シート高が低めのトレッキング向きバイク|カワサキKLX230 シェルパがツーリングの楽しさを広げる!

1年以上前からアナウンスされていたカワサキの新型デュアルパーパスモデル「KLX230」シリーズに、予想外のトレッキングモデル「KLX230 SHERPA」が含まれていた! ベースは低シート高モデルのKLX230Sだが、専用デザインの外装やカラーリングでモトクロッサー的なルックスから脱却。林道走行やキャンプツーリングをする人には、最適なモデルといえるだろう。このジャンルは選べる車種が少ないだけに、63万8000円で買えるKLX230 SHERPAの登場はかなり貴重だ。なお11月27日予定だった発売日は延期され、新たな日程は未定となっている。


REPORT&PHOTO●川島秀俊
アウトドアを意識したアース系のボディカラーがスタイリッシュなKLX230 SHERPA。「カワサキ=ライムグリーン」というイメージを払拭し、好みのアウトドアブランドやミリタリーギアとコーディネートしやすい。車体カラーは写真のホワイティッシュベージュのほか、ミディアムスモーキーグリーン、ミディアムクラウディグレーが選べる。

街乗りからトレッキングユースまで幅広く楽しめるタフ&クールな相棒

オフロードが好きなユーザーにとって、新型KLX230、そのローシートモデルであるKLX230Sの登場は嬉しいニュース。昨秋のジャパンモビリティショー2023にて発表されてから、心待ちにしていたファンもいることだろう。そこに突如として追加された派生モデルが、KLX230Sをベースにした「KLX230 SHERPA」というトレッキング系のデュアルパーパスモデルだ。

かつてカワサキからは「スーパーシェルパ」というトレッキングモデルが販売されていたが、国内仕様は2007年に生産を終了。今回のKLX230 SHERPAは17年ぶりにネーミングを受け継ぎ復活したモデルで、近年のアウトドアブームが商品化を後押ししたと思われる。ツーリングを楽しむライダーにとっては、長距離も苦にならないポジションや積載性の高さからアドベンチャーモデルの人気が高く、さらにアウトドア志向が強くなるほどオフロードの走破性が重視される。軽量な250ccクラスのトレッキングモデルではヤマハのセロー250が長年高い人気を誇っていたが、排ガス規制の強化に伴って2020年にて生産を終了。低シート高で本格的な走破性を誇るKLX230 SHERPAの登場は、その穴を埋める意味でも貴重な存在といえるだろう。

気軽にキャンプツーリングやトレッキングを楽しむには125ccクラスを推す人もいるが、高速道路を利用できない実情は行動範囲に直結する。限られた時間を有効に使ってツーリングを楽しみたいなら、250ccクラスのKLX230 SHERPAは優れた解答のひとつと断言できる。気の向くままにトコトコと走り、時には酷道にチャレンジし、帰りが面倒なら高速道路で一気に帰宅! キャンプに映えるアウトドアテイストの車体は、お気に入りのギアとしてバイクライフを盛り上げてくれるに違いない。

足つきの良さでオフ車のネガティブを軽減しどんな道でも走れる扱いやすさに仕上げる!

KLX230 SHERPAの魅力は、まずベースとなったKLX230Sのポテンシャルの高さにある。カワサキが培ってきたモトクロッサーのDNAを受け継ぐ時点でオフロードの走破性は高く、シート高845mmのローシートモデルでもホイールトラベルはフロント200mm/リヤ223mmを確保。最低地上高は240mmあるが、万一ヒットさせても専用装備のアルミ製スキッドプレートがフレームやエンジンを守ってくれる。

エンジンは空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒で、軽量コンパクトな車体づくりに貢献。低中回転域のパフォーマンスを重視したセッティングは扱いやすく、フラットなトルク特性はスリッピーな路面でもコントロールしやすいものだ。単気筒エンジンは振動による疲れを危惧するが、ギヤ駆動のバランサーを採用することでエンジン振動を低減。6速ミッションはオンロードからオフロードまで対応するギヤ比で、オールマイティな走りが堪能できる。

気になるのはベースとなったKLX230Sとの違いだが、おもにルックスと言い切れるだろう。最大の相違点はボディカラーとシュラウド形状が目につくポイントとなっており、顔となるヘッドライト周辺デザインの違いでもキャラクターを差別化している。細かく見れば、アルミテーパードハンドルバーや金属プレート入りのハンドガードなど、タフネスなイメージの専用装備も見逃せないポイント。価格差はあるが、自分好みにカスタムされた仕様と思えば、むしろ安く仕上がっているといえそうだ。

