【MT-125 vs CB125R】原付二種ネイキッドにおけるHY戦争勃発! 戦闘力でも商品力でも拮抗しているぞ

MT-125の直接のライバルは、同じストリートファイター系のルックスを持つスズキのGSX-S125ではなく、刺激的な走りのホンダ・CB125Rではないか……。試乗した際にそう直感した筆者は、MT-125とCB125Rの違いについて考察してみた。ヤマハの方が2万2000円高くて8kg重いのに対し、ホンダは原付二種とは思えないほど足周りが豪華だ。令和におけるHY戦争、125ccフルサイズMTネイキッド部門を制するのはどっちだ!

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・MT-125 ABS……495,000円(2023年11月10日発売)

スチール製ツインスパーのデルタボックスフレームに、可変バルタイ機構VVA採用の水冷シングルを搭載。このプラットフォームを共有する形で、MT-125、XSR125、YZF-R125、YZF-R15が設計されている。MT-125の海外初登場は2014年で、日本での正規販売は2023年11月よりスタートした。インドネシアで生産されている。

ホンダ・CB125R……47万3000円(2021年4月22日発売)

新世代CBシリーズの末弟として2018年3月に発売されたホンダ・CB125R。当初、エンジンはSOHC2バルブで最高出力は13psだったが、2021年4月のモデルチェンジでローラーロッカーアーム付きのDOHC4バルブへと刷新され、合わせて1次/2次減速比や6段ミッションの変速比も見直されている。最高出力はEU圏内A1ライセンスの上限である15psへ。タイで生産されている。

原付二種スポーティーネイキッド、両車の違いをチェックする

MT-125
CB125R

エンジンはどちらも水冷4バルブ単気筒だが、MT-125の動弁系は可変バルタイ機構VVA搭載のSOHCに対し、CB125Rは2021年モデルでSOHC2バルブからDOHC4バルブに進化した。また、ボア×ストローク値はMT-125がφ52.0×58.7mmのロングストローク設定なのに対し、CB125Rはφ57.3×48.4mmのショートストロークとなっている。最高出力は両車とも15ps/10,000rpmで、最大トルク12Nm/8,000rpmも共通だ。なお、CB125Rはトラクションコントロールとスリッパークラッチを採用していない。

MT-125
CB125R

足周りに関しては、リンク式リヤサスペンションとアルミ製スイングアームを採用するヤマハに対し、ホンダはショーワ製φ41mmSFF-BP倒立式フロントフォーク、ダンロップ・GPR-300(ラジアルタイヤ)、ラジアルマウントの対向式4ピストキャリパー、前後ウェーブ形状ブレーキディスク、IMU付きのABSなどを採用。付け加えると、CB125Rのスイングアームは高剛性としなやかさを両立した高張力鋼板製で、リヤサスはリンクレスながらもピストンの大径化を図った分離加圧式ショックユニットを採用しており、こと足周りにおいてはホンダの圧勝といっても過言ではない。

MT-125
CB125R

両モデルともデジタル液晶メーターを採用。タコメーターおよび燃料計のバーグラフ表示やギヤポジションインジケーター、シフトタイミングインジケーター、瞬間/平均燃費、平均速度、時計(どちらも12時間表示)など、主だった機能は共通。ヤマハはメッセージ表示機能やフューエルトリップ、燃費の単位切り替え(km/LまたはL/100km)を有するのに対し、ホンダは燃料消費量、ストップウォッチ、ピークホールド表示などを搭載する。

MT-125
CB125R

LEDプロジェクターヘッドライトを採用するMT-125。ブレーキ/テールランプもLEDで、前後ウインカーとナンバー灯はフィラメント球を採用する。対してCB125RはオールLEDであり、灯火類に関してもホンダに軍配が上がる。

エンジンはどちらも15psだが、DOHCのホンダの方が刺激あり

CB125RはショートストロークのDOHC4バルブエンジンが刺激的。試乗インプレッションはこちら

異形ヘッドライトを採用するストリートファイター的なルックスから、ヤマハ・MT-125のライバルはスズキのGSX-S125であると思われがちだ。しかし、筆者がMT-125に試乗してまず思い浮かんだ好敵手が、ホンダのCB125Rだった。それほどMT-125とCB125Rの走りは似ているのだ。

順を追って説明しよう。まずはエンジンから。どちらも124ccの水冷シングルだが、動弁系が大きく異なり、ヤマハは可変バルタイ機構VVA搭載のSOHC4バルブ、ホンダはロッカーアーム付きのDOHC4バルブとなっている。また、ボア×ストローク値も異なり、MT-125はボア径よりもストロークが長いロングストローク設定で、CB125Rはその逆となっている。なお、ミッションは両車とも6段で、トップ6速でのエンジン回転数はヤマハが約4,800rpmなのに対し、ホンダが約5,000rpmとやや高め。加えて、ヤマハはトラクションコントロールやスリッパークラッチを採用している。

MT-125に採用される可変バルタイ機構VVAは、7,400rpmを境に吸気側のカムをローとハイに切り替えるシステムで、ハイカム領域に入ると「カシャッ」という微かな音がエンジンから聞こえるとともに、メーター内に「VVA」アイコンが登場する。NMAXやシグナス グリファスなどスクーターに採用されている同様のVVAに対し、パフォーマンス型VVAとも呼ばれており、パワー感の変化は極めてシームレスだ。

似たようなシステムとして、ホンダのCB400SF/SBが2バルブと4バルブを切り替える「ハイパーVTEC Revo」を採用しており、4バルブ領域に入ると明らかに力強くる。これに対してMT-125のVVAにはそこまでの演出はなく、低回転域からスムーズにレッドゾーンの始まる1万1000rpmまで伸び上がっていく。

