クラシックフォルムに現代的動力性能を注入したダートラスタイルロードモデル

DRK-01の250ccモデルはマットモーターサイクルズ最強マシンだった!

60から70年代のクラシックモデルをデザインモチーフとしてカスタマイズされたマットモーターサイクルズのバイクは、空冷シングルエンジンを心臓部に据えているのがひとつの特色です。しかしDRK-01シリーズだけは水冷シングルに6速ミッションと現代的なパワーユニットを搭載しています。当然のことながら動力性能は高く、中でも250㏄モデルはマットモーターサイクルズ最強のスポーツモデルとなっています。どんな走りを見せてくれるのか、市街地から郊外を駆けてみました。

写真:徳永茂
協力:MUTTモーターサイクルズ https://www.muttmotorcycles.jp/
   MUTT東京セントラル http://mytec-realize.com/mutt/

メーカー希望小売価格(消費税込み):849,200円

ダートラマシンをイメージさせるシンプルなデザインはどんなシーンにも似合う

マットモーターサイクルDRK-01……849,200円

クラシカルな雰囲気と現代的な要素が見事に融合したスタイリングデザイン。DRK-01は新旧が共存したバイクだという印象を受けました。スタイルの基本的な構成はダートトラックレーサーで、かなりシンプルなフォルムとしています。外観にハデさはないのですが、普遍的なスタイリングにはたしかな存在感があります。乗る人の年齢や性別を問いませんし、流行に左右されないから長く乗り続けても飽きがこないのもこうしたシンプルで普遍的なバイクの良さだと思います。
それだけじゃありません。DRK-01はボディの上半分はスリムでシンプルなのですが、下半分、つまり足回りを見ると非常にボリューム感があるのが特色です。ホイールはスポークリム式なのですが、そのリムは SAW-TOOTH(鋸歯)と呼ばれる特徴的なデザインで、歯の部分にスポークがジョイントされています。前後18インチのそのリムには120/90と極太のチューブレスブロックタイヤが装着されているのです。 結果的にスポーティで安定感のあるスタイリングを構築することになったのです。
足回りでのアピールポイントは他にもあります。ひとつは倒立フロントフォークの採用です。60から70年代のモデルをモチーフにカスタムされているマットモーターサイクルズのバイクは、一般的な正立フロントフォークが採用されています。中にはフォークブーツを装備するモデルもあります。ところがDRK-01だけは現代的な倒立フォークを装備しています。さらにフロントディスクブレーキにもラジアルマウントキャリパーが装備されているのです。こうした足回りから、かなりスポーティな走りを意識してしまいます。

やや後退したステップがスポーツ性の高さを主張している

セミアップのパイプハンドルを装備したボディは、その外観からも理解できるようにアップライトで自然なライディングフォームを実現してくれます。硬質なシートの座り心地はゆったりと乗るタイプじゃありませんが、滑りにくい素材が表皮に使用されているので、スポーツライディングするには適している印象を受けました。
シート高は795㎜で決して低い数値じゃないのですが、1Gでの前後サスペンションの沈み込みがあまり大きくない割には、それほど高い印象はありませんでしたし、乗降性に不備も感じませんでした。ステップ位置は後退しているとはいえスーパースポーツほど高く後ろ寄りに位置しているわけじゃないので、ポジションを取ったときに違和感はありません。ただし、178㎝の身長がある僕が足を下ろしたときには、バッチリ干渉する位置になるので、その点は気になりました。いずれにしても、万人に受け入れやすくまた、なじみやすいポジションだと思いました。
上体はアップライトで体に無理のない自然な乗車姿勢となる。やや後退した位置にステップがあるとはいえ、ヒザの曲がりに窮屈さはない
足を下ろすとステップに干渉してしまう。そのためステップの後部か前部に足をズラすことになる
シート高は795㎜。決して低い部類ではないが、足つきに大きな不満はない

低速からトルクフルで優れた瞬発力を発揮する水冷シングルエンジン

DRK-01最大の特徴といえるのが水冷DOHCシングルエンジンの採用です。他のモデルは空冷SOHCシングルを搭載していて、最高出力13Kw、最大トルク18Nmと250㏄としては控えめな動力性能です。ところがDRK-01の水冷シングルは、最高出力20Kw/9,500rpm、最大トルク22Nm/7,000rpmという高い動力性能を実現しています。さらに6速ミッションも導入しているので、パワフルでスポーティな走りが期待できます。
始動して軽くブリッピングしてみると、スロットルレスポンスは俊敏で、フルステンレス製エキゾーストシステムからは迫力あるサウンドを放ちます。それだけでも力強さを実感するのですが、スタートするとさらにその瞬発力に驚かされます。とにかく低中回転でのトルクが強力で、加速性も抜群です。250㏄の限られた排気量なのだからと高をくくっていたのですが、アクセルをガバッと開けると背中を蹴飛ばされたようにダッシュします。そんな特性のエンジンなので、市街地での機動性は非常に高く、峠道の上りでも不足のない加速を見せてくれるはずです。今回は郊外のちょっとしたワインディングを走ったのですが、アクセル操作へのツキがいいので爽快に走ることができました。
しかし、あまりにもツキがいいエンジンは、ゴー&ストップが頻繁な都市部の走行では忙しない走りになってしまいます。しかもギヤ比が低めなので、ギクシャク感を抑制するためには1速か2速高めのギヤを選択する必要があります。
高速道路も走行してみたのですが、100㎞/h巡航はもちろん可能です。しかしながらギヤ比が低めなので6速トップギヤでの走行でもかなりエンジン回転が上がっていて、たとえば長時間走行するとなると疲労しやすいかもしれません。まあ高速クルージング向きのバイクじゃないのでデメリットといえないかもしれませんが、自分の使用状況や走るステージに合わせてファイナルギヤを変更するのもひとつの方法だと思います。
ともあれ、水冷シングルエンジンがマットモーターサイクルに新風を吹き込んだのは事実。今後もさまざまなモデルに採用されていくんじゃないかと思います。
高出力、高トルクを発生する水冷DOHCシングルエンジンを採用。ミッションも6速となっていてスポーツライクな走りが楽しめる
低中回転でピックアップのいいエンジン特性なので、市街地で高い機動性を発揮する

