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中型サイズ×アドベンチャーのグッドルッキンガイ!
近年、ブームとなりつつあるアドベンチャーモデル。そもそもはBMW GSシリーズなどが生み出したカテゴリーで、アスファルトのみならず未舗装路も含めた長距離を快適に走れるよう考えられたモデルのことだ。発祥はヨーロッパといわれていて、疲れにくいアップライトなポジションや荒れた路面でも走破できる長めのストロークを持つサスペンション、低回転域から太いトルクを生み出すエンジン特性などといった特長を持っていた。
そのロングツーリング特性が多くのライダーに広まり人気が高まってきたため、各メーカーがさまざまなアドベンチャーモデルを発売。排気量の種類も増えたこともあり、より多くのライダーがアドベンチャーモデルによるバイクライフを楽しむようになっている。
そしてベネリからもミドルクラスのアドベンチャーモデル「TRK251」がリリースされている。251という名だが、実際の排気量は249ccの軽二輪クラスなので車検はなく、ボディサイズが大きく見えるボリューミーなデザインも実車を目の前にすると威圧感はそれほどない。
エンジンは水冷DOHC4バルブの単気筒。同社にはより振動が少ない並列2気筒エンジンもあるが、単気筒を採用したのは軽快さを求めてのことではないかと想像できる。実際、大柄な割に取り回しは容易で苦にならない。
またがると着座位置はやや高め。といってもオフロードモデルほどではなく、アドベンチャーモデルとしても足つきは悪くない。単気筒エンジンによる車体がスリムさもその理由のひとつ。シートの座り心地もよく、パッケージングの良さを感じた。
目線の高さと大型スクリーンがアドベンチャーらしい。高めにセットされたハンドルに手をかけるとセルボタンを押した。
鼓動感を伝えつつ、軽快に回るエンジン特性が気分を盛り上げる!
水冷単気筒エンジンのレスポンスはなかなか軽快。アクセル操作に応じて歯切れ良いサウンドを響かせる。低回転域では少し振動が伝わってくる感じだったが、回転が上がれば解消。街中の巡航スピードでは気にならない。排気音に呼応してリヤタイヤが路面を押し出すような感覚は単気筒ならでは。
混雑した大通りからちょっとした裏道まで自在に走り抜けていく。足まわりの設定はロード向けなのでハンドリングも自然。ライダーが行きたいなと思った方向に素直に向いていく。
ただひとつ気になったことがある。それはステップの位置だ。
思ったよりも前にあり、自分の体格だとヒザが90度に曲がってしまう。そのためステップに荷重をかけにくい。クルージングのときなどは問題ないが、ワインディングなどタイトなコーナーが続くところでスポーティな走りをしようとすると慣れが必要だと感じた。といってもこのバイクのコンセプトを考えれば目くじらを立てるほどのことではないようにも思う。
ブレーキ性能は必要十分!
ブレーキレバーに調整機能がついているのも良いポイント。僕は手のサイズが小さめなのでレバー位置を手前にできるのはありがたいこと。タッチも悪くない。が、個人的には握り込んだ奥の方、最後のところでもう少しギュッと効いてくれればと感じた。といっても握り始めから中間あたりまでのフィーリングは悪くないし制動力自体は十分。欲を言えばというレベルではある。ブレーキにはABSが装備されているので、万一のときも安心である。
街、峠、高速、林道・・・・・・活躍するステージは幅広い
アドベンチャースタイルでやや大柄な車格ではあるが、市街地を軽快に駆け抜けていく。これにはレスポンスがよいエンジン特性がプラスになっている。
そして高速道路に乗ると大型スクリーンが効果を発揮。単気筒エンジンから伝わってくる微振動が減り、シートの座り心地もよいので長時間のライディングでも疲れにくいキャラクターである。さすがはアドベンチャーモデルだと実感する瞬間だ。
またオプションでアルミ製のパニアケースとトップケースが用意されているのも嬉しい。装着すると積載量が向上するのはもちろん、排気量を越えた堂々としたスタイルになるのがよい。個人的にはそのスタイルがらしくて好きだ。やっぱり旅バイクはこうじゃなくちゃね。アウトドアギアのようなタフな姿を見ているだけで遥かなる地まで走っていくことを想像させてくれるのだから。
