英国ストリートカルチャーをイメージしたストリートトラッカー、ブリクストン・フェルスベルグ250FTはどんなマシンなのか

ブリクストンはヨーロッパ最大のモーターサイクルディストリビューターであるオーストリアのKSRグループが展開するオリジナルブランドだ。
2018年のECMAでお目見えしてからは、イギリスのストリートカルチャーをイメージしたバイクを次々とリリース。現在は空冷125シングル、水冷125シングル、空冷250シングル、水冷500ccツイン、水冷1200ccツインのエンジンをラインナップするまでになった。今回紹介するフェルスベルク250FTはビンテージスタイルのストリートトラッカーである。

 

ブリクストン・フェルスベルグ250FT……720,000円(消費税込み)

ストリート系のカスタムスタイルをイメージしたデザイン。ワイヤースポークホイールにブロックタイヤ、倒立のフロントフォークという組み合わせ。

アルミのカバーやステンレスを輪切りでつないだサイレンサー、ゼッケンをイメージしたサイドカバーなどが個性的な雰囲気を醸し出しているが、ハードにダートを走ったりするのではなく基本的には気軽にストリートを楽しむためのバイクだ。

 

低中速で力強いエンジン

フェルスベルク250FTの魅力は空冷の単気筒エンジンだ。低回転からトルクフルで6000rpm位までが力強いからストリートではとても楽しく走ることができる。ワイド気味な5速ミッションはこの特性にマッチしていて、忙しくシフトすることなくイージーな走りができる。その反面、高回転はあまり得意ではない。回転が上がると振動が少しずつ増えてくるし重々しい周り方になってくる。ストリートであればこのエンジンの得意な回転域だけで十分楽しく走ることができるから、むやみに回したりせず、ゆったりと走るのがいい。

実はこのバイク、スロットル開度がとても大きくて全閉から全開まで90度以上ある。普通の感覚でスロットルを開けると、全開にしたつもりでもストッパーに当たるまで開いていないことがほとんどなのだが、仮にストッパーが当たるまで開けたところで加速感はほとんど変わらない。試乗しているときもスロットル回度の大きさが気になることはなかった。

リア荷重高めの車体

ハンドリングは独特である。ステアリングに少し力を加えると、バイクのほうから勝手に倒れ込んでいくような感じでバンクしていき、この車体の動きを追いかけるようにステアリングの舵角がゆっくりついていく。これは車体のディメンションだけでなく、ライダーの着座位置が後ろであることも影響しているようだ。更にリアサスが柔らかめの設定なのでリア下がりの姿勢になっていることも関係しているだろう。フロントの荷重が低くなっているのである。スポーツバイクなどとは真逆なので、ライダーによっては違和感があるかもしれないが個人的には好みの性格だ。

柔らかいリアショックを調整すれば、この傾向はある程度補正できるだろう。現状だとライダーが跨っただけでずいぶんリアショックが沈んでしまう。ストリートを普通に走っていてもギャップで底突きしてしまうことがあるくらいなのである。リアサスのプリロードの調整幅がとても広いので、プリロードを多めにかけるだけでもハンドリングや乗り心地がは変わるはずだ。今回は調整するツールがなかったのでトライすることができなかったが、今後機会があったら確認してみたいところである。

もう一つ気になったのはフロントブレーキの利きが良くなかったこと。パッドのアタリが出ていなかったのか(走行距離は約500kmだったが)、意識してフロントブレーキを強く使いながら走っていたら徐々に利くようになってきたが、それでも標準なレベルからすると制動力は高くなかった。対してリアブレーキはタッチが鋭いので、少し力を入れたつもりなのにロックしてABSが作動してしまうことがあった。ABSが作動した時は何かが振動しているような作動音がしていたが、作動性自体は特に問題なかった。

ライトなオフロードならこなせる

せっかくオフロードタイヤを装着しているので、林道も少し走ってみることにした。オフロードでは下からトルクのあるエンジンが威力を発揮。低回転からでも力強くレスポンスしてくれるのは助かる。滑りやすい路面だとスロットルの開け方に気を使う必要があるくらいだ。大きなスロットル回度は、レスポンスをおだやかにしようとする考えがあったのかもしれない。