高い安定性と素直なハンドリング

乗り心地に関していえば、マットモーターサイクルのバイクは総じて硬めです。前後サスペンションの動きが硬く、シート自体のクッション性も高く作られていないためです。そうした点ではDRK-01も大同小異といった感じです。
DRK-01では倒立フロントフォークを採用していて、リアサスペンションにはサブタンク付きの2本ショックを装備しています。これらのサスペンションの動きについては、他のモデルに比べてわずかですが作動性がいいように感じました。さらに、スポークホイールに120/90-18の極太タイヤを装着しているため、そのタイヤとホイールによって路面の衝撃を緩和する働きもあって、想像していたより乗り心地は悪くありませんでした。市街地走行や郊外へのプチツーリングに乗るならまったく問題ないし、疲労を誘発することもないでしょう。もちろん操縦性への影響もほとんどありません。
装着しているタイヤは極太のブロックパターンですが、オンロードでのグリップ性に不足は感じませんでした。ゴツゴツした乗り味かな?とも想像していましたが、実際にはそんなこともなく高い安定性を発揮していました。コーナーへのアプローチではやや粘りを感じますが、素直にバンキングさせることが可能な従順なハンドリング特性となっています。キレのある操縦性ではないのですが、だからこそ安心してコーナーワークが楽しめるハンドリングになっていると思いました。新設計のダブルクレードルフレームの剛性も素直なハンドリングに貢献しています。
4ピストンキャリパーをラジアルマウントしたフロントシングルディスクブレーキは。カチッとしたレバーフィーリングで、しっかりとした効きを示してくれます。リアブレーキに関してはそれほど強力という印象はありませんでしたが、これくらいのほうがスピードコントロールしやすいと感じます。
パワフルな水冷DOHCシングルエンジンや、倒立フロントフォーク、 SAW-TOOTHリムにチューブレスタイヤ、新設計ダブルクレードルフレーム、ラジアルマウントキャリパーなど、現代のロードスポーツバイクと変わらぬ装備が与えられたDRK-01は、スタイリングデザインこそ往年のダートラマシンをイメージしていますが、走行性能は現代のバイクに匹敵します。懐かしさを感じつついまの走りを楽しめる、そんなバイクだと思いました。

ディテール解説

ブラックアウトされたセミアップハンドルは、高さ、幅ともにちょうど良く、快適なポジションを生んでくれる
アナログ式タコメーターを中心に液晶ディスプレイを内蔵した丸型メーター。ニュートラルランプが装備され、液晶ディスプレイも明るくなった
パッシング、ヘッドライトHI/LO切り替え、ウインカー、ホーンの各スイッチが配置された左スイッチ
右スイッチには、キル、セルスタータースイッチが配置。左右レバーには使いやすいアジャスターが装備されている
丸型ヘッドライトはLEDを採用し視認性、被視認性をアップ。夜間走行にも心強い
リアフェンダー上にビルトインされたテールランプ、細身のウインカーランプ共にLEDだ
ニーグリップ性良好な燃料タンク。容量は16Lで、キャップはエアプレーンタイプ
滑りにくい表皮素材を使用しデザインされたダブルシート。硬めのクッションがスポーツライディングにマッチ
インナーチューブ径37㎜の倒立フロントフォーク。のこぎり歯状のユニークなリムを採用したスポーク式ホイールに120/90-18サイズのブロックタイヤを装着する
リザーバータンクを備えた2本ショック式のリアサス。プリロード調整が可能だ。タイヤはやはり120/90-18サイズのチューブレスブロックタイヤを履く
320㎜ローターに4ピストンキャリパーを装備したフロントディスクブレーキ。現代的スポーツバイク同様のラジアルマウントキャリパーを採用している
リアのディスクブレーキは、240㎜ローターに2ピストンキャリパーの組み合わせ。もちろん前後ABSが標準装備されている

主要諸元

エンジンタイプ:水冷単気筒DOHC4ストローク
ボアストローク: 250cc 72×61.2mm
最大出力: 250cc 20kw @ 9,500rpm (26hp)
最大トルク:250cc 22Nm @ 7,000rpm

フロントサスペンション:倒立フォーク Ø51mm / Ø37mm
リアサスペンション:別体式リザーバータンク、プリロードアジャスター付きツインショック
フロントブレーキ:4ピストン キャリパー Ø25mm ディスク径 320mm
リアブレーキ:2ピストン キャリパー Ø25mm ディスク径 240mm

全長 X 全幅 X 全高:2041mm x 791mm x 1094mm
シート高:795mm
ホイールベース:1364mm
燃料タンク容量:16L

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…