TRK251は、ロングツーリングをこよなく愛するツーリストにとって新たな選択肢となる存在。盛り上がりつつあるミドル・アドベンチャークラスをさらに活性化させるモデルだと言えよう。
ディテール解説
倒立フォークに対向4ポットキャリパーをセット。ディスクローターは280mm径で放熱性とパッドのクリーニング性に優れたウェーブ形状。17インチのキャストホイールを採用していることからもロード性能を重視していることがわかる。
水冷単気筒エンジンを包み込むような形状のトレリスフレームはスリムに仕上げられていて、足つき性の向上に寄与している。ダイヤモンド形状でアンダーループはない。フレーム剛性は十分な印象で、高速走行でも安心感があった。水冷単気筒エンジンはコンパクトにまとまっている。ショートストロークで吹け上がりは軽快。
スラッと伸びたスリムなサイレンサーからは歯切れの良い単気筒サウンドが吐き出される。タンデムステップはアルミ製。
大型スクリーンの下にはライン状のデイライトを備えたLEDヘッドライトを装備。俗に言う“くちばし”もアドベンチャーバイクらしさを高めるデザインになっている。
フル液晶メーターにはスピードメーターやタコメーター、ギヤポジションインジケーター、距離計、時計などが並ぶ。コンパクトだが意外と見やすい。ニュートラルランプやターンシグナルインジケーターなどは周囲に配置。
ボリューミーだがライダー側が絞り込まれているフォルムのガソリンタンク。ニーグリップのフィット感は良い。18Lという大容量なので、長い航続距離が期待できる。
タンクの前方にはスマホやナビなどに給電できるUSBソケット(5V 2A)を標準装備。デジタルガジェットを多用する現代のツアラーには欠かせない装備だといえよう。
フロントのLEDウインカーはラジエターカバー(シュラウド)に埋め込まれている。スタイリッシュであると同時に、万が一転倒したときの破損を最小限に抑えることができる。
テールランプとウインカーは視認性が高いLED。一時的に止まるときに便利なハザードも標準装備されている。
スイングアームにリヤフェンダーをセット。泥跳ねなどを効率的に防いでくれる。
前後別体のダブルシートを採用。スポンジが厚いのでクッション性が良く疲れにくい。前方はスリムに絞られていて車体とのフィット感も良好だ。
ツアラーらしくスチール製のリヤキャリアを標準装備。高さがリヤシートと同じなので大きな荷物も積みやすい。また純正オプションのトップケースはこの上にセットされる。
SPECIFICATION
車名(型式):TRK251(N30) 全長×全幅×全高:2070mm×840mm×1300mm 軸間距離:1390mm 最低地上高:170mm シート高:800mm 車両整備重量:176kg フレーム形式:トリレス(格子)フレーム 懸架方式:(前)倒立テレスコピック(後)スイングアーム ホイールトラベル:(前)135mm(後)60mm エンジン:249㏄水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 内径×行程/圧縮比:Φ72.0×61.2mm/11.2:1 最高出力:19kw/9250rpm 最大トルク:21.1Nm/8000rpm トランスミッション:形式常時噛合6速リターン クラッチ:形式湿式多板 2次減速方式:チェーン式 タイヤサイズ:(前)110/70R17(後)150/60R17 ブレーキ/径:(前)油圧デイスク/280mmAB(後)油圧デイスク/240mmABS 始動方式:セルフスターター 燃料供給方式:フューエルインジェクション 燃料タンク容量:18.0L 点火方式:トランジスタ(TLI) 燃費(WMTCモード):40.0km/L 潤滑方式:圧送飛沫併用型 乗車定員:2名
ライダープロフィール
横田和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得して以来、50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクを乗り継ぐ。普段から移動手段にバイクを使うことが多く、プライベートでもツーリングやサーキット走行、草レース参戦などを楽しむスポーツライディング好き。現在は雑誌やWebなど、さまざまな媒体で執筆活動をしている。