2006年から続く「Honda ビーチクリーン活動」。収集したゴミの総量は8トン超。

年明け早々に昨年の話題で恐縮だが、企業が始めた社会貢献活動の継続が、地域社会の人々と一緒に取り組む活動へと、ジワジワと広がりをせみせている。地道な活動へ取り組むスタッフの想いと、継続への企業努力に、心から拍手を送りたい。

REPORT:近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO:本田技研工業 株式会社/近田 茂
取材協力:本田技研工業 株式会社

「素足で歩ける砂浜を次世代に残したい」

 「技術で世の中の役に立ちたい」と言うホンダの想い。
 1999年、製品活用の市場調査のために訪れたとあるビーチで、同社の従業員はさまざまなゴミが散乱する酷い光景を目の当たりにし、「なんとかしなくては!」と一念発起。数年後には、ホンダが得意とする物作りの技術を生かし、オリジナルのビーチクリーナーを開発した。
 砂浜でも難なく走れるATV(All-Terrain Vehicle :全地形走行車)を活用して独自開発したクリーナーを牽引するスタイル。サンドレーキと呼ばれる、大きな鋤(スキ)の様な機材でビーチのゴミをかき集める。田畑を耕す光景に似ている。ペットボトル等の大きく雑多なゴミが収集できる。
 小さなゴミは、サンドスクリーン(通称:バタバタ)で収集。この他、後に開発されたドラム状の回転式スクリーンで砂とゴミとが分別される。
 ATVを活用した牽引作業が叶わぬ場所では、人手とこのドラム・スリーン(通称:ぐるぐる)が活躍するそう。
 また運転の簡単な電動カートの“モンパル”をベースに砂浜を走れるビーチモンパルを開発。荷物の運搬や作業道具の牽引に使われている。

サンドスクリーンは約20km/hの速度で牽引。振動でふるわれ、砂は網から落下する。残ったゴミを収集する。
ドラム式のアミを回転させる事で、砂を落とすと、ドラム内にゴミが残る。
何とも頼もしい作業風景。田畑の耕作に似ている。約5km/h(歩く様な速度)でサンドレーキを牽引する。
ご覧の通り、サンドレーキでは様々な大きめのゴミを収集。初回の活動実績では、約4時間半の作業を行い、40Lゴミ袋で21袋分のゴミを回収した。
バタバタと呼ばれているサンドスクリーンでは小さめのゴミが収集できる。金属ゴミはほとんどが錆びている。

企業の社会貢献活動、地道な努力が地域社会を変えていく。

 2006年からスタートしたHondaビーチクリーン活動は、これまでに全国300ヶ所以上のビーチで実施され、今や、年間参加者が7,000人をオーバーする規模まで成長してきている。 
 累計で6万人に迫るほどの参加者を集める有意義な社会活動になっている。2010年からはホンダの4輪ディーラーと連携しながら、活動を拡大。
 2017年からは自治体と連携することで活動は大きな広がりをみせているのである。

 なお、このビーチクリーン活動の現在は、自治体からの活動要請を受け、実施場所等いくつかの条件を確認し、合致した上で実施の運びとなる。
 海浜動植物の生息状況等によっては、実施できないケースもあるようだ。

 いずれにせよ、15年に及ぶHondaの地道な社会貢献活動が、地域住民を含めたコラボ活動へと、良い方向への活動拡大に実を結び出した事は間違いないのである。

 

単なる清掃作業だけではなく、環境保全に対する人々の意識を変え、自然を大切にする“学びの場”にもなっている。

それは2006年5月の湘南(片瀬海岸西浜)から始まった。

基本の作業スタイルは昔から変わらない。

ゴミの収集基地となるターミナルに到着したビーチクリーナー。
パイプのスロープ間を進むとゴミ籠が浮いて砂が落ち、残されたゴミを左手に収集する。
当初のスタッフは従業員を始めOBの有志ボランティアも含めたホンダ関係者の15名で結成された。
特注の大型10トントラックをしつらえて、全国キャラバン活動は、2006年にスタートした。

以後15年間の活動で、収集したゴミの総量は8トンを超えている。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…