一方、CB125Rにはそうした動弁系のギミックはないものの、7,000rpm付近から上の領域でパワーの盛り上がりが感じられ、このエンジンを刺激的に感じさせる要因となっている。こうしたパワーの変化は従来のSOHC2バルブ時代よりも明瞭で、これにはボア×スト比のショートストローク設定も少なからず貢献しているのではないだろうか。

なお、低~中回転域でのトルク感はほぼ横並びだが、体に伝わる微振動はMT-125の方が少ない印象だ。ホンダはスリッパークラッチを採用していないが、125ccという排気量の少なさゆえにレバーの操作力はそこまで重くはなく、またトラコンがないことによる不利もほとんど感じられない。とはいえ、これらは安全性を高めるための有益なギミックであり、ヤマハが積極的に採用してきたことは素直に歓迎したい。

両モデルともライダーの操縦に忠実なハンドリングで愉快だ

ついに国内販売がスタートしたMT-125。試乗インプレッションはこちら

MT-125とCB125Rは、どちらもライダーによる操縦を主としたハンドリングを有しており、視線を送っただけでバイクから自然と向きを変えるタイプではない。とはいえ、旋回半径の決定からバンク中のライン変更まで自由自在で、その上でMT-125はよりクイックに反応し、CB125Rは安定性重視というイメージだ。

MT-125のライバルはGSX-S125ではなくCB125Rだと感じた最大の理由がこのハンドリングにあり、特に倒立式フロントフォークを中心としたフロント周りの剛性感と、それを生かしてのコーナー進入時のトレースのしやすさに、非常に近しいものを感じたのだ。ホンダは前後にラジアルタイヤを採用している上に、ショーワ製SFF-BPによるフロントフォークの優れた作動性もあって、原付二種とは思えないほど旋回中の安心感が高く、さらに巡航時の乗り心地もいい。一方、ヤマハはリンク式モノショックにアルミ製スイングアームというアドバンテージはあるものの、やはりCB125Rの前後とも1サイズずつ太いラジアルタイヤの貢献度は大きいと言わざるを得ない。

ブレーキについてもホンダは妥協がない。MT-125のブレーキ性能に不満があるわけではないが、CB125Rはフロントにラジアルマウントの対向式4ピストンキャリパーを採用しており、特にワインディングロードでペースを上げた際の、コントロール性やストッピングパワーに余裕があるのは頼もしい。加えてABSには車体姿勢推定システムのIMUを採用しており、これらが総合的な安心感や満足度につながっているのは確かだ。

燃費については、WMTCモード値によるとMT-125が49.4km/ℓ、CB125Rは46.8km/ℓとなっており、わずかとはいえヤマハの方がいい。これは全体的にハイギヤードかつ低燃費にも貢献するVVAを採用していることが功を奏しているのだろう。なお、燃料タンク容量はともに10ℓで、燃料計のセグメントはどちらも6個。付け加えると、両車とも残量が約1.9ℓを下回ると、最後のセグメントが点滅するようになっている。

シート高はMT-125が810mm、CB125Rは815mmで、どちらも原付二種としては高めだ。細かな装備としてはほぼ横並びで、ヘルメットホルダーはヤマハが2個、ホンダが1個という違いはあるものの、これについては購入候補を左右するほどではないだろう。個人的には足周りに妥協のないCB125Rの走りが好みではあるものの、MT-125の個性的なスタイリングやトラコンという安心材料も捨てがたく、価格も2万2000円差と小さいので、あとはスタイリングの好みで選んでもらえればいいだろう。

MT-125 ABS(2023年モデル) 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BJ-RE45J/E34LE
全長/全幅/全高 2,000mm/800mm/1,070mm
シート高 810mm
軸間距離 1,325mm
最低地上高 170mm
車両重量 138kg
燃料消費率 国土交通省届出値 
定地燃費値 58.6km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 49.4km/L(クラス1)1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.0mm×58.7mm
圧縮比 11.2:1
最高出力 11kW(15ps)/10,000rpm
最大トルク 12N・m(1.2kgf・m)/8,000rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.05L
燃料タンク容量 10L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、5.0Ah(10HR)/YTZ6V
1次減速比/2次減速比 3.041(73/24)/3.714(52/14)
クラッチ形式 湿式、多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.833 2速:1.875 3速:1.363 4速:1.142 5速:0.956 6速:0.840
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°30′/88mm
タイヤサイズ(前/後) 100/80-17M/C 52P(チューブレス)/140/70-17M/C 66S(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED
乗車定員 2名

製造国 インドネシア

ホンダ・CB125R(2021年モデル) 主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JC91
全長(mm) 2,040
全幅(mm) 820
全高(mm) 1,055
軸距(mm) 1,345
最低地上高(mm) 140
シート高(mm) 815
車両重量(kg) 130
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 54.0(60)〈2名乗車時〉
 WMTCモード値(クラス) 46.8(クラス 2-1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.3
エンジン型式 JC91E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3) 124
内径×行程(mm) 57.3×48.4
圧縮比 11.3:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 11[15]/10,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 12[1.2]/8,000
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 10
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
 1速 3.083
 2速 1.941
 3速 1.500
 4速 1.227
 5速 1.041
 6速 0.923
減速比(1次/2次) 3.260/3.200
キャスター角(度) 24° 12′
トレール量(mm) 90
タイヤ
 前 110/70R17M/C 54H
 後 150/60R17M/C 66H
ブレーキ形式
 前 油圧式ディスク(ABS)
 後 油圧式ディスク(ABS)
懸架方式
 前 テレスコピック式(倒立サス)
 後 スイングアーム式
フレーム形式 ダイヤモンド

製造国 タイ

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…