原付二種なのに、車体は一種クラス、トルクは500cc級!!|GOWOW・Alphaに感じた、電動バイクの新しい可能性。

これだったらレシプロエンジン車の代わりになるのかも? 過去に試乗した電動バイクで、筆者はそんな印象を抱いたことが何度かある。とはいえ、レシプロエンジン車では絶対に実現できない特性に感銘を受けたのは、GOWOWが初めてだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●モータリスト合同会社 https://motorists.jp/

ゴーワオ・アルファ……880,000円

最高出力が8kwのアルファと9kwのオーリは、日本の車両区分では原付二種扱いになるので、ナンバープレートのカラーはピンク。

事前の予想に反して、ムチャクチャ痛快で爽快‼

なんじゃこりゃ? 試乗の前日、輸入元を務めるモータリストのウェブサイトで、GOWOW:ゴーワオのORI:オーリとAlpha:アルファの写真を見た僕は、疑心暗鬼に駆られた。中国のMODE社が独自に開発した2台の電動バイクは、よく言えば斬新で未来的なのだが、悪く言うなら既存の常識を度外視しすぎ。ウェブサイトにはオフロードを疾走する動画がアップされているけれど、果たして、こんなバイクがまともに走るのだろうか?

その答えを先に言ってしまうと、2台のゴーワオはまともに走るどころか、ムチャクチャ痛快にして爽快なバイクだった。実は僕はこれまでに経験した電動バイクに対して、“レシプロエンジンの代わりになりそうだけれど、自分のバイクライフの中ではコレといった使い道が見当たらない……”と、感じることが多かったのだが、オーリかアルファが自宅にあったら、相当に楽しいバイクライフが送れるに違いない。当記事ではオンロード指向のアルファを素材として、その理由を説明しよう。

オーリとアルファの共通点・相違点

兄弟車のオーリと比較すると、アルファのカラーリングはシックで落ち着いている印象。

本題に入る前に2台の概要を記しておくと、ツインスパータイプのアルミ鍛造フレームやアルミスイングアーム、F:19/R:18インチのスポークホイール、φ203mmディスク+ラジアルマウント式4ピストンキャリパーの前後ブレーキ、車体のディメンション、外装や灯火類やライディングポジション関連パーツなど、オーリとアルファは基本設計の多くを共有している。

要所に橙/黄色を使用するオーリは、アルファよりアグレッシブな雰囲気。

では2台の何が違うのかと言うと、外観から判別できるのはタイヤの銘柄だが(オーリはブロックパターンのRYMAX EVで、アルファは舗装路重視のIRCトレールウィナーGP210)、それ以上に重要な要素はバッテリーとコントロールユニットだろう(モーターは共通)。以下に記すバッテリー容量・航続距離・充電時間・最高出力・最高速を見れば、各車の差異が理解できるはずだ。

●オーリ:38.4Ah・100km・3.5h・9kw・100km/h

●アルファ:28.8Ah・75km・2.6h・8kw・80km/h

そしてこの数字を見ると、多くの人が興味をそそられるるのはオーリではないかと思う。とはいえ、オーリの価格が121万円(保安部品を装備しないファンモデルは110万円)であるのに対して、アルファは88万円なのだ。その事実をどう考えるかは人それぞれだが、おそらく、オーリに少し遅れる形で登場したアルファには、親しみやすい価格を設定してゴーワオの認知度を世界中で高める、という役割が課せられているのだろう。

とてつもない性能をスマートに実現

アルファに乗った僕が最初に思い出したのは、ヤマハDT50やホンダCRM50など、1980~1990年代に販売された原付トレールバイクだった。もっともそれらと比較すると、着座位置はかなり高く(シート高は890mm。DT50は785mmで、CRM50は820mm。数字はいずれも最終型。以下同)、その一方で車重はかなり軽いのだが(70kg。DT50は87kgで、CRM50は83kg)、とにかく気軽にして軽快。普段の愛車がリッターバイクのライダーなら、自転車的な印象を持つかもしれない。ところが、スロットルをワイドオープンすると……。

