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アウトドア感を高めた“VESGRIDE”シリーズ
“アドベンチャー”というジャンルが定着した背景にはロングツーリングやレジャーを楽しみたい、という意識がある(はず)。バイクに限らずここ数年は第二次キャンプブームが到来し、登山や釣りなどアウトドアが旺盛で、こういった外遊びの趣味とバイクを掛け合わせて楽しんでいるライダーも多いと思う。
今回紹介するのは異色のアドベンチャー「VESGRIDE-hygge(ベスグライド ヒュッゲ)」だ。製作したのは千葉県のソニッククラフティで、高い技術力とセンスを生かし、スクーターをはじめ、様々な車両で画期的なカスタムを手掛けてきた。この新作は同社のオリジナルコンプリートマシン“VESGRIDEシリーズ“の第3弾にあたる。VESGRIDEはざっくり言えば、アウトドアの要素を取り入れた実用的なマシンだ。なお“hygge(ヒュッゲ)”とは、デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」の意味。
第1弾はビッグスクーターのホンダフュージョン(写真)、第2弾、FLIPはビジネス用途のタフなベンリィ50/110と、いずれもスクーターを下敷きにしていたが、今回はホンダのヒット作、レブル250がベースとなっている。
乗りやすさを重視する新しいアドベンチャーの形!
アドベンチャーモデルは走破性が高く、ある程度ロングランも快適に走れるように設計されているが、大きなデメリットも・・・・・・。それはシート高の高さ=足つき性に難があることだろう。立ちゴケの心配はもちろん、必然的に重心が高くなるのもネックだ。アドベンチャーのジャンルには小型車も揃うけれど、主流はミドル~リッタークラスなので車重も重くなりがちで、人(体格など)によってはこのネガな部分が強調されてしまうことも多い。
そこでソニッククラフティが目を付けたのがレブル250(MC49)だ。約690㎜の低シート高かつ、スタイリッシュな外観も相まって老若男女問わず支持を得ている。2018年の登場以来、6年連続でクラストップのセールスを見ればその人気の高さが伺い知れる。
ソニッククラフティ代表の木下氏によると「レブル250は足つきが良いので女性や小柄な人にも最適です。また最低地上高もそれなりにあるので、オフロードバイクまでとはいきませんが、ちょっとした林道や未舗装路でも問題なく走れると思います」とのこと。確かにレブル250の最低地上高は134㎜あり、一部フルカウルモデルやネイキッド、ビッグスクーターと同等だ。
前後パイプで6か所の積載スペースを確保!
さて前置きが長くなったが、VESGRIDE-hyggeのディテールを見ていこう。前後に大きなパイピングが追加されて無骨な印象に仕上げられている。φ32㎜のスチールフレームにパウダーコーティングが施されて高級感もたっぷり!
これはアドベンチャーモデルとして「積載力」を高めるものだ。リヤ/フロントキャリアに加えて、前後の両サイドにパニアケースサポートを設けて計6か所の積載スペースを確保。前側にパニアケースを付けるという発想がユニークだ! また全10カ所にシステムナットを採用しており、別途サーフキャリアやスケートボードなどを設置することも視野に入れている。
モールシステム対応のファブリックを採用
さらにフロント側を見ていくと両サイド面にカバーが設けられているのがわかる。これはタフな“コーデュラファブリック”を採用しており、バイクカスタム=メタルパーツという概念を払拭。単色以外にカモフラ柄やboras cotton(ボラスコットン)の北欧テキスタイルでファッションナブルに仕上げることも可能だ!
このファブリック部分にはテープが配された“モールシステム”を採用しており、ポーチやドリンクホルダー、カラビナなどを自由に取り付けてアレンジすることができるのもアイデア。バイクだけでなくアウトドアやスケートボードなど多ジャンルに精通する木下氏ならでは要素と言える。この“フロントサイトテキスタイル”は別途1万9800円~のオプション設定。
その作りも確かなもので、機能性としては車体側(メインフレーム)からフロントパイプを伸ばしているため、ヘッドライト上部やフロントフェンダーマウントとは異なり、ハンドリングに影響しないのも特筆点。これは多くのフルカウルスポーツや一部ビキニカウル装着車も同じだし、キャリアという点で考えればモトラに近い。パイプフレームむき出しの無骨な雰囲気はこのベスグライドシリーズと通ずる部分も多く、よりアウトドアレジャー感を高めるのに一役買っている。
安全性も考慮した設計!
