航続距離は500km超! KTM・890アドベンチャーは、なかなか頼り甲斐のあるツアラーでした。

既に多くのバリエーション展開を誇るKTMブランド。中でも最も多い9機種を揃えているのが“TRAVEL”カテゴリー。フラッグシップの1290を筆頭にアドベンチャー・シリーズは250までリリース。今回の890は、ミドルクラスの上級最新モデルとして注目を集めている。なお2月15日発表のニュースによると、ストリートモデル(TRAVELカテゴリーは7機種)について順次2022年モデルが投入される。890 ADVENTUREの発売予定は3月で、新価格は1,695,000円。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂( TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●KTM Japan 株式会社

ディテール解説

シリーズ一連のスラントしたフロントマスクが個性的。

フロントフォークはφ43mmの倒立式。WP製APEXが採用されている。減衰機構は左右で伸び側と圧側それぞれを分担する設計。ダブルディスクブレーキはφ320mm。対向4ピストン式油圧キャリパーがラジアルマウントされている。

車体剛性メンバーの一員となる水冷直(並)列前傾ツイン。75°位相されたクランクを持つ右サイドカムチェーン方式のDOHC4バルブエンジンを搭載。兄貴分同様ツインスパークプラグ方式が採用されている。クランク前方と頭上にバランサーシャフトを備えている。

クランクケース直下を後方に導かれたエキゾーストパイプはスイングアームピボット直後に立ち上げられ、右側へのアップマフラーに繋げられている。

WP製のモノショックはAPEX5446。プリロード調節は上のダイアルを左(半時計方向)に回し切り、3回転右(時計回り方向)へ戻した所が標準位置。ボトムには伸び側アジャスターがある。マイナスドライバーで右に回した後、15クリック左へ戻した所が標準設定。

黒く長いスイングアームは鋳造オープンラティス(梁を露出させた独自デザイン)アームを採用。フローティングマウントされたφ260mmディスクローターには、2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーをマッチ。タイヤはAVON製 TRAILRIDERを履く。

アルミパイプバーハンドルはφ28〜25mmのテーパータイプ。ハンドルブラケットが工夫されており、取り付け位置は好みの6ポジションに変更できる。

下から順に咄嗟の時にも押しやすいホーン、ウインカー、4個の三角スイッチはディスプレイをコントロールする上下ボタンと右がセット、左がバック(戻し)ボタン。右上はクルーズコントロール用。向こう側には人差し指で扱うディマー&パッシングスイッチ。
ハンドル右側スイッチは、シンプルに赤いシーソースイッチが一つ。エンジンキルスイッチ兼、始動用のスタータースイッチがある。

多彩な情報表示を担うフルカラーTFT液晶ディスプレイ。自動で照度調節され、明暗反転表示も自動切り替えできる。外気温が4°C以下に下がると❄︎マークの凍結警告がでる。メーター下側には12V10Aのアクセサリー電源ソケットが装備されている。

段付きのロングシートは前後セパレートタイプ。前席は固定方法を変えると上下2段のシート高が選べる。取り外し作業は左脇のキーロックを解錠し、後席から外す。

シート下はエアクリーナーボックスがあり、エアフィルターへのアクセスが容易。蓋に貼られたシールにはヒューズリストやリヤショック調整方法が明記されている。
後席の裏側には薄い小物を収納できるポケットが装備されている。簡単な防水構造を持つ蓋があるので、書類等をしまっておくことができる。

コンパクトに仕上げられたテールランプ。ウインカーの張り出しは、グラブバーのそれよりも狭い。

タンク両脇の膨らみ具合は、ボリュームがある。

主要諸元

車名:KTM・890 ADVENTURE
軸距(mm):1,509
最低地上高(mm):233
シート高(mm):830-850
車両重量(kg):196(乾燥)、(半乾燥200kg)
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):22.2

エンジン種類:水冷4ストローク直(並)列 2気筒
動弁系:DOHC 4バルブ
総排気量(cm³):889
内径×行程(mm):90.7×68.8
圧縮比:13.5:1
最高出力(kW[hp]/rpm):77[105]/8,000
最大トルク(N・m /rpm):100 /6,500
始動方式:セルフ式
バッテリー:HTZ12A-BS(MF12V 10Ah)
燃料供給装置形式:スロットルボディφ38mm。 Bosch製EMS(電子制御式燃料噴射)
点火装置形式:非接触制御電子式点火
燃料タンク容量(L):20(含む予備約3L)
潤滑方式:セミドライサンプ(2ポンプ式)
潤滑油量(L):2.8
クラッチ形式:湿式多板式、機械式PASC(Pawer Assist Clutch)アンチホッピングクラッチ
変速機形式:常時噛合式6速
変速比:
 1速:2.846(13:37)
 2速:2.000(17:34)
 3速:1.550(20:31)
 4速:1.273(22:28)
 5速:1.083(24:26)
 6速:0.957(23:22)
1次減速比:1.923(39:75)
2次減速比:2.813(16:45)
キャスター角(度):25,9°
タイヤ(前/後):90/90-21M/C 54V M+S TL / 150/70R-18M/C 70V M+S TL
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク / 油圧式ディスク(Bosch製9.1MP コーナリングABS、オフロードモード、作動解除可能) 
懸架方式(前/後):テレスコピック式 / スイングアーム式
サスペンションストローク(前/後mm):200/200
フレーム形式:クロームモリブデン鋼管製トレリスフレーム。パウダーコート塗装

生産国:オーストリア

試乗後の一言!

真のデュアルパーパスらしさを実感。交換用のオフロードタイヤも備えて、あらゆる場面で遊びたい。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…