スズキ・バーグマン400試乗|車体は大きい! でも足つきはなかなか良い。

スカイウェイブ250の兄貴分として1998年に登場した同400は、2017年のモデルチェンジを機に、国際ブランドとして知られたネーミングの「バーグマン」に引き継がれている。今やスズキのバリエーション中唯一の400ccモデルである。2021年6月にマイナーチェンジされた最新モデルに試乗した。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 スズキ

スズキ・バーグマン400 ABS…….847,000円

スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11

マットソードシルバーメタリック

スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
マットブラックメタリックNo.2
ソリッドアイアングレー
ツインスパーク方式が採用された水冷の直打式DOHC4バルブ単気筒エンジン。
前傾シングルエンジンのカムチェーンは右サイドにレイアウトされている。

 7月6日に発売された2021年モデルのバーグマン400 ABS、ご覧の通り基本的に大きな変更は成されていない。今回のマイナーチェンジのポイントは、新たにトラクションコントロールを装備したことである。
 トラクションコントロール、つまり駆動力のオーバーパワーで後輪が滑る様なシーンを検知すると、エンジン駆動力をセーブしてスリップを抑え、安定走行をキープしてくれる電子デバイスの投入が新しい。雨で濡れた路面等でのコーナリング中に、スロットルの開け過ぎによるスリップを防いでくれる大きな安心感が期待できる。しかも同コントロールは作動を任意にOFFできるので砂地に足を取られるようなシーンで脱出する時にも困らない。
 エンジンも刷新されてスズキ・デュアルスパークテクノロジーを採用。シリンダーヘッド(燃焼室)が刷新されて圧縮比も10.5対1から10.6対1に高められ、燃焼効率を向上。さらに排気後処理の触媒システムも一新され、平成32(令和2)年国内排出ガス規制に対応している。
 イージースタートシステムが装備され、エンジン始動時はセルスターターボタンをワンプッシュするだけの簡単操作で(始動まで押し続ける必要が無い)始動してくれる。
 

 もともとバーグマンはスカイウェイブの海外名。スカイウェイブ250はカタログ落ちし、今はバーグマン200と400が日本では展開されている。このバーグマン400がスズキにとっての大排気量スクーターとなり、その車体サイズはヤマハTMAX 560を凌ぐ。
 ホイールサイズはフロント15、リヤ13インチを履き、今回のマイナーチェンジで少し(3kg)重量アップした車両装備重量は218kgでTMAX 560と同じ。いかにも大きく立派なミドルクラス・スクーターなのである。

ユニットスイング方式のリヤサスペンション。リンク式のものショックユニットは、エンジンよりも前方に位置し、ほぼ水平にマウントされている。プリロードは7段階調節でき、標準設定は中央の4段目。
スチール製のパイプアンダーボーンフレームはワイド。低い位置にクレードルを形成し、剛性感は高そう。

大き過ぎに思える車体も心地よく使えるシーンがある。

  

 試乗車を受け取ると、改めてその車体の大きさに圧倒される。長く、そしてワイドな車体は堂々たるボリューム感。全長は2235mm、ホイールベースは1580mm。このデータはスズキ車のラインナップ中最大である。
 他にホンダのデータを探ってみると、さすがにゴールドウィングは別格だが、バーグマン400ABS に匹敵するのはX-ADVぐらいであった。
 早速跨がると車体を引き起こす時の手応えはズッシリと重い。しかし、足つき性が悪くないので、ゆっくりと落ち着いて扱う限り、特に不安は感じられない。
 シートや車体がワイドだが、足を下ろしたステップボード周辺のデザインにクビレがある。スズキでは「カットフロアボード」と呼んでいるが、下の俯瞰写真で分かる通り、地面を捉える両足間の接地幅が狭くて済む配慮がなされている。
 この効果は大きい。以前に先代モデルを自宅車庫にしまった事があるが、このデザインのおかげで壁際ギリギリに寄せるのも楽に扱えたのである。ミドルクラスのバイクと比較するとかなり大柄なだけに、こうした配慮がある点はとても嬉しい。
 シートもライディングポジションも大きくてゆったり。着座位置やステップ位置の自由度も大きい。さらにシートストッパーは約20mm毎3段階に前後ポジションが選択できる。
 2本のボルト固定式だが、好みの位置に合わせて、腰をサポートしてくれる座り心地はなかなか快適。足を前方フロアに突っ張ってスポーティに操縦する上でも効果的。身体の安定を保ちやすい点が嬉しい。
 

 ツインカム単気筒の2プラグエンジンは、アイドリングが1,400rpm。スロットルを静かに開けて行くと、2,500rpmで自動遠心クラッチがミートして難なくスタートする。
 市街地から郊外までだいたいどんな場面でも主に使用するエンジン回転数は4,000rpm前後が中心。発進、加速、高速域への伸び感も含めてとても柔軟で不足の無いトルクフィーリングを楽しませてくれる。大柄なライディングポジションも含めて、ともかくユッタリとおおらかな乗り味に終始する。街中平坦路で50km/hクルージング時のエンジン回転数は4,000rpm。
 全開加速を試みるとレブカウンターの針は5,500rpmを示し、自動無段変速によってどんどん元気良く増速されていく。大きく重いサイズを感じさせないキビキビ感も十分。それほど高い回転域を使用せず、着実に車速を伸ばして行く様は、広範囲で高トルクを発揮するズ太い出力特性故のことだろう。
 ちなみに60km/hクルージング時のエンジン回転数は4,300rpm。高速100km/hクルージングでは、ギヤ比がさらに高まり5,700rpm。気になる振動は無く、ウインドプロテクションも効いた快適性は、長距離移動に活用するにも相応しい乗り心地であった。
 フロント15インチホイールの直進安定性も良い。足を前に投げ出してゆったりとおおらかに、リラックスできる気分はとても快適である。軽快に扱える操縦性も上質なラージサイズスクーターとして好感の持てる仕上がり。エンジンブレーキも自然な効き味。速度が落ちると23km/h(2,500rpm弱)でクラッチが切れてスゥーッと転がるので、普通の信号停止等ではそこで初めてブレーキングすれば良いと言う感じ。
 そんな穏やかな走りに徹してしまえるような、何とも雄大な乗り味が個性的である。実際スクーター利用で、高速も含めて頻繁に県境を跨ぐようなニーズにはピッタリ。そんな実用性にも魅力が感じられた。

ステップ周辺が抉られた“クビレ”のあるデザインが特徴。大型スクーターを扱う上でとても重宝する。

足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11
スズキ・バーグマン400 ABS-11

ご覧の通り、両足はベッタリと地面を捉える。シート高は755mm。それほど高くは無く、足を降ろした付近にクビレがあるおかげで、足つき性は良い。ただし車体がワイドなので膝に余裕があるわけではない。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…