油冷エンジンのエキスパートが初代スズキGSX-R750(1985年モデル)を現代レベルに完全復活!|モーターサイクルショー2024

1985年に登場した初代のスズキGSX-R750は油冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ749ccエンジン搭載。ボア径70mm×ストローク長48.7mmの超ストローク型の高回転型エンジンは、77ps/9,500rpmを発揮。写真はノーマルの外観キープを重視しつつ、ブレンボ4Pキャリパーや大径ディスクローター、ハイパープロ×m-techのリアサスペンション等々で“現代版解釈”にチューニング。
空前のバイクブームに沸く1985年、スズキは国内のフラッグシップモデルとなるレーサーレプリカ「GSX-R750」をリリース。GSX-R750は市販モデル初の「油冷式」エンジンを採用。初代のGSX-R750は当時の国内最高峰であるナナハン(750ccクラス)ながら、乾燥重量179kgという驚異的な軽さを獲得。人気のテレビドラマ「あぶない刑事」では、舘ひろしさんがよく一般人から拝借していたことでも有名。ここでは東京モーターサイクルショー2024の「m-tech」ブースに出展された、“現代版解釈”でマシン性能を上手に活かすレストア&モディファイを実施した貴重な初代スズキGSX-R750をご紹介しよう。
PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
m-tech https://mc-m-tech.com/

m-tech スズキGSX-R750(1985年モデル)

ノーマルの外観キープを重視しつつ、各部をオーバーホール等で完全復活。足周りはブレンボ4Pキャリパーや大径ディスクローター、ハイパープロ×m-techのリアサスペンションなどを駆使して“現代版解釈”にチューニング。
初代のスズキGSX-R750は油冷4ストローク並列4気筒DOHC 4バルブ749ccエンジン搭載。ボア径70mm×ストローク長48.7mmの超ストローク型の高回転型エンジンは、77ps/9,500rpmを発揮。写真はR750の定番かつ当時から人気だった、白/青のスズキワークスカラー。

空前のバイクブーム&レーサーレプリカブームに沸いた1985年、スズキは国内のフラッグシップモデルとなる生粋のフルカウル付きレーサーレプリカ「GSX-R750」をリリース。世界選手権耐久レースなどで活躍したワークスマシンを集約した同車は、耐久レーサーをそのままコピーしたような、丸目二灯式のヘッドライトを装備した大型のエアロフルカウルを装備。レーサーレプリカの王道を行く、精悍でアグレッシブな正統派レーサースタイルが話題を呼んだ。

GSX-R750は市販モデルとして初の「油冷式」エンジンを採用。油冷式エンジンとは、シリンダーヘッドの裏に1分あたり20Lのオイルを噴射して冷却効果を獲得。冷却用ラジエターや冷却水ホース類、シリンダー内にウォータージャケットなどを設けた複雑な機構の水冷式エンジンに比べ、油冷式は軽量シンプル。しかも当時は空冷より冷却効率が高いというメリットがあった。

同車は水冷式エンジンよりも軽量な、SACS(Suzuki Advanced Cooling System=スズキ・アドバンスド・クーリング・システム)と呼ばれる油冷式エンジンを搭載。また従来のスチールフレーム比で半分以下の8.1kgという、アルミ合金製のマルチリブ・角形フレームを採用。

あらゆる軽量化を試みた初代のGSX-R750は、当時の国内最高峰であるナナハン(750ccクラス)ながら、乾燥重量179kgという、400ccクラス並みの驚異的な軽さを獲得。「ナナハンはヘビーで200kg超えは当たり前」という既存の常識を、見事に打ち破った。

超人気テレビドラマ「あぶない刑事」にも登場! GSX-R750の販売台数も加速的に急上昇

GSX-R750は、当時の人気テレビドラマ「あぶない刑事(1986年10月放送開始)」にも頻繁に登場(※注1)。犯人が車で逃走した時、俳優の舘ひろし扮する鷹山刑事(通称タカ)は警察手帳を見せ、一般人が乗る赤/黒のスズキGSX-R750を半ば強引に拝借。もしくは停車してあったGSX-R750を、所有者の了承も得ず勝手に拝借し、追跡を開始(めっちゃ強引)。

毎度お約束のこのシーンを観て、空前のバイクブームだった当時、「作り話とはいえ、俺なら絶対に貸さん!」 「緊急時とはいえ窃盗だろ?」とツッコミを入れたバイク好きも多かろう(筆者および一緒に観ていた友人は毎回ツッコんでいた。でも1分後には忘れていた。これぞ昭和)。

