ホンダのV3電動過給器「全領域で電子制御による過給。いい出来です」|ホンダが二輪事業説明会を開催

ホンダは2025年1月29日(火)、二輪事業の取り組みについて説明会を開催。ホンダの“屋台骨”とも言える二輪事業の展望などが発表された。
PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
ホンダ二輪事業説明会 https://global.honda/jp/news/2025/2250128.html
ホンダ(本田技研工業株式会社)の2名が説明を実施。 写真左)執行役 二輪・パワープロダクツ事業本部長 兼 二輪事業統括部長 加藤 稔(かとう みのる)氏  写真右)執行職 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長 三原 大樹(みはら だいき)氏。

2024年度におけるホンダの二輪販売台数は、約4割の世界シェアを達成

2024年12月23日、ホンダと日産自動車(以下、日産)は経営統合の協議に入ると正式に発表。2025年6月までに最終合意し、2026年8月の持ち株会社設立を目指す。

今回の経営統合では、ホンダが新会社の社長や取締役の過半数を選ぶなど、実質的な主導権を握る。日産が筆頭株主の三菱自動車も同日、経営統合への合流を検討するための覚書にサインした。

ホンダと日産はこれまで、電動自動車(EV)における世界的リーディングカンパニーを目指し、いくつかのモデルをリリース。しかし米国のテスラー社(社長はアメリカ大統領・トランプ氏の支持者であり懇意なイーロン・マスク氏)や、中国メーカー各社等の急激な躍進により、苦戦を強いられている。

国内メーカーの大手であるホンダと日産がタッグを組んだ今回の事案は、“EVでの生き残り”を賭けた、絶対に負けられない勝負であると言っても過言ではない。負けるなホンダ・日産・三菱!

日産や三菱、そして四輪事業では他メーカーに差を付けられているホンダだが、二輪事業はというと……。

国内における二輪車の出荷台数は、バイクブームやスクーターブームに沸いた1980年代に比べ、原付(50cc以下)に限れば、現在は1/10までに低下。目まぐるしいほどにNEWモデルがリリースされていた国内での当時の盛況ぶりを、「いい時代だったなあ……」などと懐かしむと同時に、「現在の国内バイクメーカーは大丈夫か?」と思う人も多いはず。

世界レベルで見た場合。現況のホンダの二輪事業は、“まずまず好調”といえる(ホンダの社内では苦境にある四輪事業と、好調な二輪事業を分けるべきという声もあるという噂)。

ホンダの二輪事業は現在、世界各地で事業を展開。日常生活に使用する便利なコミューター、週末のレジャー等で楽しめる大型モデル、販売競争が激しい電動バイクなど、幅広いラインアップを展開。23の国と地域、37の生産拠点において、年間2000万台を超える生産能力を保持。また3万店以上の販売店を通じて商品を供給。創業以来の累計生産台数は、間もなく5億台を達成する。

世界全体で見た場合、2024年度におけるホンダの二輪販売台数は、世界シェアの約4割(※ホンダ調べ)で、2020万台の見通し。このうちインド、インドネシア、タイ、ベトナムなどアジアでの二輪販売台数は、全体の85%(1717万台)。日本、欧州、米国は6%(120万台)をそれぞれ占める。なお2024年暦年の二輪販売台数は、37の国と地域で過去最高を記録した。

2023年の営業利益(5562億円)は2018年(2916億円)に比べて1.9倍の増加。
2024年は欧州の主要5か国で、ホンダはシェアNo.1を獲得。

世界シェア5割を目指し、取り組みを加速化

現在、世界最大の二輪市場はインド。「インドでいかにシェアを上げるか?」も大きな課題だ。ホンダはインドに加え、インドネシア、フィリピンなどのアセアン諸国。またブラジルを始めとした中南米など、「グローバルサウス」と呼ばれる地域を中心に、人口増や所得向上を背景にとらえ、さらなる伸長を見込んでいる。

それに伴い、二輪車の全体市場は現状の5000万台規模から、2030年には電動車を含め6000万台規模に成長する見通し。この市場成長と需要拡大に対して確実に対応するため、より競争力の高い商品の継続的な投入に加え、二輪車の電動化を含めたカーボンニュートラルへの対応。さらには二輪事業のさらなる盤石化を進め、長期的には電動二輪車も含め、世界シェア5割を目指して取り組みを加速していく。

「インドをいかに攻略するか?」も今後の課題のひとつ。インドにおけるホンダのシェアも少しずつ向上中(グラフの赤線)。

世界初の電動過給機付き新型V型3気筒エンジン車についても言及。「電子制御による過給により、全域でパワフルな仕上がり」

EICMA(エイクマ)2024で発表された、ホンダが新たに開発中の大型コンセプトモデル。
二輪車用としては世界初(※ホンダ調べ)の「電動過給機」を採用。

2024年11月5日~11月10日にイタリア・ミラノで開催された世界最大のモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ)2024」で、ホンダは新たに開発中の大型コンセプトモデルを展示。同車はスリム&コンパクトを追求した、水冷4ストローク75度Ⅴ型3気筒(前側が直列2気筒、後ろ側が単気筒)DOHCエンジンを搭載。

最大のポイントは、二輪車用としては世界初(※ホンダ調べ)の「電動過給機」を採用しているところ。エンジンの回転数に関わらず、任意に過給をコントロールすることで、低回転域からハイ・レスポンスなトルクデザインを実現。スペースが限られる二輪車において、過給機の冷却に使うインタークーラーを必要としない設計とすることで、マスの集中化と軽量化にも貢献している。

今回の説明会に登壇した加藤氏は、「あまり言うと怒られますが……」と前置きした上で、「先々週、熊本で乗りました」とコメント。

「いい出来です。軽量コンパクトなエンジンとボディ。また電子制御による電動過給により、全域にてとってもパワフルな仕上がり。まだテスト中ですが、これから目標に向かって引き続き“本気”で開発を進めています。期待してください」と語った。なお同車の具体的な排気量やスペックはノーコメントとした。

二輪説明会の模様を動画でチェック!

Honda 二輪事業説明会 ※30分21秒以降より説明会の動画はスタート

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