それはもう、とてつもない世界が待っているのだ。何と言ってもアルファの最大トルクは、近年の400ccクラスの平均値を上回り、500cc並みと言っても差し支えない42Nm(オーリも同じ)なのだから。当然、ダッシュ力は超が付くほどに強烈で、スロットルを無造作に開ければ、フロントまわりがいとも簡単に離陸する。

などと書くと危険なイメージを持つ人がいるかもしれないが、レスポンスを穏やかな設定にすれば、初心者でも気軽に乗れるフレンドリーな特性に変貌を遂げるし、前後サスの動きやブレーキの反応は至ってナチュラルだから、最強モードで飛ばしても不安は感じない。いずれにしても、既存のバイクとはまったく異なる速さとトルクフィーリングに、僕は大いに感銘を受けたのだ。

余談だが、同業者と電動バイクの話をしていると、“環境問題を抜きにして考えた場合、電動バイクの必然性はあるのか?”、という話題になることが少なくない。逆に言うなら、環境問題を抜きすると、現時点で電動バイクの必然性はなかなか感じづらいのである。

でもアルファ(とオーリ)に、その理屈は当てはまらない。何と言っても、原付一種クラスの車体+500cc並みのトルクを発揮するパワーユニットのバイクは、過去に存在しなかったのだから。逆に言うなら電動バイクには、環境に対する優しさだけではなく、とてつもない性能をスマートに実現できるという美点が備わっていることを、今回の試乗を通して僕は実感したのだった。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

ライポジはオフロードレーサー的。とはいえ、ハンドルの低さや車体のスリムさを考えると自転車的……という見方ができなくもない。シート高は890mmだが、車体がスリムで軽く、1Gでの前後サスの沈み込みが多いので、身長が160cm以上のライダーなら不安は感じないようだ。

ディティール解説

ハンドルはテーパータイプで、独創的なデザインのクランプはアルミ削り出し。倒立式フロントフォークはスプリットタイプで、左にプリロード、右に伸圧ダンパーアジャスターを設置。
メーターはモノクロ液晶。左端はパワーモード×4とレスポンス×3の設定で、GEARという枠内の数字は任意で設定できる速度リミッター。1は35km/h、2は60km/hで作動し、3は無制限。
パワーモード/レスポンス/速度リミッターの設定変更は、左スイッチボックスで行う。ウインカーとハザードスイッチはグリップからの距離が遠いため、操作性はいまひとつ。
右側はボルトが非常に多い。スイッチボックスには、ヘッドライトのハイ/ロー切り替えレバーとマグネット式のイグニッションスイッチを設置。スロットルはもちろん電子制御式。
灯火類はすべてLEDで、横長のヘッドライトはゼッケンプレートの上に備わる。ウインカーはシーケンシャルタイプ。
まっ平なシートは着座位置の自由度を重視。ウレタンは薄いものの、今回の試乗中に尻の痛みは感じなかった。
カスタムパーツを思わせる雰囲気のステップはアルミ削り出しで、上面にはGOWOWのロゴが刻まれている。なおステップ周辺は左右ともに張り出しやひっかかりがまったく存在しないため、足を自由に動かせる。
ブレーキは前後ともφ203mmディスク+ラジアルマウント式4ピストンキャリパー。マウンテンバイク用を思わせるコンパクトさだが、利きとコントロール性に違和感は抱かなかった。ホイールトラベルは前後210mm。
オーリとアルファはアルミ素材を多用したバイクで、スイングアームやサイドスタンドもアルミ製。ドライブチェーンのサイズは420。
リアサスはリンク式。ショックユニットの上部にはプリロードと圧側ダンパー、下部には伸び側ダンパーアジャスターが備わる。

主要諸元

車名:Alpha
全長×全幅×全高:1900mm×780mm×1100mm
軸間距離:1275mm
最低地上高:280mm
シート高:890mm
最高出力:8kw
最大トルク:42Nm
最大登坂角:55度
最高速度:80km/h
航続可能距離:75km(WLTC)
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:80/100-19
タイヤサイズ後:3.50-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:70kg
バッテリー:73.8V 28.8Ah
充電時間:2.6h

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…