今では到底考えられない、テレビ局に苦情殺到間違いなし! の荒唐無稽な演出だったが……昭和の時代は、現在の令和とは少々事情が違った(以下に続く)。

※注1:当時、舘ひろしはスズキの四輪「カルタス」のCMに出演。『オレ、タチ(舘)、カルタス!』のキャッチコピー(決してオヤジギャグではない)で話題を呼んだ。「あぶない刑事」でスズキGSX-R750が頻繁に登場したのは、それ以前に舘ひろしが出演していた西部警察で、舘さん扮する鳩村刑事(通称ポッポ/この通称は鳩ポッポから。決してオヤジギャグではない)がスズキGSX-S1100カタナ改に乗車していたこと。スズキカルタスのCMに出演していたこと。スズキが番組スポンサーだったこと。劇中のGSX-R750はスズキから舘さんに贈られたものだったことなどが理由だと考えられる。
超人気テレビドラマ「あぶない刑事」において、舘ひろし扮する鷹山刑事(通称タカ)は、時々“他人の所有物”である写真のGSX-R750(黒/赤ツートン)を拝借し、犯人を追跡していた。

タカのように颯爽(さっそう)とGSX-R750に乗りたいがため、試験場には受験者が殺到(放送当時、現在の大型二輪に該当する限定解除は、教習所で取得不可だった)。番組効果でGSX-R750の売り上げは大幅に向上した。

タカはGSX-R750を駆り、トレードマークであるサングラスをかけ、そしてスーツ姿でネクタイをなびかせ、テレビ番組とはいえ今では決して許されないノーヘル(ヘルメットなし)で一般道を爆走。コーナリング時は、映画「ミッションインポッシブル」のトム・クルーズ。とまではいかないまでも、適度にハングオンを決めていた(若き日の舘さんは、ほぼスタントなしで自走)。

また犯人の車が突如スピンターンして方向転換し、正面から突っ込んでくる時には、犯人の車を目掛け、両手放しで拳銃を乱れ撃ち(※注2)。イマドキのコンプライアンスなど、当時はもちろん一切関係なし。常識なんて一切無視。フィクションなんだから何でもあり。細かいことなどクソくらえ。良い時代だったなぁ……と懐かしく思う人も多いはずだ。

なおGSX-R750の国内仕様車は1998年モデルまで、海外仕様車は2018年モデルまで生産された。

※注2:「両手放しで拳銃を乱れ撃ち」はバイクを駆る、舘ひろしの刑事物アクションのお約束であり真骨頂。筆者的には、これなしに舘ひろしは語れない。「西部警察パート1(ハーレーダビッドソンFXS1340を駆る巽刑事・通称タツ)」や「西部警察パート2(スズキGSX-S1100カタナ改を駆る鳩村刑事・通称ポッポ)」のオープニング映像でも、両手放しで拳銃をぶっ放し! ゴルゴ13の実写版のような渡哲也(大門部長刑事)。白いフェアレディZの屋根に乗せられ、恐怖におののいた表情で振り落とされそうになっている新人時代の峰竜太(平尾刑事)。人通りが多いと思われる真っ昼間の繁華街で、しかも上半身裸という普通じゃない格好で「ゼヤァァー!」と絶叫し、チンピラ相手に豪快な後ろ回し蹴りを繰り出す御木裕(北条刑事)も一興。石原裕次郎(小暮捜査課長)がフルオープンの日産ガゼールに、ドアを開けず運転席へと飛び乗るシーン(プシュゥゥゥー! という風切り風の効果音あり)も昭和エキス満載。「カッコつけず普通にドアを開けて乗ったほうが早くて安全」「中年のオッサンがあんな無茶したら腰や肩を痛めるので危険」「二宮係長版も見てみたい」などと思わんでもないが、あらためて見返すと昭和の男たちは確かに暑苦しいが結構カッコ良い。
西部警察PartII OP