着座位置が後ろだから、オフロードでシートにどっかり座っているとフロントに荷重がかけられない。特に登り坂で加速するときはフロントの方向性が定まらずにフラフラしてしまう。逆に下り坂はシートに座ったままでもフロントがしっかりとグリップしてくれる。

ステップが前にあるので、スタンディングをするとフロントの荷重が一気に増して登りでも乗りやすくなるから、オフロードでは基本スタンディングしたほうがいい。ただしタンクの側面がフラットなので体がホールドできず、ハンドルに力がかかってしまう。もしもオフロード走るのであればタンクラバーをつけるとずいぶん走りやすくなりそうだ。
ちなみに倒立フォークとタンクが鑑賞してしまうためにハンドルのキレ角は少ない。狭い道でのUターンは切り返す必要があった。

そんな感じで細かく見ていくと気になるところはいくつかあるのだが、このバイクで色々と突っ込むのも無粋な感じがする。低中速から力強いエンジン特性と雰囲気を楽しみながらノンビリ走るのなら、なんの不満もないし十分に楽しい。しかも多少のオフロードだったら踏み入っていくことができる。肩肘張らず、色々なことをライトに楽しむことができる。それがこのバイクの魅力なのである。

ポジション&足つき(身長178cm 体重74kg)


基本的にはストリートトラッカーで良く見られるアップハンドルのリラックスしたポジションなのだが、着座位置が後ろでステップ位置は相対的に前にある感じ。ハンドル位置も高いのだが、座る位置の関係でほんの少しだけ前傾になるような雰囲気だ。

足つき性は良好。車体がスリムだからバイクを支えるのは苦労しない。

ディテール解説

フロントフォークは倒立。ホイールサイズは2.50✕18で100/90-18サイズのブロックタイヤを装着する。
ステンレスを輪切りにしてつないだサイレンサー。カスタムメイドなイメージだ。
リアキャリバーはスライドタイプの2ポット。ディスクはΦ220mmでABSを装備している。
フロントブレーキはΦ276mmディスクにスライドピンタイプの2ポットキャリパーを組み合わせる。ABSも装備している。
オフロードを意識したステップ形状
リアサスペンションはリザーバータンク風ツインショック。調整リングを回すことでイニシャルを無段階で調整することができる。
エンジンは空冷 4ストローク 単気筒 SOHC 4バルブで排気量は249cc。最大出力は12.6kW/7500rpm、最大トルクは16.5Nm/6500rpmを発揮する。
シート高は750mm。座り心地は良好だ。
タンク容量は14.5リッター。ガスキャップはアルミで作られている。
右のスイッチボックスはライトスイッチ、ハザード、セルスイッチを装備。ブレーキのマスターシリンダーは1970年代国産車を彷彿させるデザイン。スロットル回度は大きめ。
ハンドルバーにUSB電源のソケットが装備されている。
オフロードを意識したバーハンドル。ストリートでバイクを操作しやすい形状だ。
小型のテールランプとウインカー。
ヘッドライトはカバーで覆われていてレンズにロゴを配置。ブリクストンのバイクであることを主張している。

主要諸元

【 エンジン/トランスミッション 】
エンジン型式 空冷 4ストローク 単気筒 SOHC 4バルブ
最高出力 12.6kW/7500rpm
最大トルク 16.5Nm/6500rpm
トランスミッション 5速マニュアル
点火方式 ECU
排気量 249cc
【 シャーシ 】
フロントブレーキ 油圧ディスクブレーキ デイスク径Φ276mm ABS付き
リアブレーキ 油圧ディスクブレーキ ディスク径Φ220mm ABS付き
フロントサスペンション 倒立テレスコピックフォーク
リアサスペンション ツインショックアブソーバー
フロントタイヤ 100/90-18
リアタイヤ 120/80-17
フロントリム/リアリム フロント:MT 2.50×18 / リア:MT3.00×17
【 車体サイズ 】
全長×全幅×全高 2050×850×1120(mm)
シート高 750(mm)
ガソリンタンク容量 14.5L

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