さらにトップパイプとアンダーパイプの2ピースとすることで、万が一の転倒の際にダメージを極力抑えているのもポイントだ。倒れた際に真っ先に破損するウインカーも前方向に移設しており、メインパイプに影響が出ないようステー部分が根本で折れるように仕向けている。
「転倒するとどうしても修理代がかさんでしまいがちです。ピースごとに分割することで最低限で修復できるようにしています。また、このようなパイピングを施すにあたり“安全率”も考えました。例えばライダーが衣服や手足を引っ掛けにくいよう隙間を狭くしてスリムに仕上げています」と木下氏。
またアールを大きく描き、丸みを帯びさせているのも衝撃の緩和が狙いで、人や対象物に対しての配慮だ。スクエアパイプや鋭角な角度で作れば、よりスタイリッシュになるけれど事故の際などに大きく影響を及ぼす危険性もある。
リヤ側は純正フェンダー&タンデムシートを除き、フロント側との整合性を図りながら2点(計4点)支持のスチール丸パイプを中心にフェンダーを内蔵したものに入れ替えられている。見た目こそノーマルと大きく違えど、後付けのキャリアとは異なりシルエットを崩していない。もちろん前後ともに純正フレームを加工していないのであしからず。タンデムするならキャリア部分にピリオンシートを追加するのもありだ。
パイプカラー&シート表皮で200以上のバリエーション
シートの話が出たところで、VESGRIDE-hyggeは他のコンプリートマシン同様、40種類ものシート表皮が選べるのも見どころ。大きく分けると黒系、茶系、ベージュ系、グレー系の4種でパンチングやカーボン調、シボ具合が異なるものなど好みでチョイスできるうえ、オプションで迷彩や蛇柄、タータンチェックなどの柄モノも用意している。
追加フレームパイプのカラーも、マットブラック、マーペラオリーブ、ブルーイッシュグレー、ヒエッカベージュ、オーレンスブルーの5色を展開しており、その組み合わせは200種類以上! ベース車のレブル250(’24モデル)はSも含めて5カラーあるので1000パターン以上ということになる。
木下氏は「VESGRIDE-hyggeは誰でも安心して旅に出られる、新しい形のアドベンチャーバイクです。キャンプツーリングはもちろん、通勤・通学、レジャーなどフレキシブルに、楽しく使ってもらえれば幸いです!」と語ってくれた。先述した通り、同社の“腕”と“センス”は間違いないので、ここから独自に発展させるのも良いだろう。自身のアイデアを具現化してくれる稀有な存在で、非常に頼りになる。
使い方次第で、お値段以上の魅力が得られる!
というわけで、気になるお値段だが車両本体価格115万5000円(レブル250Sベースは119万3500円)。リーズナブルとは言えないが、スマートに積載力を高められることを考えれば、そのコスト分だけのパフォーマンスは得られるはず。
今のところ新車コンプリート販売のみだが、今後はパーツ販売なども検討しているという。レブル250はすでに多くのユーザーがいるため、アフターパーツ&カスタムとして対応してもらえるならありがたいし、レブルオーナーだからこそこのVESGRIDE-hyggeの魅力に気づくことも多いだろう。
私的には、前後サスペンションを長めに取ってリフトアップしつつ、セミブロックパターンのタイヤを組んでよりアドベンチャー感を高めたい! と思いつつ、「それってCL250じゃないか!?」って言っちゃうのは野暮なのでスルーしよう(笑)。
【CUSTOM SAMPLE】エレガントなレザー使い!
こちらはVESGRIDE-hyggeをベースに、「three2four(スリートゥーフォー)」の本革を使ってシートを張り替え、タンクカバーも設けたカスタムマシン。シート内部にはウレタンスポンジを仕込んで長時間走行にも対応させている。
この上品なレザー使いもさることながら、リヤキャリアやフックなどを追加してユーティリティを向上している。アップフェンダーやホワイトのタイヤレターもストリート風でスタイリッシュ!
■Sonic Crafty (ソニッククラフティ)
■千葉県八街市八街は97-117
■Tel:043-305-5123
■URL:https://sonic-crafty.com/