スズキGSX-R750(1985年モデル) 主要諸元

全長 (mm)2111
全幅 (mm)745
全高 (mm)1205
ホイールベース (mm)1430
最低地上高(mm)120
シート高 (mm)765
乾燥重量 (kg)179
乗車定員(名)2
原動機型式R705
原動機種類4ストローク
気筒数4
シリンダ配列並列(直列)
冷却方式油冷
排気量 (cc)749
カム・バルブ駆動方式DOHC
気筒あたりバルブ数4
内径(シリンダーボア)(mm)70
行程(ピストンストローク)(mm)48.7
圧縮比(:1)11
最高出力(PS)77
最高出力回転数(rpm)9500
最大トルク(kgf・m)6.4
最大トルク回転数(rpm)8000
燃料供給方式キャブレター
燃料タンク容量 (L)19
エンジン始動方式セルフスターター式
点火装置フルトランジスタ式
点火プラグ標準搭載・型式D8EA
点火プラグ必要本数・合計4
搭載バッテリー・型式YB14L-A2
エンジンオイル容量※全容量 (L)5.0
クラッチ形式湿式・多板
変速機形式リターン式・6段変速
変速機・操作方式フットシフト
1次減速比1.744
2次減速比3.000
変速比1速 2.769/2速 2.062/3速 1.646/4速 1.399/5速 1.226/6速 1.095
動力伝達方式チェーン
スプロケット歯数・前14
スプロケット歯数・後42
チェーンサイズ530
標準チェーンリンク数110
フレーム型式ダブルクレードル
キャスター角26°00′
トレール量 (mm)26
ブレーキ形式(前)油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式(後)油圧式ディスク
懸架方式(前)テレスコピックフォーク
フロントフォークタイプ正立フォーク
懸架方式(後)スイングアーム式
ショックアブソーバ本数(後)1
タイヤ(前)110/80-18
タイヤ(前)構造名バイアス
タイヤ(後)140/70-18
タイヤ(後)構造名バイアス
ホイールリム形状(前)MT
ホイールリム幅(前)2.5
ホイールリム形状(後)MT
ホイールリム幅(後)3.5

GSX-R750を知り尽くしたヨシムラテクニカルショップ「m-tech」が細部まで徹底的にレストア

豊富な経験と知識、技術力を最大限にフィードバック。細部まで丁寧に、しかも確実にレストアを実施。

写真は国内メーカーはもちろん、外国車の車両修理や車検、ワンオフパーツ製作なども手掛ける京都市のバイクショップ「m-tech」が復活させた、新車のような美しいスズキGSX-R750(1985年モデル)。

m-techは関西では唯一のヨシムラテクニカルショップ。「ヨシムラテクニカルショップ」とは、レースで活躍するヨシムラジャパンの商品に関する確かな技術とノウハウを持った信頼のショップ。ヨシムラジャパンの商品の性能をフルに引き出すとともに、ユーザーに正しい扱い方をアドバイス。チューニング、セッティング、メンテナンス、オーバーホールのアドバイスと作業などを、ヨシムラジャパンが認めるレベルで実践しているのがポイントだ。

ヨシムラジャパンのワークスマシンの代表格といえば、何といってもスズキのGSX-Rシリーズ。なお写真の初代GSX-R750は、鈴鹿8時間耐久レースのヨシムラワークスマシンのベース車両にもなったモデル。

ヨシムラテクニカルショップであり、スズキの油冷エンジンやGSX-Rシリーズを知り尽くしたm-teckにより、“現代版解釈”でマシン性能を上手に活かすレストア&モディファイを実施。細部まで抜かりなく、徹底的に仕上げられている。

スズキGSX-R750(1985年モデル) レストアのメニュー(一部抜粋)

Fフォークアウター再研磨・再コート(セラコートクリア
復刻デカール(m-techリプロ品)
インナー再メッキ
Rサスペンションハイパープロ×m-tech SPL 4044-01AP
Rサスリンクm-techリプロ品にてオーバーホール
Fブレーキm-techキャリパーサポート
ブレンボ4Pキャリパー
SSディスク
NISSINマスターシリンダー/GOODRIDGE build a line
Rブレーキブレンボ SERIE OROディスク
シャフトm-techクロモリシャフト(フロント/リア/ピボット)
駆動系ISAスプロケット/DID ZVM-Xチェーン
タイヤブリヂストン BT46
エンジンオーバーホール
WPC/DLC各部表面処理
m-techカムチェーンテンショナーアジャスター
m-tech/β-チタニウムヘッドカバー
エンジン外観m-tech調色ガンコート
フレーム腐食研磨・再コート(セラコートクリア)
スイングアーム再研磨・再コート(セラコートクリア)
SUSチェーンプラー(m-techリプロ品)
ハンドルバーエンドm-techリプロ品
計器類メーターリビルド
スピードメーターケーブル/スポンジ(m-techリプロ品)
電装系メインハーネス(m-techリプロ品)
点火系ASウオタニ
充電系ICレギュレーター・ブラシホルダー(m-techリプロ品)
バッテリーAGM構造ジェル状バッテリー
外装リペイント
各パーツリペイント(パウダーコート・ガンコート)
各ステーボルト類、再メッキ
m-tech・3D-Labo
(参考出品)
ハーネスダストカバー
インシュレーター
スロットルバルブ
東京モーターサイクルショーの「m-tech」ブース。

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