スーパーカブがインジェクション仕様のエンジンになって久しい。すでにキャブレターモデルは10数年も前に販売されたことになり、そろそろ本調子を維持している個体が少なくなっているはずだ。ところが現在、キャブレターモデルは人気が高く、中古車市場でも相場が下がることは少なくなっている。原因として誰でも手入れができてチューニングやカスタムに適しているからということが挙げられる。そこでキャブレターの分解清掃方法を紹介してみよう。
レッグシールドには丸い穴が数カ所空いていて、通常ならグロメットで蓋をされている。ここを外すことでキャブレターやスパークプラグなどのメンテナンスを容易にしているのだが、キャブを分解清掃するならエンジンからの脱着が必要になる。それにはレッグシールドは邪魔になるので、まずはボディ数カ所で固定されているボルトなどを外そう。
レッグシールドを外してキャブレターに直接アクセスできるようになったら、まずしたいのがトップキャップを外してニードルジェットの状態を確認すること。そのためにはまず、キャブ本体の上でスロットルワイヤーと接続している丸い蓋を手で回して外そう。突起のような形状をしている丸い部分で、ここは工具を使わなくても外すことが可能だ。
トップキャップを外すと内部に中央を通るワイヤーの周囲にスプリングがあり、その下にスロットルバルブ(切り欠きがある円筒パーツ)と接続されている。その下から細くて鋭いニードルジェットがあるのだ。ニードルジェットはスプリングを縮めてスロットルバルブを持ち上げる要領で取り外すことができる。取り外したらバルブ内部を確認してみよう。
内部には凹型をしたスプリング状のパーツがあり、ここでスロットルワイヤーを固定しているとわかるはず。凹型のパーツを縮めて引き抜くとスロットルワイヤーとバルブが分離できる。いずれも小さなパーツなので紛失しないよう十分に注意して作業したい。また取り外したニードルジェットの上には何段か切り欠きがあり、そこにクリップがはまっている。これも意味があることなので無理に外して紛失させないように。
前回のメンテナンス作業でスパークプラグを外した時、このカブは燃料が濃いようでプラグがカブッたように電極が黒く汚れていた。そこでニードルジェットの段数を変えて燃料の濃さを調整してみることにする。ニードルジェットの切り欠きにハマっているクリップは上下ちょうど真ん中に装着されていた。これを上にする(装着状態で上=先端側)ごとに燃料は薄くなる。逆に下にする(鋭く尖った側)と燃料が濃くなるので覚えておきたい。
キャブレターの分解
続いてキャブレターをエンジンから切り離す。まず車体左側へ回ってみるとキャブの左上にチョークワイヤーが接続されている。上のネジを緩めるとワイヤーがフリーになるのでキャブから外そう。キャブ下左にある燃料コックへ2本のホースが接続されている。これを外すのだがタンクにガソリンが残っていると噴出することになる。受け皿を用意して出てきたガソリンを携行缶などに保管しよう。続いて先ほど車体右側から見た時にエアクリーナーから続くゴム製のパイプがキャブと接続されていた部分にネジがあった。ここを緩めるとパイプがキャブから外せる。さらにインテークマニホールド(写真右でエンジン側へ湾曲しているパイプ状の部品)との接続部にある2本のボルトを外す。これでキャブレターを取り外すことができるのだ。
キャブを単体にしたら下側から見て3本あるプラスネジを外そう。すると燃料を溜めておくフロートチャンバーが外れてくれる。ありがちなトラブルとしてフロートチャンバー内にガソリンが気化して黒いネドロのような汚れが付着していることがある。これがキャブ内の通路を塞いで調子を崩していることがあるのだ。また本体側にあるフロート(茶色の樹脂製パーツ)が上下してフロートチャンバー内の燃料量を調整しているのだが、ここに穴や亀裂ができてフロート(浮き)としての機能を果たさなくなっていることもある。状態を確認して破損しているなら新品に交換する。また中央には2本のジェットがある。ここを取り外すと円筒に複数の小さな穴がある。穴が塞がっていたらパーツクリーナーなどで洗浄すると良い。また戻す時はくれぐれも力任せに締めないこと。真鍮製なので扱いはデリケートにすべし。
フロートチャンバーを戻す時は可能なら黒いゴム製のガスケットを新品に交換しよう。経年劣化でゴムが縮んでいると燃料漏れの原因になるからだ。またキャブ本体の筒内も清掃してスロットルボディの動きに渋さがないことも確認する。ここまできたらキャブをエンジンに再接続しよう。
キャブを戻したらガソリンを入れ直してエンジンを始動してみる。アイドリングが正常なら良いが回転が高い、または低い場合は調整が必要。まずエンジンを暖気してキャブ右側にあるプラスネジを少しずつ緩める。プラスネジはアイドルアジャストスクリューと呼ばれるもので、回転数を変化させるものだ。アイドリングするギリギリの回転数まで下げたらプラスネジはそのままに、今度はマイナスネジを締め込んでいく。こちらはエアスクリューと呼ばれるもので、アイドリング時の燃料と空気の量を変化させることができる。回転数が上がるポイントがあるので、その状態をキープして再度プラスネジでアイドル回転数を調整するのだ。この時注意すべきはマイナスネジを最後まで締めても良いが、くれぐれも力を加えないこと。無理なトルクをかけるとキャブ側が崩れて使い物にならなくなることがあるのだ。
先ほどキャブの脱着で燃料ホースに触れた。燃料ホースを戻してタンクにガソリンを入れる。続いて燃料コックをONにするのだが、稀にガソリンが漏れてくることがある。こうなるとコック自体を分解しなければならないが、スーパーカブの燃料コックは部品単体で供給されていない。キャブを一体で新品部品が設定されているからだ。ところがインターネットで検索すると、適合する部品を探し出して販売してくれる業者が存在する。とはいえ自己責任の部分なので特定はしないが、最悪新品に交換することも可能だ。
ホンダ純正部品としてガスケットならセットで購入することができる。この中には燃料コックのガスケットやキャブのフロートチャンバー用が含まれているので、キャブを分解するなら事前に用意しておきたい。少々手強いメンテナンスかもしれないが、キャブ車に乗るなら覚えておいて損はない作業なので、ぜひチャレンジして欲しい!