スズキGSX-R125が国内で発売されたのは2017年のこと。翌年にはABSを装備するが、その性格は軽く小さな車体からピュアスポーツとして印象が強い。スズキらしい振り切った性格のバイクだといえる。それに対して2023年に発売されたヤマハYZF-R125はひと回り近く大きな車体でピュアというよりスポーツツアラー的な要素を含んだモデルだといえる。発売年が6年も違うため直接比較するにはGSX-R125が不利だが、どちらもフルカウルとセパレートハンドルを備えるスポーツモデルであるため誰の目から見てもライバル関係だといえる。すると気になるのが乗り比べてどう違うのかということ。そこで今回は実際に乗り比べた印象を紹介しよう。
例によって今回もYOUTUBEで動画を無料配信しているモトチャンプTVにアップされた動画「125スーパースポーツがガチンコ対決! それぞれのスポーツ性を解き明かす!」という回をダイジェストにまとめたもの。2023年末に公開された動画なので、すでに7万回以上もアクセスされているからご覧になった方もいるかもしれないが、改めて125ccスーパースポーツのライバルを比べるとどう違うのか紹介しよう。
モトチャンプ編集長のチャボが司会進行役なのはいつもの通り。2台を比較試乗するにあたりジャーナリストのケニー佐川と中村友彦の両氏を招いて構成されている。まず違いを知って驚くのが車両重量。軽量コンパクトなGSX-R125だからYZF-R125が重いのは当たり前なのだが、その差はわずかに4kgでしかない。車体は大きなもののアルミ製スイングアームやデルタボックスフレームを採用することでYZF-R125は軽量に仕立てられているのだ。
車体は当然のようにYZF-R125が大きく、またシート高も高め。これは現在のスポーツバイク全般的な傾向かもしれない。GSX-R125があまりにコンパクトだということで、その印象はレーサーのようでもある。車体だけでなくタイヤサイズもGSX-R125は細い。YZF-R125が前100/80-17・後140/70-17であるのに対しGSX-R125は前90/80-17・後130/70-17と1サイズ細いのだ。YZF-R125よりGSX-R125は25mmもホイールベースが短いことと合わせて、いかにクイックな旋回性を狙っているかがわかる。
実際にライダーがまたがると、その印象は際立つ。ケニー佐川がまたがるYZF-R125は普通のスポーツバイクらしい眺めなのだが、中村友彦がまたがるGSX-R125はミニバイクのように小さく見える。逆にYZF-R125が125ccらしくない車格ともいえるだろうか。それなのに大差ない車両重量というのは、設計年度の違いかもしれない。
装備面も大きく異なりYZF-R125はフロントに倒立フォークを採用するほか、トラクションコントロールを装備しておりセパレートハンドルとはいえポジションは高め。ゴージャスな印象すらあるYZF-R125だが、それはモノクロ液晶によるデジタルメーターにも表れている。YZF-R125ではTRACKモードが選択できるのだ。サーキット走行時に楽しめるようエンジン回転数が6000rpmから表示されるようになり、ラップタイムを計測することも可能。これも新しいモデルの優位性だろう。
エンジンはどちらも水冷単気筒4バルブで最高出力も同じ15ps。だが、GSX-R125は動弁機構がDOHCであり最高出力発生回転数も10500rpmと高い。明らかな高回転型エンジンだといえる。それに対してYZF-R125はSOHC4バルブであり可変バルブ機構であるVVAを備える。低中回転と高回転でカムシャフトを切り替え最適なバルブタイミングが得られるようにされている。これにより低中回転域での豊かなトルク特性と高回転での弾けるパワーを両立している。そのため試乗後の印象が意外なことになったのだ。
ミニサーキットで比較試乗!
ミニサーキットでの比較試乗はケニー佐川と中村友彦が2台を乗り換えて交互に走らせている。2人とも2台を直接乗り比べることで、どう違うのかを探ったのだ。事前にGSX-R125はレーサーレプリカのように尖った存在であり、軽量コンパクトなこともあってサーキットでは有利と思われた。ところが比較しながら試乗してみると、意外にもYZF-R125が圧倒的に有利ということが判明した。
YZF-R125の速さの理由はやはりエンジンとサスペンション。ひと回り太いタイヤサイズでありトラクションコントロールを備えることから、ブレーキングから倒し込みにかけての不安感がなく、イージーに曲がってくれるし旋回中の安心感も高い。いわば誰が乗ってもそれなりに速い速度で旋回できてしまう。対してGSX-R125はブレーキングポイントや倒し込みのタイミングをライダーが積極的に考えてアクションを起こさないといけないシビアさが求められる。とはいえYZF-R125だと膝を擦るようなコーナーでGSX-R125はコンパクトな車体を生かして膝を擦るところまで倒さなくてもクイックに曲がってくれる。操る楽しさはGSX-R125かもしれないが、より速く走らせるならYZF-R125という結論だ。
舞台がミニサーキットだったこともあり、今回はYZF-R125の低中回転からのトルク特性が有利に働いた。ヘアピンや最終コーナーなどからの立ち上がりで両車の差が広がっていく。これは両ライダーともに感じた点であり、エンジンが高回転型のGSX-R125は回転数が下がった状態だとトルクが低いのだ。それゆえ立ち上がりからの加速で引き離されてしまうが、直線が続けば続くほどYZF-R125に追いついてくれる。もっと速度が乗るサーキットだと印象は変わるかもしれないが、今回は二人ともYZF-R125の速さに驚くこととなった。乗る前の思い込みが裏切られた形でバイク、それもライバル関係にあるモデルは乗り比べてみないとわからないものなのだ。