KLX230Sをベースに、シュラウド形状を小型化してフロントタイヤ付近の視認性を向上。ルックスもスリムになり、アースカラーと相まってアウトドアテイストをアピールする。
基本スペックはKLX230Sと同じではあるが、軽量&高剛性なアルミテーパードハンドルバー、内側に金属プレートの入ったハンドガード、アルミ製スキッドプレート、ヘッドライト下のガードバーなどを独自に装備。これらを別途カスタムするとなれば、KLX230Sとの差額の4万4000円は安く感じる。
インナーチューブ径φ37mm正立タイプのフロントフォークは、信頼性と作動性を高次元にバランス。ホイールトラベルは200mmあり、優れたオフロードの走破性を確保している。フロントタイヤはオフ車定番の21インチなので、交換する選択肢は豊富。アルミ製ブラックリムが精悍さをアピールする。
上下を分割したデザインのヘッドライトカバー、タフなイメージを演出するガードバーの装着で独自のキャラクターをアピール。ヘッドライトはLED仕様で、上段にロービーム、下段にハイビームをレイアウトする。
フロントブレーキにはデュアルピストンキャリパーとφ265mmディスク、リヤブレーキにはシングルピストンキャリパーとφ220mmディスクを採用。走行ステージに合わせ、ABSはキャンセルすることができる。
リヤタイヤもオフ車の定番サイズである18インチを採用。223mmのホイールトラベルを持つニューユニトラックサスペンションで、優れたトラクション性能と走行安定性に仕上げる。
スイングアームはKLX230やKLX230Sと同じ新採用のアルミ製で、バネ下荷重を軽減。スチール製スイングアームより1.2kgも軽くなっている。二次減速比も45/14で共通設定となる。
コンパクトな空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジンを搭載。フラットなトルク特性で低中回転域から扱いやすく、トレイルライドでもスムーズな走りが楽しめる。高速道路など、必要に応じてエンジンを回せば高回転の走りも快活だ。
メーターはKLX230シリーズ共通の大型LCDディスプレイ。Bluetoothでスマートフォンと接続し、着信通知や専用アプリとの連携ができる。表示はスピード、オド、デュアルトリップ、燃料、時計など、実用性を重視した内容だ。
ミラーはショートタイプが標準で、出っ張り感は少ない。左スイッチボックスには赤いABSオフのスイッチが装備される。ABSはエンジンを再始動すると自動復帰する設定だ。ハンドガード内側には金属プレートが入っているので、強度的にも安心できる。
シートは上面に細かな滑り止めパターンが入った2種類のレザーで構成され、シンプルな中にも機能性とデザイン性を追求。サイドカバーはスリムなツートンカラーで、KLX230と差別化したシルエットだ。
スリムな形状のシュラウドを採用し、タンクから流れるようなスタイルを実現。サイドカバーも細身のデザインになっており、モトクロッサーテイストのKLX230とは差別化している
マットブラックの樹脂製パーツで、ツートンに仕上げられるサイドカバー。KLX230とマフラーは共通でも、カバーのディテールでタフなギア感を演出する。
撮影会当日に披露された純正アクセサリー装着車両。ラージキャリアやUSB TYPE-C電源などは、新車での同時装着率が高そうだ。
撮影会当日に披露された純正アクセサリー装着車両。ラージキャリアやUSB TYPE-C電源などは、新車での同時装着率が高そうだ。
最大積載重量6kgのラージキャリア(3万30円)は、定員1名にはなるものの、大荷物を積載するキャンパーなどには嬉しいアクセサリー。キャリア下には別途ETC2.0車載器キット(4万2680円)を追加できる。スモールキャリア(1万9140円)もあり、こちらもETC搭載に対応可能だ。
ヘビーデューティなエンジンガード(9339円)は、フレームと同色仕上げで一体感を追求。シンプルなパイプワークで、存在感を主張しない秀逸なデザインだ。
スマートフォンの充電等に便利なUSB TYPE-C電源(7865円)もラインアップ。右ミラーとブラケットを共締めして固定しており、未使用時はラバーキャップで端子を保護できる。
車体ホールド時に擦れるメインフレームには、樹脂製のフレームカバー(2640円)を用意。くるぶしとの接触面を広くしてホールド感を高め、キズ防止にも役立ってくれる。
車体色のミディアムスモーキーグリーンは、ミリタリー系やアウトドアテイストに親和性のあるカラー。ヘッドライト下のガードバーを、太めの動力パイプ風にカスタムするユーザーが出現しそうだ。
車体色のミディアムクラウディグレーは、実車を見ないと表現しにくいダーク系カラー。写真ではオリーブドラブに近い印象だが、グレーというだけあって黒系のイメージが強いのかもしれない。
KLX230 SHERPA(左)とKLX230S(中央)、そしてKLX230SM(右)との3ショット。兄弟モデルとして外観は似ているが、用途に応じて個性の異なるバリエーションが選択できる。

主要諸元・KLX230 SHERPA

全長:2,080mm
全幅:920mm
全高:1,150mm
シート高:845mm
乗車定員:2人
排気量:232cc
車両重量:134kg
エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
最高出力:13kW (18ps)/8,000rpm
最大トルク:19Nm(1.9kgf・m)/6,400rpm
トランスミッション:6速リターン式
フューエルタンク:7.6L
ブレーキ:前 ディスク、後 ディスク
タイヤサイズ:前 2.75-21 45P、後 4.10-18 59P
メーカー希望小売価格(消費税10%を含む):¥638,000

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