値段を聞くと欲しくなる。コスパ系125ccスクーター「キムコGP125i」

昨年、台湾市場で30万台以上を販売し、20年連続で同国のトップセールスを獲得。日本で購入できる海外二輪ブランドにおいて、世界的シェアで他を圧倒するのがキムコだ。2020年4月現在、同ブランドは日本において125ccのスクーターを7機種もラインナップしており、中でも飛び抜けて安価なのが2018年10月に発売したGP125iである。前後10インチホイールのコンパクトなスクーター、果たしてその実力は?

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2020年4月5日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
キムコGP125i

キムコGP125i……187,000円

 50cc超125cc以下の原付二種スクーターが売れている。その勢いは50cc以下の原付一種を駆逐するほどで、国内メーカーの2019年の出荷実績を見てみると、ヤマハはまだ原付一種の方が2倍以上売れているものの、ホンダは原付一種と二種との差がかなり近く、スズキに至っては原付二種の方が上回っているのだ。トータルで見ても、そう遠くない将来に逆転するのは間違いないだろう。

キムコGP125i
ミラーボディには車体と同色のカラーパネルがはめ込まれる。
キムコGP125i
タンデムステップは可倒式で、ボタンを押すと飛び出す仕組みだ。

 原付一種で義務付けられている二段階右折が不要で、法定速度は4輪と同じ。任意保険はファミリーバイク特約が使え、自賠責保険は原付一種と同額など、原付二種のメリットは多々あった。これらに加えて、2018年7月には道交法施行規則が改正され、AT小型限定免許が従来の最短3日から2日(普通自動車免許を保有している場合)で取得できるようになったことも、原付二種の売り上げアップにつながったと考えられる。

キムコGP125i
標準装着タイヤはチェンシン製。
キムコGP125i
赤いフロントキャリパーとリヤショックスプリングがアクセントに。

 さて、通勤通学や近所の買い物など、日常的な足として使われることの多い原付二種スクーター。日本メーカーではホンダ・PCX(125)の車両価格が約35万円、ベーシックなヤマハ・アクシスZでも約25万円と、それなりの価格設定となっている。特に免許を取得したばかりのビギナーにとっては痛い出費だろう。
 そこで試乗してみたのが、海外ブランドの原付二種スクーター、キムコのGP125iだ。2018年10月から販売されているモデルで、車両価格は18万7000円と、このカテゴリーではかな〜りリーズナブルな価格帯だ。電動アシスト自転車の上位モデルとほぼ同じ金額で買えると聞けば、食指が動く人は多いだろう。

キムコGP125i
ライポジは50cc並みにコンパクト。座面を下げたことで相対的にフロアボードが高くなり、ハンドルを大きく切ると手が膝に干渉することも。
キムコGP125i
身長175cmの私の場合、両かかとが楽に接地し、しかも膝がゆるやかに曲がるほど足着き性は良い。

ホイールサイズはこのクラスで最も小径な前後10インチ。ボディサイズも50cc並みにコンパクトで、これに最高出力8.8psを発生する空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンを搭載。ブレーキはフロントがディスクでリヤはドラムとなっており、左レバーで前後が連動するコンビシステムを採用している。

キムコGP125i
安価ではあるが安っぽさはない。

 実際に走らせてみての雰囲気は、2017年に惜しまれつつも生産を終了した通勤快速スクーター、スズキのアドレスV125/Sに似ている。最高出力はGP125iの方がわずかに低く、車重も上回っているので、アドレスV125/Sほど加速は快活ではない。またメカノイズが多く耳に届く点も気になるが、それでも通勤通学の足としては十分以上のパワーを持っている。インジェクションによるレスポンスは穏やかで、微細な操作が求められる小回りでも特に扱いづらさはなかった。

 ハンドリングは、やはりホイールが小径なだけあって非常に軽快だ。ショックユニットの動きは決して上質ではなく、またタイヤのケーシングもしなやかではないが、フレームの剛性も含めてエンジンパワーに見合うだけのバランスが取れており、ビギナーが乗っても危険を感じることはないだろう。

 シート下の収納スペースがやや狭く、今回の試乗でかぶっていたジェットヘルメットが入らなかったのはマイナスポイントだが、リヤボックスを追加装着するのであればあまり問題ではないかもしれない。原付二種スクーターが欲しいけれど中古車は不安、という人にこそキムコのGP125iという選択肢があることをお伝えしたい。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…