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モトグッツィV7ストーン・コルサ……1,518,000円(消費税込み)
V7は元々1960年代にモト・グッツィから発売されていたモデルの名前だ。縦置きVツインエンジンを初めて搭載したこのマシンは性能や信頼性の高さなどが世界各国で人気になり、様々なバリエーションモデルが誕生した。良く知られているのは1973年に誕生したV7スポルト。V7を進化させたスポーツモデルで、V7の中でも特に人気の高かったモデルである。
現行のV7は、往年のV7スポルトのイメージを強く感じさせるデザインになっている。細身の18インチバイアスタイヤを前後に装着したナローなデザインからはクラシカルな雰囲気が漂う。
V7に搭載されているエンジンは現在モトグッツィがラインナップしているV型の中では最も排気量が小さい853cc。空冷OHV2バルブという伝統的なメカニズムを受け継いている。
V7には色々なバリエーションモデルが登場していて今回試乗したのはV7ストーン・コルサ。
イタリア語で競争を意味するコルサは、レースに対応したマシンなどに与えられるイメージがあるが、V7ストーンコルサの場合はスペックなどに関しては他のV7と同じ。ビキニカウルやテールカウル風のカバーがついたシート、バーエンドミラーなどを装着することでカフェレーサー感を演出したモデルである。
低中速が楽しいエンジン
モトグッツィのVツインは排気量によってキャラクターがかなり異なる。V7はどちらかというとまったりとしたエンジン特性だ。このエンジンがストリートを適度なペースで走る分には色々な意味でちょうどいい。
低中速トルクは太いけれどモトグッツィのVツインエンジンは昔からフライホイールマスが大きめなのでエンジンは過敏な反応をすることがない。スロットルを開けると穏やかにトルクが出てくれる。それに加えてフライホイールマスが慣性力を蓄えるから独特の力強さが生まれる。
V7で楽しいのは4000rpmを過ぎるくらいまでだ。これくらいの回転域でも十分なトルクがあるから心地よい鼓動感と排気音を楽しみながらスポーティに走ることができる。
5000rpmを越えたくらいから排気音が連続してしまって、レブリミットである7000rpmまでは苦しげな回り方になってしまう。回転を上げて速く走りたいというときは使えるけれど、高回転域を常用してもあまり楽しい感じはしない。
こういう特性だからV7で走るときは、中速までを使うことがほとんどなのだけれど、このバイクに乗っているとそれで十分に満足できてしまう。エンジンの特性が過激で、まるでライダーが急かされているように感じてしまうバイクがあるが、V7はその真逆。「これくらいのペースで走ろうよ」とVツインエンジンが語りかけているような気がするのである。
普通に走るのが楽しいハンドリング
ハンドリングは基本的に素直だけれど味付けは少し変わっている。ステムのオフセットが大きいので直進安定性に寄与するトレールが少なめになり、車体をバンクさせたときのステアリングのレスポンスが強めにつく。その代わりにフロントフォークのキャスターで直進安定性が確保されている。
細身の18インチバイアスタイヤを履いていることもあってバイクを少しバンクさせるだけで、フロントの舵角がすっと自然に素早くついてくれるのはオフセットの多いステムの影響だろう。ワインディングを適度なペースで走るのであれば、浅いバンク角でこのステアリングの動きを利用して走るのがとても楽しい。あまりバンクさせなくても気持ちよく向きを変えてくれるのである。
ソフトでよく動くサスペンションも低い速度域でバイクを操るのに適した設定。低中速型エンジンもこのハンドリングと実に良くマッチしているから、適度なペースで峠を流しているのがとても楽しくなる。
ただし、ペースを上げてワインディングを攻めようとすると難しくなる。強引に切り返せば柔らかいサスペンションが落ち着かなくなるしエンジンもぶん回すと使いにくい部分がある。縦置き、シャフトドライブの癖は普段ほとんど気にならないのだけれど、高回転を常用するとタイミングによってパワーのオンでリアショックが若干突っ張り気味になってしまうこともある。バイアスタイヤもグリップや安定感がラジアルほど高いというわけではないから、攻め立てようとすると操作がシビアになってくるのである。
ただ、これはV7の評価をさげるものではないだろう。多くのスポーツバイクが使い切れないくらい高い性能を持っているのに対し、V7はそういった余分な性能を追い求めていないというだけのこと。その結果、実用域で楽しく走れるバイクになっているのである。
刺激的なバイクを求めるライダーにV7は物足りないかもしれないが、ストリートを常識的な速度で楽しむライダーにとってみればとても魅力的な存在だと思う。
前述したようにモトグッツイのVツインは排気量やモデルによってキャラクターが大きく異なる。もしも興味があるのであれば、色々なモデルに乗ってみることをオススメしたい。他のメーカーのバイクにはない個性と楽しさがあることが分かるだろう。
ポジション&足つき(身長178cm 体重75kg)
ポジションは軽い前傾。長距離でも無理のない自然な姿勢になる。乗り心地も良好だ。
縦置きのVツインエンジンは、重心が通常よりも前で高い位置にあるような印象。そのためにバイクを傾けたり引き起こすときに重さを感じることもある。
車体がスリムなので足つき性も良い。シート高は780cmだがサスが沈むので両足ベッタリとついて更に膝が曲がる。
ディテール
エンジン | 空冷4ストローク90°V 型2気筒 OHV 2バルブ |
総排気量 | 853 cc |
ボア × ストローク | 84 mm × 77 mm |
最大出力 | 65 HP (48 kW) / 6,800 rpm |
最大トルク | 73 Nm / 5,000 rpm |
燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射システム |
始動方式 | セルフ式 |
トランスミッション | 6速リターン |
クラッチ | 乾式単板 |
フレーム | 高張力鋼管ダブルクレードル |
フロント サスペンション | Φ40㎜ 油圧式テレスコピックフォーク |
リア サスペンション | ダイキャストアルミ製スイングアーム 油圧式ツインショックアブソーバー |
スプリングプリロード調整式 | |
フロントブレーキ | 320 mm径ステンレスフローティングディスク |
Brembo製異径対向 4ピストンキャリパー | |
リアブレーキ | 260 mm径ステンレスディスク フローティング2ピストンキャリパー |
フロントタイヤ | 100 / 90-18″ 軽量アルミキャストホイール |
リアタイヤ | 150 / 70-17″ 軽量アルミキャストホイール |
全長 / 全高 | 2,165 mm / 1,160 mm |
シート高 | 780 mm |
ホイールベース | 1,450 mm |
燃料タンク容量 | 21 L |
乾燥重量 | 198 Kg |
車両重量 | 218 Kg ※走行可能状態 (燃料は90%搭載時) |
主要装備 | DRL付きフルLEDライトパッケージ, LCDメーター, MGCTトラクション |
コントロール, 2チャンネルABS, フロントフェアリング, バーエンドミラー, | |
アルミ製ビレットフューエルキャップ, “CORSA”プレート付ハンドルバークランプ | |