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筋肉質なスタイリングデザインに力感、安定感を見事に表現
前後に装着された極太タイヤがドッシリとした安定感を印象付けています。しかもブロックタイヤを履いているので、オフも行けるのか?と思わせてくれます。そんなマスティフ250はストリートスクランブラーのイメージで仕上げられているのではないかと思いました。
ブラックリムのスポークホイールを採用している点、艶消しアルミニウムマッドガード、ヘッドライトグリルの装備など、どれもがダート走行に対応した仕様となっています。
スクランブラー風のそんなスタイリングだけでも高い存在感を放っていますが、さらにマットグリーンのカラーリングにエイジングブラウンのダイヤモンドステッチシートを組み合わせ、ミリタリースタイルとしているのも特徴的です。結果として、武骨でレトロなストリートスクランブラーを実現しているのです。
ちょっと高めの車高がオフテイストを実感させる
クロスステッチをあしらった美しい仕上がりのブラウンシートに跨ると、178㎝の僕で両足を着けてかかとが浮く程度です。前後に120/90-18インチの極太タイヤを履いていることもあって、シート高は810㎜となっているのです。しかも、シートに腰を下ろした状態、いわゆる1Gのときに前後サスペンションの沈み込みがほとんどないため、足つき性は良くありません。まあダート走破性を考えればこのくらい高めのほうが適しているのかもしれません。このように足は着けにくいのですが、車重は同クラスのオフロードモデルよりも軽い130㎏に抑えられていますので不安はありません。
ポジションに関しては、直立した上体となるためなじみやすく、着座位置の自由度も大きいので、体格が大きなライダーが乗車しても窮屈に感じることはないと思います。ステップも適切な位置にあるので、下半身の収まりが良く、ニーグリップもしやすいと感じました。体に力の入らない良好なポジションを実現しているので、街乗りに違和感がないし、ツーリングにも十分に適応してくれるはずです。
ただし、ブレーキ、クラッチともにレバーとグリップとの間隔が広いため、手の小さな人には操作がつらいと感じるかもしれません。とくに冬場に厚手のグローブを装着したときには、なおさら操作しづらいと思います。
足つき性(ライダー身長178cm)
フラットな特性のシングルエンジンは穏やかな気分で走行させる
ボディスタイリングは逞しいが、搭載するエンジンは、空冷4ストロークSOHC2バルブシングルと至ってシンプル。インジェクション採用の空冷シングルはユーロ5に適合させています。最高出力17.2hp、最大トルク18Nmと動力性能はかなり控えめ。しかし考えようによっては、日常域で性能をフルに引き出して走ることも可能で、ストレスフリーなモデルだともいえます。
ショートマフラーから迫力あるサウンドを響かせて走り出すと、低回転でややトルク不足を感じますが、全体にフラットな特性で、回転の上昇に見合った加速を示します。パンチ力こそありませんがどの回転域でもスムーズなスロットルレスポンスを見せるので、だれにでも扱いやすいエンジン特性になっています。
わずか249㏄のベーシックな空冷シングルエンジンはたしかに、パフォーマンスを楽しめるところはありません。しかし気負わずに走行させてくれるし、60km/hが制限速度の市街地や一般道では、スタートダッシュで出遅れることもないですし、流れをリードすることだって可能です。
ワインディングの急な登りや高速道路では余裕を持った走りはできないかもしれませんが、あくまでもストリートモデルとして一般道を走行している限り、力不足を強く感じることはないと思います。
ワイドタイヤによる高いグリップ性と安定感ある走りが特色
120サイズのワイドタイヤはティムソンのオールラウンドトレールタイヤを装着しています。見てのとおりブロックパターンを採用していますが、オンロードでの高いコントロール性も両立させているので、舗装路中心の市街地でもグリップ性にはまったく不足はありません。また、ツーリングなどでダートに乗り入れる場面でも不安なく走破できます。
このようにグリップ力の高いワイドタイヤを履いているため、バンク操作に粘りのあるハンドリングとなっています。言い方を変えると、やや重ったるい感じの操縦性です。しかし実際に交差点などでの右左折で向きが変えにくいとか、ラインが大きくなってしまうようなことはありません。もちろん適切なスピードで走行した場合の話ですけど、エンジン特性に見合った穏やかな走り方さえしていれば、行きたい方向にしっかりと向きを変えられます。
一方、乗り心地に関しては、レトロでかっこいいブラウンのシートはクッション性には乏しく、硬い座り心地です。加えて前後サスペンションの動きも硬く、かなりゴツゴツした乗り味になっています。それもカスタムバイクの味と捉えることもできますが、長く乗り続けようとするならやはり、サスペンションには手を加えてあげたほうが良いと思います。クッション性、吸収性が良くなれば快適性がアップするだけじゃなく、オンオフ問わず運動性は一段と良くなるはずです。
ABS装備の前後ディスクブレーキについては、先述したように、エンジンに見合った穏やかな走行をしている限り、制動力に不足はありません。
スクランブラー的な要素が組み込まれているマスティフ250は、クールなカスタムモデルとしてストリートを駆けるには十分な実力を備えています。一方で、流行りのキャンプツーリングにも似合うモデルじゃないかとも思いました。