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「1か月前」を「2か月前」に変える理由
今回の新制度は、2024年(令和6年)6月に交付された改正「道路運送車両法施行規則」が2025年4月1日に施行されることによるものだ。
主な内容は、前述の通り、車検を車検証の有効期間満了日の2か月前から受験できるようにすることだ(離島に使用の本拠の位置を有する車両は以前から2か月前だったが、今回の改正で全国一律となる)。
目的は、国土交通省によれば、「車検需要が年度末に集中するため」。ご存じの通り、一般的にビジネスなどの年度は4月で切り替わるため、年度末は3月を意味する。この時期は、新生活への切り替えや新型車が販売されるタイミングなどにより、4輪車や2輪車の購入や買い替えも盛んになる。そして、購入台数が多いことで、車検もこの時期に集中しがちなのだ。
実際、国土交通省が発表した「月別車検台数(2019年から2023年までの5年間の平均)」によると、約389万台と3月が最も車検台数が多いことが分かる。最も台数が少ない8月の約281万台と比べると、約100万台もの差があるのだ。

国土交通省によれば、そのため、車検が集中する年度末には、ユーザーが整備や車検の予約を取りづらく、自動車整備士なども残業・休日出勤に追われるという問題が生じているという。今回の改正はそうした課題の解消をめざしたものだ。
ちなみに、この改正に合わせ、自賠責保険の有効期間も変更。「自動車損害賠償保障法施行規則」を改正することで、従来、車検の有効期間に1か月(離島では2か月)を加えた契約の締結義務を、こちらも2025年4月1日から2か月(全国一律)に変更する。
実は車検はいつ受けてもいい
以上が、車検の新制度に関する概要だ。本来、車検は満了日前であれば「いつでも受けられる」ものなで、従来も満了日の2か月前やそれより前に車検を受けること自体は何ら問題はなかった。ただし、あまり早い時期に車検を受けると、次回の満了日が早まってしまい損をする場合もある。
例えば、251cc以上の自家用バイクで、車検証の満了日が2025年12月10日の場合。その車両の車検を2025年10月10日に通した場合、次回の車検満了日は2027年10月10日になる。前回の車検で2025年12月10日までの費用(継続検査費用や自賠責保険料など)を支払っていれば、従来であれば2か月分の損をしたことになっていた。
一方、これも従来は、車検証の有効期間満了日の1か月前から満了日までに車検を受ければ、次回の満了日が早まることはなかった。上記例のように、2025年12月10日が満了日の場合、1か月前の2025年11月10日に車検を受けても、次回の車検満了日は2027年12月10日になり、損にならなかったのだ。
今回の改正では、こうした制度について、車検証の有効期間満了日の2か月前までに延長。上記例のように、2025年12月10日満了日の場合、2025年11月10日に車検を受けても、次回の車検満了日は2027年12月10日となるようになったのだ。

車検の新制度はいつから適用される?
ただし、注意したいのは、今回の新制度が導入される時期。あくまで2025年4月1日以降に車検で継続検査を受検する場合が対象となるため、2月や3月中に車検を受けても適用されないのだ。
例えば、車検証の有効期間が「2025年5月1日」のバイクでは、満了日2か月前の「2025年3月1日」に車検を受けると、更新後の有効期間は「2027年2月28日」となる。前述の通り、前回の車検で2025年5月1日までの費用を払っていれば、2か月分の損となる。
一方、車検証の有効期間が「2025年6月1日」のバイク。この場合、満了日2か月前は「2025年4月1日」で新制度の導入後だ。その日に車検を受ける場合、更新後の有効期間は「2027年6月1日」となり、有効期間の満了日を2年後の同じ日にできるのだ。
つまり2025年3月末までは、従来と同様の制度のままで、新制度は4月1日以降でないと適応されないということだ。そう考えると、少なくとも、2025年3月に関しては、陸運支局など車検を行う現場が混み合うことは従来と同じになることが予想できる。新制度が狙い通りの効果が出るか否かはまだ不明。もし、混雑緩和などが見込めるとしても、その効果が出るのはおそらく約1年後、2025年度末(2026年3月)以降になるのではないだろうか。
