最高出力201馬力のBMW・M1000XR、200km/h超の速度域でダウンフォースがメチャ効く!|海外試乗記

REPORT●鈴木大五郎

2輪のライダーならいざしらず、BMWのドライバーからするとMという称号はかなり特別なハイスペックモデルだけがつけることを許されるマシンだという。Mのイニシャルを冠した3機種目となるマシン。M1000XRが2024年モデルとしてリリースされた。M1000XRはS1000XRをベースとしたMモデルであるが、そもそもS1000XRがスーパーバイクのベースマシン、S1000RRをベースとした兄弟車である。
前後のサスペンションをロングストローク化。ポジションをアップライトとし、防風性の高いフェアリングをまとう。大きく括ればアドベンチャー。さらに細かく括ればクロスオーバーモデルなどと称されるジャンルに属しているマシンである。

Sモデルではそこまでの高出力、とくに高回転域でのそれは不必要とのことからRRのエンジンとは異なり、出力は165馬力(2024年モデルからは170馬力)に抑えられている。とはいえ、実際のところ不足に思える場面は国際サーキットのロングストレートくらいでは?というほどのハイパワーマシンである。
しかしMモデルに搭載されるのはシフトカムを搭載するRRと基本的に同じエンジン。ミッションはツーリング等を考慮するなど変更はされているが、最高出力は201馬力とスペック的には恐ろしいものだ。

しかし、そんな数値が間違いでは?と思われるほど、走り出したM1000XRは素晴らしくスムーズである。アクセル操作に対するマシンの反応が上質であり、いきなり旅モードにマインドをスイッチできるほど包容力があるのである。
ハイスペックなモデル特有の緊張感。それは締め上げられた足回りによって助長されることが多いのであるが、M1000XRはまずサスペンションの動きがしなやかであり、そのうえでセミアクティブサスペンションによって路面状況や走らせ方によってリアルタイムで最適な減衰力調整がおこなわれる。

昨晩の雨で濡れている路面だけでなく、滑りやすそうな路面状況ではレインモードを選択。
トルクフルかつ十分以上にパワフルであり、そのうえで、ストローク感ある動きの良い足周りが接地感をさらに際立たせる。気温が上がり、路面コンディションが良いワインディングではモードをダイナミックにセレクト。レスポンスが高まったのはエンジンだけでなく、車体もシャキッと締め上げられリニアなフィーリングに変貌。
際限なくどこまでも回り続けそうなエンジンはまるでスーパーバイクレーサーに乗っているかのようなフィーリングを味わえる。
あっという間に国際サーキットでしか出せないような速度域に達する。ライディングポジションがアップライトなため、そのパワフル感はRR以上かもしれない。装着されたウィングレットは200km/hで14kgのダウンフォースを生み出すとのこと。
200km/hオーバーになると、あきらかにフロント周りを空力で抑えてくれている感触がある。STDモデルと同時にテストしたわけではないが、開発者に聞いたところ、誰でもわかるほどの違いがあるとのことであるから、その感覚は間違いではないようだ。凄まじい領域のなかでも快適な空間が確保されているはさすがでもある。
ハンドリングはしっとりと落ち着いた中にも軽快さがあり、気軽にコーナーをクリア出来るイージーさがある。

足まわりに関しては、テスト時間の関係もあり、今回はライディングモードで設定されるデフォルトの仕様で走行した。モードによって設定は異なるが、リアルタイムに減衰力特性がアジャストされるというお任せ仕様であったが、エンジンレスポンスと同調するかのようなフィーリングに不満を感じることは皆無であった。
そのうえで、任意で通常の機械式フロントフォークのように固定で好みの設定をチョイスすることも可能となっているのがM1000XRの凄いところである。
圧側ダンパーを何クリック、戻りを・・・と、よりライダー主体にセットアップ出来る機能も備わっており「いかようにも出来ますよ。」といったパーフェクト仕様なのであった。

3機種目となるMモデルはスーパーバイクを思わせるスポーツ性を持ちながら、これまでで最も汎用性あふれるマシンに仕上げられている。そのハイレベルかつワイドなキャラクターに、あらためてMという凄みを感じたのである。

ディテール解説

S1000XRには搭載されていないS1000RR譲りの可変バルブ機構、シフトカムを装備。9000rpm以下の領域ではローカムが受け持ち、それ以上の回転数。あるいはコンピューターが必要と判断した場合には、ハイカムへの切り替えが行われ、幅広い領域で最適なパフォーマンスを発揮する。最大出力は201馬力とこのカテゴリー最大となるが、出力特性は非常にジェントルでじゃじゃ馬の要素は皆無。ローンチコントロールやピットレーンリミッター等、レースシーンからのフィードバック機能も装備。M1000Rは基本的に同様のエンジンとなるが、M1000RRだけはレース参戦におけるパフォーマンスを最大限に発揮するプロ仕様。
Mコンペティションモデルには軽量なカーボンホイールを標準装備。チェーンは軽くフリクションの少ないMエンデュランスチェーンを採用。ブレーキキャリパーはブルーのアルマイト加工が施されたM専用品となる。
テスト車はカーボンやアルミ製ビレットパーツを多用するMコンペティションモデル。ステップも削り出しで最適なポジションに変更可能と同時に、カッチリとした剛性感とフィット性を提供。もちろんアップ&ダウン対応のオートシフターを装備。
タンデムや積載時と同時に、走り方やシチュエーションに合わせてダイヤルで簡単にイニシャル調整が可能。
BMWモトラッドの多くのモデルで共通となるスイッチ周り。シンプルで操作性が良いのが特徴。なお、ライディングモードはレイン・ロード・ダイナミック・レース・レースプロ1〜3と7つのモードが選択可能。レースプロモードはスロットルレスポンス、エンジンブレーキ、トラコン、ウィリーコントロール、サスペンション設定等、任意で細かいアジャストが可能となる。

BMW・M 1000 XR/主要諸元

エンジン
最高出力:148 kW (201 PS) / 12,750 rpm
タイプ:油冷/水冷4気筒4ストローク並列エンジン
ボア x ストローク:80 mm x 49.7 mm
排気量:999 cc
最大トルク:113 Nm / 11,000 rpm
圧縮比:13.3 : 1
点火 / 噴射制御:電子制御インテークパイプ・インジェクション、デジタルエンジンマネジメントシステム: BMS-O、スロットル・バイ・ワイヤ
排ガス基準:EU 5+
最高回転数:14,600 rpm

走行性能 / 燃費
最高速度:275 km/h 以上
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時):15.38 Km/L
WMTCに準拠したCO2排出量:152 g/km
燃料種類:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)(最大5%エタノール、E5) 98 ROZ / RON 93 AKI

電装関係
オルタネーター:永久磁石オルタネーター 450 W (定格出力)
バッテリー:12 V / 5 Ah、リチウムイオン

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