前提としてRR2T/4Tシリーズはエンデューロ(ED)マシンです。整地されていない広大な土地を走ったり、難易度の高い傾斜がある山々を駆け巡ったりする競技でモトクロスとは似て非なるものなんですね。車体構成も例えばリム径やタイヤサイズなど細かく違います。

RR2T 125はジャンプからの着地の衝撃をものともせず、「これならMXコースに持ち込んでも全く不安じゃない」と興奮してしまいました!

Betaならではのコンパクトな車格がEDにうってつけ!

BETAの車両はほかの海外メーカーのEDマシンと比べてコンパクトと言われています。シート高で言えばRR2T 125は930㎜とライバル勢と比べて10~20mmほど低いため足つき性は良好! モトクロスならスタンディングがメインでシート高(足つき)を気にすることもありませんが、様々なシチュエーションが立ちふさがるエンデューロとなればとても重要になっています。

最後にRR2T 125のホイールベース(軸間距離)は1477mmと絶妙な長さに設定されています。例えばヤマハのYZ125Xと比較すると27mmほど長いですが、KTMシリーズと比べると10mmほど短い。先のシート高やポジション、そしてディメンションなども加味して熟考されていると感じます。これはプラットフォームを共通とするRR2T 200とでホイールベースが若干異なることからもわかるところですね(スプロケの違いもある)。

まぁホイールベースというのは長いから安定しているとか短いから曲げやすいという単純な話ではありませんし、スペック値だけではわからない部分を楽しむのみバイクの醍醐味です。ともかく「RR2T 125は飛ばしたくなる!!」そんな一台でした。

ディテール解説

ザックス製フロントサスペンションにニッシン製ブレーキシステムを採用。ブレーキはRR2T、RR4T共に全車種共通なのでライトウエイトな125には少しブレーキのタッチが強く感じた。

リヤタイヤのサイズは120/80-18(マキシス製M7314)。他のRRシリーズが全て140/80-18(マキシス製M7324)なのでワンランク細いタイヤ&リムを組んでいる。

 PWKφ36キャブレターに、リードバルブはV FORCE製を採用。シリンダーが他の車種に比べて小型だからプラグ交換も行いやすい。

分離給油ではなく混合ガソリン仕様で 燃料タンク容量は9.5ℓ(リザーブは2.3ℓ)。燃費はカタログ上だと100キロ走るのに3.3リットルと記載されているので巡行距離はまずまず。

2通りのマップ切り替えはスイッチで行う。太陽のマークはパワーが出ていて点火時期が進んでいるように感じた。傘マークの方は穏やかになり、路面のグリップが希薄な状況などで使うのが良さそうだ。ラジエターキャップは樹脂だが、RR2T250/300は先行してメタル素材になったので今後に期待!

 フットペグは操作感、グリップ感ともによく車体を扱いやすい。またフレームガードもグリップさせやすく、排泥性にも優れているので足元はマディコンディションでも安心!

主要諸元

エンジン
トランスミッション 6速
スターター キックスターター
排気量 124.8cc
ボア 54mm
ストローク 54.5mm
クラッチ 湿式 多板
イグニッション AC-CDI Kokusan
スパークプラグ NGK BR9ECMVX

シャーシ
乾燥重量 94kg
燃料タンク容量 9.5(リザーブタンク2.3L)
フロントブレーキディスク径 260mm
リアブレーキディスク径 240mm
フロントブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
リアブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
ドライブチェーン 520シールチェーン
フロントサスペンション ザックス
リアサスペンション ザックス
フロントサスペンションストローク 295mm
リアサスペンションストローク 290mm
最低地上高 325mm
最高地上高 1270mm
全長 2167mm
ホイールベース 1477mm
ステップ高 410mm
シート高 930mm

ライダープロフィール

濱原颯道(はまはら そうどう)

1995年1月17日生まれ。身長191cm、体重約90kgとオートバイレーサーとしては規格外の体躯を持つ。2017年に全日本ロードレース選手権(JSB1000)デビュー、2021年にはランキング2位を獲得。鈴鹿8耐や全日本スーパーモト、エンデューロレースの参戦経験、ミニバイク誌のインプレ寄稿など豊富な経験を活かし、多方面で活躍する「モータースポーツ総合エンターテイナー」。

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